11月
(画像=株主手帳)

キャリアインデックスは、求人情報サイトや不動産賃貸情報サイトを運営するWEBマーケティング会社。同社は、自社サイトで集めたユーザー情報をパートナーサイトへ移送する集客代行事業を営んでいる。2005年の創業から人材領域で成長してきたが、昨年から不動産賃貸情報サイトを事業譲受し事業ポートフォリオの強化を図っている。

板倉広高社長
Profile◉いたくら・ひろたか
1965年11月生まれ。88年4月、リクルート(現リクルートホールディングス)入社、97年4月 ヤフー入社。同社広告営業部長などを経て、2005年1月アイ・アム(現インターワークス)入社常務執行役員。同年11月、キャリアインデックス設立、代表取締役社長就任。18年6月に代表取締役社長CEO(現任)

フルシステム連携でワンストップ登録・応募が可能

 同社では、自社の事業モデルを「ポータル・オブ・ポータルズ」と呼んでいる。この事業モデルの特徴の一つがアグリゲーションサイトの運用だ。〝アグリゲーション〟が、ひとつに集約する、を意味するように、複数のサイトの情報を自社のサイトに集約しユーザーに提供している。現在求人サイトでは、約70の求人ポータルサイトがパートナーサイトとして同社のサイトと繋がっている。

「当社はユーザー目線に立って事業を進めてきました。アグリゲーションサイトの利点は情報が数多くあること。また、ユーザーのニーズは自分の欲しい情報が簡単に手に入ることです。当社のサイトに情報を集約し見え方のフォーマットなども共通にしているため、効率的に情報を入手できます」(板倉広高社長)

 似たようなサイトは他にもあるが、外部サイトへのリンクを一つのサイトに集約している所謂まとめサイトのため一括検索はできるが、複数サイトでの登録や応募はリンク元のサイトにアクセスして毎回入力しなければならない。一方同社の場合、同社のサイト上で一度入力を行えば、複数のパートナーサイトに対してワンストップで登録・応募ができる。これを可能にしているのが、自社サイトとパートナーサイトをオンラインで繋ぐフルシステム連携だ。

「70サイトを全部オンラインで繋げて各サイトと完全にシステム連携するには、パートナー側のシステムも改変が必要になります。そのため、参入するのは容易ではなく競合もいません」(同氏)

 キャリアインデックスが運用する求人情報サイトは、転職サイトの「CAREERINDEX」、アルバイト・派遣サイトの「Lacotto」、ファッション業界転職サイトの「FashionHR」の3つ。収益モデルは、サイト利用者が応募・登録した場合に料金が発生する成功報酬型の送客課金モデル。資格やキャリアによって単価は異なるが、応募もしくは転職相談は1件平均数千円。クライアントは、リクナビ、マイナビなどの求人ポータルサイト運営会社や人材紹介・派遣会社等だ。

「会員数141万人、求人情報掲載数が約110万件あり、そのマッチングを毎日行って分析しています。そのデータを元にユーザーにレコメンドをしているので自分に合った求人情報を見つけやすくなります」(同氏)

 一方、原価は主に集客のための広告費で売り上げの半分程を占める。その他のコストは人件費だが従業員数36人と少数精鋭で利益をあげている。

不動産領域に参入 ネット集客を他分野で活かす

 2020年3月期の業績は、売上高23億円、経常利益3億円。2018~19年の業績から売上高はほぼ横ばいだが、経常利益は7億円から約60%のマイナスとなった。利益が大幅に減少した背景には、Indeedや求人ボックスなどの新しい求人検索エンジンの台頭がある。

 従来のネット求人広告といえば、同社のクライアントであるリクナビ、マイナビなどが主なメディアだったが、Indeedなど新しい求人特化型検索エンジンが出現し、安価に求人情報を掲載できるようになった。それにより求人情報を掲載したい企業は、広告費を抑えられるIndeedなどに出稿先をシフトしたため、従来のメディアの集客力が削がれてしまったのだ。

 「当社でもそうしたニーズを取り込もうとマーケティングソリューション事業という代理店ビジネスを始めましたが、結果的に採算が合わず撤退しました。そこが利益が大きく低下した理由です」(同氏)

 こうした市場の変化を受けて、同社は昨年度から事業ポートフォリオの強化を図っている。昨年10月、リブセンス社から不動産賃貸情報サイト「DOOR賃貸」の事業譲受をした。譲受額は17・5億円。資金調達の内訳は、借入8億円と現預金からの約10億円。売上高の60%を占めるかなり大きな投資だが、事業規模は売上高7・7億円、経常利益で3・5億円と収益率は40%を超える。さらに10月1日には、Type Bee Group社から不動産賃貸サイト「キャッシュバック賃貸」を譲受。譲受額は約7億円で、5億円の借入と2億円の現預金を投じているが、売上高1.96億円、経常利益1.28億円とこちらも収益性の高い事業だ。

 また、人材領域の市場規模が約8兆円に対し、不動産領域の市場規模は46兆円とマーケットも大きい。今期は人材と並ぶ事業の柱となる成長を見込んでいる。

「当社としては大きな投資ですがこの利益が続けば5年ほどで償却できると思っています。不動産業界は引っ越しやリフォームなど横展開もしやすいと思います」(同氏)

 現在クライアントは SUUMOなど大手賃貸サイトと仲介会社で約300社。掲載情報は全体で1000万物件程で、不動産賃貸サイトの中でも最大規模になる。いずれも同社の求人サイトと同じ成果報酬型ビジネスモデルのため、自社の集客ノウハウを活かし集客率アップを図る。

 2021年3月期の業績予想は、売上高25・5億円(前期比9・1%増)、経常利益4・1億円(同34・2%増)。不動産事業のトップラインは11億〜12億円を目標に掲げる。

「当社はネット集客がコア・コンピタンスです。活かせる領域は多いので人材、不動産に続くものを考えています。全体売上は5年で一桁変えていけるように意識したいです」(同氏)

(提供=青潮出版株式会社