「コンパクトシティ」に向かう日本。地方の地価はどうなる?
ということで、以下はハイパーインフレ後に行うべき投資、あるいは一般論としての不動産投資論だと考えていただければと思います。
まず、日本の地価は今後ますます二極化するだろうことを頭に入れておくべきです。仮にハイパーインフレ後に景気が回復局面を迎えたとしても、バブル時のように全国一律に地価上昇といったことにはならないと考えられます。具体的に言えば、人が集中する中心部の地価はこの先も上がる一方で、郊外の地価は中心部と同じようなペースで上昇することはないということです。
地方に関しても、地価が上がる場所と下がる場所の二極化が進むと考えられます。というのも、今の日本の地方財政を考えた時、街の機能を中心部に集中させ、その地域だけで行政サービスを提供するという「コンパクトシティ構想」が今後ますます進むことが予想されるからです。
以前は、各地に点在する住人すべてに同等なレベルのサービスを提供することが、自治体の役目と考えられていました。しかし、車が1日数台しか通らない道路の雪かきを毎日行うようなサービスをやっている余裕はもはや、ほとんどの自治体にないのです。
極論ですが、「住宅は郊外に作ってはいけない」という条例を作る自治体すら、現れる可能性があります。
「一部の人を切り捨てるのか」という批判はあるでしょう。でも、「金がなければ、政府といえども地方政府といえどもできないことはできない」のです。世界の最貧国の一つのハイチが「日本並みの福祉を目指す」と言ったところで、金がないからできないのと同じです。
地方で不動産を探す時は、こうしたことを念頭に置きつつ、土地を吟味すべきでしょう。
今回のコロナショックでは、都心への一極集中が問題視され、在宅勤務やリモートワークが脚光を浴びることになりました。もちろん、こうした動きは今後も進むとは思いますが、それが地価に大きく影響を与えるようなことはないと、私は見ています。
リモートワークの推進により「どこでも働ける」ことを打ち出し、若い人たちを過疎地に集めようという動きもありますが、私はそれに対しては少々懐疑的です。過疎地に人為的に人を集めようとするのは、自然の流れに逆らっていると思うからです。
もちろん、今そうした地域に住んでいる人には、十分な手当てを施す必要があります。ただ、その後はむしろ、住民がいなくなり、自然な状態へとフェードアウトしていく。すると、イギリスやドイツのように、中心部に街の機能が集中し、車で10分も走れば美しい自然がある、というような環境に生まれ変わります。
そのほうが地方の財政は改善され、街としての魅力も高まるはずです。今の日本は、どの空港に降り立ってもどの鉄道の駅で降りても、ほとんど景色が変わりません。これは欧米人から見たら、とても不思議なことなのです。