投資信託の取引をはじめるには、投資信託口座や証券口座を開設する。この2つの口座はどう違うのだろうか?口座を開く金融機関はどう選べばよいのか。今回はそれぞれの口座の違いや主な銀行と証券会社を対象に、選ぶポイントや口座開設時の注意点を紹介する。

1.銀行と証券会社での投資信託口座の違い

投資信託,口座
(画像=William W. Potter/stock.adobe.com)

投資信託はさまざまな金融機関で取引が可能だが、主な金融機関として銀行と証券会社がある。意外と知らない口座の違いを比べてみよう。

銀行での投資信託の取引には一般的に銀行口座と投資信託口座が必要

銀行で投資信託を取引するには、一般的に銀行口座(普通預金口座や総合口座)と投資信託口座を開設する。なお三井住友信託銀行など一部の銀行では、証券口座で投資信託と国債の取引も行える場合もある。

普通預金の口座を持っていないと投資信託口座を開設できないなど、条件は銀行によって異なるので、まずは各銀行の投資信託の口座開設情報を参照してほしい。

多くの銀行ではネットで投資信託の取引も可能なので、銀行が開いている時間になかなか行けない人にも便利だ。

投資信託口座の開設や口座維持・管理料は一般的には無料だ。現在持っている銀行口座や、各種サービスを見比べて開設を検討してほしい。

証券会社での投資信託の取引には一般的に証券口座(証券総合口座)が必要

証券会社で投資信託を取引するには証券口座(証券総合口座)を開設する。証券口座では一般的に株式やETF、投資信託などの取引が可能で、多くの証券会社ではネットで投資信託の取引が行える。

なお松井証券など一部の証券会社では、投資信託の口座は証券口座とは別で、新たに開設する必要がある。

証券口座の開設は一般的に無料だが、一部の証券会社では株式などを預けるために口座管理料が必要になる。開設前に口座管理料がかかるかどうかは確認しておこう。

2.投資信託口座や証券口座を開設するおすすめ金融機関を選ぶ3つのポイント

投資信託口座や証券口座を開設する金融機関はどのように選べばよいのか。金融機関を選ぶポイントは「投信本数」「ノーロード投信本数」「利用しやすさ」の3つだ。

ポイント1……投信本数(投資信託の取り扱い数)

取引できる投資信託は金融機関によって違う。主な金融機関でも取り扱い数は数百から数千とかなりの差がある。

差があるとは言え、ラインナップが極端に偏っていなければ、通常は数百種類取り扱いがあれば問題ない。

もし取引したい投資信託が決まっているなら口座を開設する前に、その金融機関に取り扱いがあるかを確認しておきたい。

ポイント2……ノーロード投信本数(購入時手数料無料の投資信託の取り扱い数)

投資信託の取引や保有では主に3つの手数料「購入時手数料」「信託報酬などの管理費用」「解約時手数料(信託財産留保額など)」がかかる。金融機関選びで確認しておきたいのが販売会社に払う購入時手数料だ。

購入時手数料無料の投資信託をノーロード投信と呼ぶ。ノーロード投信を多く取り扱っている金融機関を選べば、初期コストを抑えられる。

主な銀行と証券会社の投信本数とノーロード投信本数を比較した表は以下の通りだ。(※データは2020年10月18日時点)

分類 金融機関名 投信本数 ノーロード
投信本数
対面銀行 三菱UFJ銀行 474 110
みずほ銀行 252 36
三井住友銀行 197 40
ネット銀行 ジャパンネット銀行 458 458
イオン銀行 326 75
ソニー銀行 246 246
対面証券 SMBC日興証券 1087 627
(ダイレクトコース)
野村證券 949 不明
大和証券 537 58
ネット証券 SBI証券 2634 2634
(インターネットコース)
楽天証券 2681 2681
松井証券 1257 1257
※各社ホームページより筆者作成

ポイント3……利用しやすさ(店舗またはネットでの口座開設・取引・サポート)

金融機関の利用しやすさとして、口座開設から取引、サポートなどが比較ポイントになる。

まずは実店舗を利用するかを考えてみよう。職場や自宅からアクセスしやすい店舗がある金融機関を選ぶと利便性が高い。ネットでの利用がメインなら、ホームページやスマホアプリの使いやすさが大切である。

サポートも重要だ。問い合わせ方法やサポート時間の利用しやすさを確認しよう。急ぎの問い合わせに電話やチャットで即時対応してくれるかどうか。AIチャットが一般的になりつつあるが、有人チャットも利用できるかもポイントだ。問い合わせが可能な曜日や時間帯も見逃さずにチェックしておきたい。

3.投資信託の口座を開設する「ノーロード投信」の多い金融機関ランキングTOP5

投資信託の口座を開設する金融機関を選ぶ3つのポイントから、「ノーロード投信本数」と「サポート体制」の2つにフォーカスして金融機関をそれぞれランキングした。対象は主な銀行と証券会社の12の金融機関である。

上の比較表からノーロード投信の多い金融機関ランキングTOP5を抽出したものが以下だ。
(※データは2020年10月18日時点)

順位 金融機関名 ノーロード投信本数
1位 楽天証券 2681
2位 SBI証券 2634(インターネットコース)
3位 松井証券 1257
4位 SMBC日興証券 627(ダイレクトコース)
5位 ジャパンネット銀行 458
※各社ホームページより筆者作成

1位から5位までの金融機関を紹介しよう。

1位「楽天証券」……2600超のファンドすべてがノーロードで楽天ポイントが貯まる

楽天証券で取り扱う投資信託2600超のすべてがノーロードだ。投資信託の買い付け(積み立て含む)に楽天ポイントまたは楽天証券ポイントを利用できる。

ほかにも楽天銀行と楽天証券の口座連携サービス「マネーブリッジ」の登録などで、投資信託の残高10万円ごとに毎月4ポイントが貯まるなど、楽天ユーザーにはうれしいポイントサービスが充実している。

2位「SBI証券」……2600超のファンドがノーロードでTポイントが貯まる

SBI証券も取り扱う投資信託2600超がすべてノーロードである。Tポイントで投資信託が購入でき、利用するポイント数の上限や下限がない。

Tポイントは投信マイレージとして投資信託の保有残高に応じて貯められる。対象投信の月間平均保有額が1,000万円未満では年率0.1%相当が、1,000万円以上では年率0.2%相当のTポイントが貯まる。

3位「松井証券」……1200超のファンドがノーロードでロボアドバイザーがサポート

松井証券も取り扱う投資信託1200超すべてがノーロードだ。投資信託がはじめてでも3つのロボアドバイザーが資産形成をサポートしてくれるので心強い。

スマートフォン向けの投資信託専用アプリは投資信託サービスすべての機能を無料で利用できる。

4位「SMBC日興証券」……取り扱い投信の半分を超える600以上がノーロード

SMBC日興証券の取り扱い投資信託1,000超の半分を超える600以上がノーロードだ。投信取引サポートツール「fund eye」が、はじめての投資信託選びからリバランスなどの投資信託の取引を支援してくれる。

「とうしんLab.」では初心者にもわかりやすいコラムや経験のある人にも役立つ情報を発信しているので、あわせてチェックしてみよう。

5位「ジャパンネット銀行」……取り扱い投信のすべて400以上がノーロード

ジャパンネット銀行が取り扱う投資信託400以上がすべてノーロードである。投資信託の取り扱いがある銀行のなかで、ノーロードファンド数はNo.1だ。

銀行の投資信託のため、購入代金は普通預金口座から直接出金される。資金移動不要で取引できるのも魅力だ。

4.投資信託の口座を開設する「サポート体制」が充実した金融機関ランキングTOP5

投資信託の口座を開設する際の「サポート体制」での主な比較ポイントは「問い合わせ可能な日時」と「応答までの時間」の2つだ。

問い合わせ可能な日時は金融機関によって異なる。たとえば平日働いている人にとっては土日に問い合わせできれば便利だろう。

チャットや電話の問い合わせに対して応答までの時間はまちまちで、実際に問い合わせてみないとわからないことも多い。一部の金融機関では応答までの時間を目安として提示しているので参考にしよう。

サポート体制が充実したおすすめ金融機関ランキングTOP5は次だ。(※データは2020年10月18日時点)

順位 金融機関名 サポート体制(チャット) サポート体制(電話)
1位 イオン銀行 ・AIチャット
24時間365日
・有人チャット
9:00~21:00(年中無休)
イオン銀行コールセンター
9:00~18:00(年中無休)
2位 三菱UFJ銀行 ・AIチャット
 24時間365日
・有人チャット
(三菱UFJダイレクトに
関する問い合わせのみ)
平日9:00~17:00
投資信託に関する照会
9:00~18:00
(年始、GW期間を除く)
3位 松井証券 ・有人チャット
 平日8:30〜17:00
投信サポート
平日8:30~17:00
サポートセンター応答状況を
詳しく表示
4位 みずほ銀行 ・AIチャット
24時間365日
・有人チャット
 平日9:00~18:00
商品・サービスに関する
お問い合わせ
(個人のお客さま専用)
平日9:00~17:00
(12月31日~1月3日、
祝日・振替休日は利用不可)
5位 ソニー銀行 ・AIチャット
24時間365日
・有人チャット
(投資信託の問い合わせは非対応)
 平日9:00~17:30
金融商品の電話問い合わせ
9:00~17:00
(土日祝日を含む)
※各社ホームページより筆者作成

サポート体制が充実したおすすめ金融機関TOP5を説明しよう。

1位「イオン銀行」……年中無休の有人チャットと電話でのサポート

イオン銀行のサポートは年中無休である。電話でのサポートは18時まで、有人チャットは21時まで利用可能だ。土日祝日でも問い合わせもでき、平日夜間でも有人チャットで対応してくれる。

2位「三菱UFJ銀行」……電話での投資信託に関する照会は土日祝日も利用可能

三菱UFJ銀行の電話での投資信託に関する照会は、年始とゴールデンウィークの一部の日を除き土日祝日も利用できる。有人チャットは三菱UFJダイレクトに関する問い合わせに限定されるが平日17時まで利用可能だ。

3位「松井証券」……サポートセンター応答状況を分単位で表示

松井証券の有人チャットと電話でのサポートは平日のみ、17時までの対応と一般的だ。しかしサポートセンターの応答状況を曜日と時間帯別に分単位で表示しているのが特徴であり、少ない待ち時間で問い合わせできる可能性が高い。

4位「みずほ銀行」……電話サポートは平日17時まで対応

みずほ銀行の電話による商品・サービスに関する問い合わせは平日17時までだ。有人チャットは平日の18時まで利用できる。

5位「ソニー銀行」……電話でのサポートは土日祝日を含めて利用可能

ソニー銀行の金融商品の電話問い合わせは17時まで。土日祝日を含めて利用できる。有人チャットは投資信託の問い合わせは非対応で、一般的な問い合わせのみの対応である。

5.投資信託口座や証券口座の開設にはマイナンバーの登録が必要

いざ投資信託口座や証券口座を開設しようと思ったとき、マイナンバーの登録が必要になる。マイナンバーカードを取得していなくてもマイナンバーの登録は可能だ。

投資信託の口座開設時に必要な本人確認書類は一般的に次の組み合わせである。

・マイナンバーカード
・マイナンバーの通知カード+本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
・マイナンバー記載の住民票の写し+本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)

必要書類は金融機関により異なる。特に店舗で投資信託の口座を開設する場合には、二度手間にならないよう、訪問前に確認しておきたい。

6.投資信託口座や証券口座を開設するには「一般口座」か「特定口座」を選択する

投資信託口座や証券口座を開設するときは、一般口座、特定口座(源泉徴収なし)、特定口座(源泉徴収あり)の3種類のいずれかを選択する。

一般口座を選択すると、投資家が投資信託などの年間の損益を自ら計算しなければならない。利益が出た場合の多くは、確定申告を行う必要が生じるが、こちらの口座では自分で行う。

特定口座を選択すると、金融機関が年間の譲渡損益をまとめた「年間取引報告書」を作成してくれるので、確定申告が簡単に申告できる。

さらに特定口座には「源泉徴収なし」と「源泉徴収あり」の2種類がある。特定口座(源泉徴収なし)は自分で確定申告と納税を行うが、特定口座(源泉徴収あり)は金融機関が納税するため確定申告が不要である。

初めての口座開設なら確定申告が不要な特定口座(源泉徴収あり)がおすすめだ。

7.投資信託口座や証券口座は複数の金融機関での開設が可能

NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった制度の口座はひとり1口座しか開設できないが、投資信託口座や証券口座は複数の金融機関での開設が可能である。

投資信託は資産形成に有効な金融商品の取引を始めたいと思ったときは良いきっかけである。気軽に投資信託の口座を開設してみよう。

執筆・松本雄一(セキュリティ・金融アドバイザー)
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。

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