初めて投資するなら投資信託がおすすめだ。投資信託は投資初心者からベテランまで資産運用で利用しやすい金融商品である。今回は投資信託のメリットやデメリット、株式投資とどう違うのかを比較した。あわせて投資信託の種類別メリットも解説する。
1.投資信託を購入するときに知っておきたい6つのメリット
投資信託(ファンド)とは投資家から集めた資金をまとめて、運用の専門家であるファンドマネージャーが株式や債券などに投資・運用する商品である。
投資信託は証券会社や銀行などで購入できる。日本国内で一般的に取引できる投資信託は6,000本程度と言われており、さまざまな種類がある。個人投資家にとっても取引しやすい金融商品だ。主なメリットは6つある。
投資信託のメリット1……資金は少額からスタートできる
投資信託は少ない資金から購入できる。なかには100円からはじめられるものもあり、投資信託の「通常購入」や「積立買付」ができる。
投資信託の通常購入と積立買付の最低購入金額の例を表にまとめてみた。思ったより少額で始められることがわかるだろう。
分類 | 金融機関 | 投資信託 最低購入金額 | |
通常購入 | 積立買付 | ||
ネット証券 | SBI証券 | 100円 | 100円 |
楽天証券 | 100円 | 100円 | |
マネックス証券 | 100円 | 100円 | |
松井証券 | 100円 | 100円 | |
auカブコム証券 | 100円 | 100円 | |
岡三オンライン証券 | 100円 | 100円 | |
対面証券 | 野村證券 | 投信で異なる | 1,000円 |
大和証券 | 投信で異なる | 100円 | |
SMBC日興証券 | 投信で異なる | 1,000円 | |
メガバンク | 三菱UFJ銀行 | 1万円 | 1,000円 |
三井住友銀行 | 1万円 | 1,000円 | |
みずほ銀行 | 1万円 | 1,000円 |
投資信託での投資を始めるときに初心者が不安なのが損失だろう。投入金額を少額にしておけば、損失のリスクを抑えられるはずだ。
投資信託のメリット2……プロに運用を任せられる
投資信託は専門知識がなくても投資できる。投資信託の運用は、運用のプロであるファンドマネージャーに任せられる。
投資信託は一般的に複数の資産から構成されているので、ファンドマネージャーが世界の情勢などに応じて資産の入れ替えや資産比率の調整などを行う。投資家は運用報告書や月次レポートなどでそれらの情報を確認し、投資信託の購入、保有、解約(売却)を決めればよい。
投資信託のメリット3……さまざまな資産に分散投資してリスクを軽減できる
基本的に金融商品の取引価格は変動する。取引価格の変動により損失を出すリスクが常にある。投資での損失リスクを抑えるひとつの方法が分散投資だ。ほどんどの投資信託は複数の商品に投資するため、資産の分散によるリスク軽減を期待できる。
分散投資には購入時期を分割する時間分散という方法もある。投資信託を積立投資すれば時間の分散も実現できる。一括購入は高値で買ってしまい、損が膨らむというリスクがあるが、積立によって時間分散することで購入した基準価額の平均を平準化できる。
投資信託のメリット4……個人が投資しにくい国や資産に投資できる
世界にはさまざまな金融商品がある。なかには個人による投資が容易でない国や資産もある。興味があるならば、それらを資産として組み入れる投資信託を利用するのがおすすめだ。
たとえば日本でインドやブラジルなどの新興国の株式を購入しうおうと思っても、米ドルなどに比べて取り扱いが少なく、簡単には取引できない。投資信託ならインド株やブラジル株の指数への連動を目指す商品もある。
投資信託のメリット5……透明性と安全性が確保される
投資信託は透明性と安全性が高い金融商品である。投資信託の価値である基準価額は毎営業日公表されており、決算ごとに監査を受けるため透明性が高い。
投資信託は販売会社、運用会社、信託銀行の3つの金融機関から成り立っている。販売会社は取引の窓口になり、運用会社は運用指図を行い、信託銀行は投資信託の資産を管理する。
仮にどれか金融機関が破綻したとしても、投資信託の資産は守られるようになっており、個人で株の売買をするより、比較的安全性が確保される
投資信託のメリット6……銀行預金より資産を効率的に増やせる可能性がある
超低金利の現代ではメガバンクの普通預金金利は0.001%程度、ネット銀行の普通預金の優遇金利でも0.1~0.2%程度だ。銀行預金で資産を増やすことは難しい。
ネット銀行とメガバンクそれぞれ3行の普通預金・定期預金の金利は以下を参照してみてほしい。
分類 | 銀行名 | 円普通預金金利 | 円定期預金金利 |
ネット銀行 | 住信SBIネット銀行 | 0.001~0.01% | 0.02% |
楽天銀行 | 0.02~0.1% | 0.02~0.11% | |
あおぞら銀行BANK支店 | 0.2% | 0.15~0.2% | |
メガバンク | 三菱UFJ銀行 | 0.001% | 0.002% |
三井住友銀行 | 0.001% | 0.002% | |
みずほ銀行 | 0.001% | 0.002% |
投資信託は銀行預金より効率的に増やせる可能性がある。たとえば日経平均株価は2019年9月18日の終値2万1,960円から2020年9月18日の終値2万3,360円へ1年間で約6.4%上昇した。
この期間にただ預金するのではなく、日経平均株価のインデックス型投資信託へ投資すれば資産を増やせる。
2.投資信託で気を付けたい3つのデメリット
投資信託は金融商品であり、もちろんデメリットも存在する。そのなかでも特に気を付けたい3つを見ていこう。
投資信託のデメリット1……元本保証がない
投資信託の基準価額は日々変動する。そのため下落した場合には購入時の基準価額を下回り元本割れになることがある。投資は元本割れなどのリスクを許容してプラスのリターンを期待するものだ。通常、リスクが高ければリターンは大きくなり、マイナスになる可能性も高くなる。
リスクは投資する金額や投資先資産、分散投資などによるコントロールが可能である。うまくリスクと付き合いながら投資していきたい。
投資信託のデメリット2……運用コストがかかる
投資信託はプロが運用するためのコストがかかる。投資信託のコストには、購入するときの買付手数料、保有している間の運用・管理費用として信託報酬、解約するときの信託財産留保額などがある。
買付手数料(購入時手数料)は0~3%程度で販売会社により異なるが、ネット証券では無料化が進んでいる。信託財産留保額は0~3%程度で銘柄により異なる。こちらも無料になっているところが増えている。
投資信託の運用コストが信託報酬である。信託報酬は保有している間にかかり続けるため無視できない。信託報酬も0~3%程度で銘柄により異なる。投資信託選びでは信託報酬を必ず確認して、その値を納得できる場合に購入することが大切だ。
投資信託のデメリット3……繰上償還の可能性がある
投資信託の運用の資金である純資産総額が少ない場合などは、繰上償還される可能性がある。純資産総額が極端に少なくなると運用に支障が出ることがあり、場合によっては繰上償還として信託期間の途中で運用中止して償還(保有口数に応じた償還金の返還)される。
繰上償還の条件は信託約款にて定められているため、投資信託説明書(目論見書)で確認しよう。繰上償還の条件は一定の口数を下回る場合やインデックスの改廃、投資対象のETFの上場廃止などがある。
たとえば2019年9月には「たわらノーロードplus 先進国株式低ボラティリティ高配当戦略」の繰上償還が告知された。理由は繰上償還の基準になる口数(10億口)を下回っていたからであった。
3.投資信託が投資初心者に向いている理由 株式投資と比較
投資信託のメリットとデメリットを紹介してきたが、総合的に考えると投資信託は投資初心者に向いている。その理由を株式投資との比較で確認していこう。
投資信託の6つのメリットを株式投資と比較
投資信託の6つのメリットを一般的な投資の方法である株式投資と比較した表が次だ。
投資信託のメリット | 株式投資と比較 | |
(1) | 少額から始められる | 株式は一般的には100株単位で取引され、 売買金額は数万円からになる。 |
(2) | プロによる運用 | 株式の銘柄分析などを行い、 自分で責任をもって投資する |
(3) | 分散投資によるリスク軽減 | 株式の資産分散は自分で複数の 銘柄を組み合わせる、 積立投資は可能だが手数料が割高になりやすい |
(4) | 投資しにくい国への投資 | 株式は簡単に取引できない国が多い |
(5) | 透明性と安全性の確保 | 株式は粉飾決算や経営破綻などのリスクがある |
(6) | 資産を効率的に増やす | 株式のほうがリターンは高いが、 その分リスクも高くなる |
それぞれの比較内容を確認しよう。
(1)少額から始められる
株式は一般的には100株単位で取引されるため数万円程度からの資金が必要になる。単元未満株であれば数百円程度からの購入も可能だが、取引できる証券会社や取引時間などの制限がある。
(2)プロによる運用
株式は自分で銘柄分析などを行い、自分の判断での投資する。そのため株式はある程度の投資の知識や手間が必要になる。
(3)分散投資によるリスク軽減
株式でも複数の銘柄を組み合わせた資産分散は可能だが、投資信託の数十や数百億円レベルの資産での分散投資に比べると分散効果は限られる。株式でも積立投資による時間分散も可能だが、対応する金融機関が限られ、手数料が割高になりやすいデメリットがある。
(4)投資しにくい国への投資
株式のほうが投資は難しい国が多いといえる。前述のように投資信託であればインドやブラジル株関連の商品を利用できるからである。
(5)透明性と安全性の確保
株式では粉飾決算や経営破綻などのリスクがある。これらのリスクのため株式は投資信託に比べると透明性と安全性は低いといえる。
(6)効率的に増やす
株式のほうが一般的にハイリスク・ハイリターンである。うまく投資できれば株式のほうが効率的に増やせるだろう。ただし、株式は個別銘柄の株価急騰や急落リスクがある。一般の投資家が安定して増やすには投資信託のほうが利用しやすいと考えられる。
投資信託の6つのメリットと比較すると、投資初心者には株式より投資信託のほうが利用しやすいことがわかる。
投資信託の3つのデメリットを株式投資と比較
投資信託の3つのデメリットを株式投資と比較してみよう。
資信託のデメ投リット | 株式投資と比較 | |
1 | 元本保証がない | 株式も元本保証がない点は同じ |
2 | コストがかかる | 現物株式なら取引手数料以外は無料 |
3 | 繰上償還の可能性 | 上場廃止の可能性がある |
それぞれの比較内容を確認すると次のようになる。
(1)元本保証がない
株式も元本保証がない点は同じである。投資とは元本割れなどのリスクを許容しながら長期的な成長を期待して資金を投入するものである。
(2)コストがかかる
現物株式なら(証券会社の口座管理コストがかかる場合を除き)保有中のコストは無料だ。投資信託の運用コストである信託報酬は、プロによる運用サービスを受けるためのコストと理解して、損失リスクと天秤にかけてみよう。
(3)繰上償還の可能
株式の場合、上場廃止の可能性がある。投資信託と株式ともに、どちらも運用や経営がうまくいかなければ取引が制限される点は同じである。
投資信託の3つのデメリットのうち、コストがかかることは逆にプロが運用してくれるメリットにもなる。残る2つのデメリットは株式も同じようなものだ。投資信託のデメリットは株式投資に比べて特にマイナスにはなるとはいえない。
4.投資信託の種類別のメリットとデメリット
投資信託には様々な種類の商品がある。投資信託の代表的な分類がインデックス型とアクティブ型の2つだ。その分類とは別に複合資産をもつバランス型もある。
投資信託選びの参考情報として、これらの投資信託のメリットとデメリットを紹介しよう。
インデックス型投資信託のメリットとデメリット
インデックス型投資信託とは日経平均株価やダウ平均株価などのインデックス(指標)に連動する運用成果をめざす投資信託だ。インデックス型はパッシブ型とも呼ばれる。
インデックス型投資信託のメリットはインデックスに連動する運用をおこなうために、銘柄の調査や分析などを省略でき、運用コストを抑えられる。また一般的にインデックス型はアクティブ型に比べて信託報酬が低い。
インデックス型投資信託のデメリットは市場価格が下落傾向の場合、インデックスと同じように基準価額が下落する。不況が長引くケースなどでは利益が出にくいこともある。
アクティブ型投資信託のメリットとデメリット
アクティブ型投資信託とはインデックス(指標)を上回る運用成果をめざす投資信託だ。もちろんインデックスを上回る成果をめざしても、結果として下回る可能性もある。
アクティブ型投資信託のメリットは、市場価格が上昇した場合に、それを超えるリターンを得る可能性があることだ。また市場価格が下落傾向の場合に、ファンドマネージャーの働きによっては基準価額の下落を抑えられる可能性もある。
その代わり、ファンドマネージャーが銘柄の調査や分析などを行うために運用コストが高くなる傾向がある。これはアクティブ型のデメリットといえる。
バランス型投資信託のメリットとデメリット
インデックス型とアクティブ型が運用方法の違いなのに対して、バランス型とは複数の資産に投資する複合資産の投資信託を意味する。バランス型投資信託が含む資産は国内や海外の株式、債券、REIT(不動産投資信託)などが一般的だ。
バランス型のメリットは、ひとつの投資信託で資産分散ができるので、リスクを抑える効果が高くなることだ。また特定の資産価値が大きく変動した場合に、資産配分を調整する「リバランス」を行ってくれる。
バランス型のデメリットは、単一指数のインデックス型に比べてコスト(信託報酬)が高い傾向だ。また基準価額が下落した場合に、どの資産が原因であったのかなどのリスクの把握が容易ではないことも挙げられる。
5.投資信託を運用するなら非課税制度を利用しよう
投資信託を始めるなら少額投資非課税制度NISA(ニーサ)や個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)といった非課税制度を利用するのがおすすめだ。これらの制度なら、配当、分配金、売却益といった所得が非課税になる
ただしiDeCoは年金制度のため60歳まで資産を引き出せない制限がある。気軽に始めるならNISA(つみたてNISAまたは一般NISA)がいいだろう。NISAは課税口座での投資とは違って確定申告を気にする必要がないため、投資初心者に適している。いずれにせよ、メリット・デメリットをちゃんと把握し、適切な投資信託を選ぶことが重要だ。
執筆・松本雄一(セキュリティ・金融アドバイザー)
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。
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