最近「ワーケーション」という言葉を耳にすることが多くなりました。菅新首相は官房長官であった7月27日、首相官邸で開催された観光事業戦略実行推進会議で、働く会社員などが閑散期に地方で「働く(work)」+「休む(vacation)」=ワーケーション(Workation)の推進を検討する考えを示しました。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ観光需要の盛り返しを目的としています。
これからの働き方の一つとして、「ワーケーション」は定着するのでしょうか。まずは、その概要を見ていきましょう。
在宅勤務で得たヒント
新型コロナウイルスの感染拡大によって、働き方が大きく見直されています。エッセンシャルワーカーと呼ばれる医療関係者や接客などのサービス業に従事している方は難しいですが、リモートワークができる業種も少なからずあることがわかってきました。
オフィス仲介業の三鬼商事が発表した8月の東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の平均空室率は、7月の2.77ポイントから0.3ポイントアップして3.07%でした。新築、既存のビルとも同じ傾向で、新築ビルでは募集面積を残して竣工したほか、既存ビルでは解約増加の動きが加速しています。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)が進み、5Gがいよいよ現実のものとなった場合、長い時間をかけて都心のオフィスに通勤することに意味はあるのでしょうか。今回の新型コロナウイルスは、私たちに様々な気づきを与えてくれました。
平日は都心のオフィスに向かい、そこで全員が顔を合わせて働くという、以前は誰も疑問を感じなかった働き方が本当に正しいのか、と問いかけているのです。
「Zoom」「Webex」「Microsoft Teams」「Google Meets」といったWeb上で手軽に会議ができる仕組みが、テレワークをさらに推し進めています。また、書類をクラウド上で保管することで、手直しや共有が簡単にできるといったことも新たな気づきと言えるでしょう。
「1ヵ月以上オフィスに出社していません」といった方も珍しくなくなりました。特に都市部のオフィスに通勤して働くことが当たり前だったビジネスパーソン達は、その変化に戸惑いながらも、変化に対応していくことが求められています。
コロナウイルスによって、このような規模と期間の在宅勤務を強いられたことは、テレワークに適した業界や職種を明確にし、大きな示唆を与えてくれたことは事実です。
仮想ワ―ケーションの実態
自宅からのリモートワークだけでなく働く場所を自宅以外に求め、特に地方で仕事とバケーションを両立させるという新しいワークスタイルを「ワーケーション」と呼びます。
ワーケーションの解説の前に、今までのワーキングスタイルを振り返ってみましょう。
始業時間が9時なので、朝7時に起きて自分や家族のお弁当を作って、朝食を食べて家を出る。満員電車に押し込まれ、イライラしながらオフィスに向かう。何とか9時に間に合い、上司や同僚の顔色をうかがいながら、メールチェックや顧客対応、社内のミーティング。会議室の予約を忘れていた。急いで予約しなければ……。
12時ちょうどにオフィスを出て、近くの定食屋でランチを取ろうとするが、他社も12時から13時までがお昼休みなので、どこのお店も混雑しており、またイライラ。
お昼から戻ってきて、眠気と闘いながら午後の仕事に取り掛かる。その後、ミーティングや顧客回りなどをして、自分のデスクに17時頃戻り、それから残務整理。それが19時から23時ごろまで続き、帰宅するのは20~24時頃。
これが平均的な働き方とは言わないまでも、このようなワーキングスタイルの方は多かったのではないでしょうか。
女性の場合は、時間を気にしながら早めに退社して、子どもの保育園のお迎えや夕飯の準備をする方もいるでしょう。
1年のうち数週間、ワーケーションに変わったらどうなるでしょうか。
朝は7時に起床し、自宅周辺を散歩。7時半頃に朝食を食べて、早ければ8時半からPCを起動して仕事を始める。
10時半頃ちょっと一息つくために、外に出て空気を吸ってリフレッシュ。12時に買っておいた地元の食材を使って調理し、ランチタイム。
13時からPCで仕事を再開、同僚や取引先とZoom会議をして、意思疎通を図る。書類を作成してクラウドに保存し、情報を同僚や上司と共有する。
16時頃外に出て、周辺を散歩して気分転換、その後夕食の準備をする。18時頃からもう一度PCに向かって、19~20時に仕事を終える。夕食を食べてお風呂に入り、その後は読書や趣味の時間をして過ごし、24時頃就寝。
ワーケーションの実態はこんな感じでしょうか……。
北海道のワーケーション事情
例えば北海道でワーケーションをする場合、どのようなことが考えられるでしょうか。
国内なので時差も言葉の壁もなく、金融機関や携帯電話、運転免許証なども今までと変わらず使えます。
東京五輪のマラソンコースが東京から札幌に変わったことは記憶に新しく、これによって東京の夏の暑さが世界中に知らしめられました。北海道も温暖化の影響を受けており、札幌などではひと夏に10日ほどは30度超えの「真夏日」がありますが、朝晩は基本的に涼しいです。特に釧路などの道東は、涼しい海風の影響で東京のような35度を超える猛暑日は、まったくありません(ただし帯広は盆地なので、気温は意外と高くなります)。
春先はスギ花粉に悩まされる人が多くいますが、北海道では杉の自生は道南に限られているので、避暑ならぬ「避杉」にも適しています。
食に関しては言うまでもなく、乳製品、魚介類、野菜、穀物などバリエーションが豊富で、どれも非常においしいです。東京などの大都市と比べると、コスパの良さにも驚かされます。
効率一辺倒からゆとりの時代へ
従業員の在宅勤務が一般的になっている企業では、PCのセキュリティ対策といった新たな投資が求められています。今後はここからもう一歩踏み込んで、自宅やオフィス以外で働くという選択肢も出てくるでしょう。
このようなニューノーマルの時代に企業側が適応して、より良い労働環境を従業員に提供できるかどうかが、働き方改革の最終目的地である個々人の生産性向上につながるのではないでしょうか。(提供:YANUSY)
【あなたにオススメ YANUSY】
・副業ブームの日本!サラリーマン大家になるなら覚えておきたいこと
・2019年以降の不動産投資は「コミュニティ」が欠かせない
・賃貸業界の黒船になるか。インド発のOYOの実態
・不動産所得での節税に欠かせない必要経費の知識
・賃貸管理上でのトラブル対応術とは?