2020年にBTSの所属事務所が上場したことで、韓国株が話題になった。韓国株に投資したい場合は、どの証券会社がおすすめなのか?サムスンやLGといったグローバル企業をはじめK-POPや韓国食品など、身近ではあるが株式投資ではあまり知られていない韓国株について紹介しよう。

1,韓国マーケットの特徴――取引所や代表的な指数は?

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(画像=TexBr/stock.adobe.com)

最初に、大韓民国の概要と韓国経済、韓国株式市場の特徴を確認しておこう。

大韓民国と韓国経済の概要

大韓民国と韓国経済の基礎データ

項目 韓国 ※1 (参考)日本 ※2
国土の面積
(2019年末)
10万401平方キロメートル
※朝鮮半島全体の45%
(出典:韓国国土交通部
「2020年地籍統計年報」)
37万7,974平方キロメートル
(出典:国土交通省国土地理院
「全国都道府県市区町村別面積調」)
人口  5,170万人
(出典:2019年中位推計
韓国統計庁)
1億2,616万7千人
(出典:2019年10月1日現在
総務省統計局)
首都人口 ソウル 973万人
(出典:2019年中位推計、
韓国統計庁)
東京都 1,395万人
(出典:2019年12月1日現在、
東京都総務局統計部)
主要産業 電気・電子機器、自動車、
鉄鋼、石油化学、造船
製造業、IT産業、
エネルギー産業
通貨 ウォン
実質GDP成長率
(2019年)
2.0% 0.89%
名目GDP総額
(2019年期中平均)
1兆6,463億米ドル 5兆1,545億米ドル
1人当たりの名目GDP
(2019年期中平均)
3万1,838米ドル 4万847米ドル
失業率
(2019年期中平均)
3.8%
(出典:韓国統計庁)
2.4%
(出典:総務省統計局)
政策金利(2019年末) 1.25% -0.10%
対ドル為替レート
(2019年期中平均値)
1,166韓国ウォン 109.01円
※1,韓国の国土の面積、人口、首都人口、失業率以外のデータの出典は韓国銀行
※2,日本の国土の実質GDP成長率、名目GDP総額、1人当たりの名目GDPの出典はIMF "World Economic Outlook Database"、政策金利と対ドル為替レートの出典はIMF "International Financial Statistics"

大韓民国は日本の4分の1程度の国土に、日本の2分の1弱の人口を抱える国である。

日本同様に天然資源が乏しいが、1960~1970年代に重化学工業や輸出産業を中心に驚異的な経済成長を遂げた。現在、韓国の自動車、造船、家電、半導体などの関連企業は世界規模で事業を展開している。近年まで、日本を上回る堅調な経済成長率を維持していた。

韓国経済は輸出に依存しているため、外交の影響を受けやすい。韓国の最大の輸出国である中国との関係や対日関係の悪化、米中貿易摩擦の悪化が深刻で、経済成長率の失速が懸念されている。

韓国株式市場の特徴

韓国の株式取引は韓国取引所、通称KRXで行われている。

KRXは韓国の総合取引所であり、2005年に韓国証券取引所、KOSDAQ、韓国先物取引所の3市場が統合して発足した。

かつての韓国証券取引所上場銘柄は、財閥系企業を中心とした韓国を代表する大企業だった。現在も、大型株は韓国取引所の株式市場部門である「KOSPI」市場に上場している。それに対して、統合前の店頭市場、KOSDAQに上場していたのは韓国の中小企業や新興企業で、現在も「KOSDAQ」市場として機能している。

東京証券取引所と韓国取引所は、相互協力関係の強化を図っている。その一環として東京証券取引所のウェブサイトで、韓国取引所上場銘柄の市況情報を20分遅延で見ることができるようになっている。

韓国株式市場の代表的な株価指数

韓国株式市場全体の指標となるのは「韓国総合株価指数」、通称「KOSPI」である。KOSPIは、韓国取引所に上場されている全銘柄の時価総額を加重平均して指数化した、韓国を代表する株価指数だ。

KOSPIを代表する業績・財務に優れた大型株200銘柄で構成される「KOSPI200」、その中でも特に優れた100銘柄で構成される「KOSPI100」などもある。

新興企業を対象にしたKOSDAQ市場上場全銘柄の時価総額加重平均指数は「KOSDAQ指数」で、韓国の新興企業全体の株価の目安になっている。

2,韓国株式の2つの市場をチェック KOSPIとKOSDAQとは?

韓国株式が上場しているのは、総合取引所である韓国取引所(KRX)のうち、株式市場部門の「KOSPI」と店頭市場部門の「KOSDAQ」の2市場である。

KOSPIとKOSDAQの比較(2019年6月末現在)

市場 上場銘柄数 時価総額
(1韓国ウォン=0.09円で換算)
代表的な銘柄
KOSPI 789銘柄 1,419兆5,208億韓国ウォン
(127兆7,568億円)
・サムスン電子<005930>
・LG電子<66570>
・現代自動車<5380>
・SKハイニックス<00660>
・ネイバー<35420>
KOSDAQ 1,343銘柄 236兆4,057億韓国ウォン
(21億2,765億円)
・JGエンターテインメント
<122870>
・キーイースト<54780>
(参考)
東証一部
2,179銘柄
(2020年10月30日現在)
598兆3,289億円
(2020年10月30日現在)
・トヨタ自動車<7203>
・ソニー<6758>
・ファーストリテイリング<9983>
※KOSPI、KOSDAQのデータは、アイザワ証券公式ホームページを参照した

KOSPI市場の特徴――韓国経済の主流、財閥系大企業やIT系優良企業が上場

韓国株式市場に上場する全銘柄のおよそ37%が上場するKOSPIには、韓国を代表するサムスン、SK、LG、現代(ヒュンダイ)、ロッテなどの財閥系大企業が多く上場している。

KOSPI上場銘柄は789銘柄と東証一部に比べると少ないが、韓国経済に及ぼす影響力は絶大で、時価総額は韓国株式市場全体の86%を占める。

近年は、非財閥系の優良企業がKOSPIで存在感を放っている。日本で浸透しているLINE<3938>の親会社であるネイバー<35420>や、メッセージアプリ「カカオトーク」で知られるカカオ<35720>といったIT企業は、KOSPIの新興勢力を代表する銘柄だ。

KOSDAQ市場の特徴――韓国の中小企業や新興企業のための市場

KOSDAQは中小企業や新興企業が大半を占めているため、KOSDAQ全体の時価総額はあまり大きくない。

韓国でも米国や中国、日本のように、IT企業を中心としたベンチャー企業が続々と生まれている。しかしながら、韓国経済の構造上財務基盤や競争力は財閥系企業に劣るため、現状ではKOSDAQ市場拡大の原動力にはなっていない。

KOSDAQ市場には、日本でも人気のK‐POPアーティストが所属する芸能事務所やコンテンツ事業会社、音楽制作会社もいくつか上場している。

少女時代や東方神起、BoAなどが所属する大手芸能事務所のSMエンターテインメント<041510>や、かつて韓流ドラマで一世を風靡した人気俳優ペ・ヨンジュンらが出資する文化コンテンツ事業会社のキーイースト<54780>などは、日本でも有名だ。

3,韓国株投資の3つのポイント 日本市場との違い

実際に韓国株を取引する際は、日本株との違いを押さえておきたい。

日本市場との違い1,取引時間 昼休みなし

日本と韓国に時差はない。韓国株式市場の立会時間は9:00~15:30で、日本の株式市場とほぼ同じである。

韓国株式市場には日本市場のような昼休みがないため、日本のビジネスパーソンは昼休みや休憩時間を利用して、リアルタイムで韓国株を取引できる。

日本市場との違い2,値幅制限 前日終値の30%

韓国株取引にも、日本株同様に値幅制限が設けられている。韓国株の値幅制限は、前日終値の±30%だ。上限価格は、呼び値未満は切り捨て、下限価格は、呼び値未満を切り上げる。

日本株は前日終値の価格帯によって制限値幅が決められているが、おおむね20~30%程度に設定されている。韓国株の制限値幅は、日本株と同程度かやや広めと考えてよいだろう。

日本市場との違い3,取引単位 1〜10株単位

ここで紹介する証券会社3社のうち、SBI証券とアイザワ証券では、買い注文と売り注文のどちらも、取引単位は「1株以上1株単位」。岡三証券では10株単位だ。ただし、売り注文に取扱単位(10株)未満が発生する場合は、1株単位の発注ができる。

日本株の取引単位は単元株(100株)であることを考えると、韓国株は少額取引ができるため、資金の少ない投資家でも参入しやすいといえる。

4,韓国株を購入できるおすすめの証券会社3社を比較

国内で韓国株を取り扱う証券会社のうち、取引がしやすいインターネット取引口座を設けているのは、ネット証券ではSBI証券、対面証券では岡三証券、アイザワ証券の3社である。

3社の韓国株取引には、どのような違いがあるのだろうか。各社の公式ホームページをもとに、基本情報を比較してみよう。

3社の比較表

証券会社名 取扱銘柄数 取扱時間 韓国株
取引手数料
決済方法 為替手数料
SBI証券 66銘柄 9:00〜15:30 約定代金の
0.99%
日本円
韓国ウォン
100韓国ウォン
あたり20銭程度
岡三証券 店舗
問い合わせ
8:00〜15:00 約定代金の0.75%

1,980〜
27万5,000円
日本円 1韓国ウォン
あたり0.2銭
アイザワ証券 430銘柄 9:00〜15:30 対面:売買代金×2.20%
対面以外:
売買代金×1.65〜
2.20%
日本円
韓国ウォン
100韓国ウォン
あたり10銭

5,韓国株を購入できるおすすめの証券会社3社の特徴を解説

ここからは、韓国株を取引できるおすすめの証券会社3社の特徴を詳しく見ていこう。

SBI証券――ネット証券最大手、韓国株を取引できる唯一のネット証券

韓国株を取り扱っている証券会社のうち、2020年3月末現在で最も口座開設数が多いのはSBI証券である。500万口座を超えるネット証券最大手であり、証券業界全体でも口座開設数第1位だ。ネット証券は近年顧客数を伸ばしているが、韓国株を取り扱っているのはSBI証券のみ。ネット証券で韓国株を取引したい人には、貴重な存在だ。

SBI証券は2005年に韓国のオンライン証券会社「E*TRADE Korea Co.,Ltd.」を子会社化し、同年に韓国株式取引サービスを開始した。業界では韓国株取引の歴史が長く、資本提携を背景に韓国現地に基盤があることも強みだ。

ただしアイザワ証券に比べると、SBI証券サイトにおける韓国株の投資情報は圧倒的に少ない。投資判断を下すためには、他の証券会社などに投資情報を求めなければならないだろう。

取扱銘柄は、SBI証券が厳選した66銘柄。業績や財務基盤が安定した人気企業を選りすぐっているため、取扱銘柄数が少ないのが残念だ。

ちなみにSBI証券では、10月15日にKOSPIに上場した人気アイドルグループBTSの所属事務所、ビッグヒットエンターテインメント<352820>の株式も、上場初日から取り扱っている。

SBI証券の韓国株取扱状況

取扱銘柄数
(個別銘柄、KDR、ETF)
66銘柄
取引時間
(現地時間) 
9:00~15:30
(現地時間9:00~15:30)
韓国株取引手数料
(税込) 
約定代金の0.99%
(最低手数料は9,900韓国ウォン)
決済方法 ・日本円による円貨決済
・韓国ウォンによる外貨決済
為替手数料 為替スプレッド100韓国ウォン当たり20銭程度
外国株取引口座
開設、管理手数料
無料
その他 ・特定口座対応
・NISA口座対応

岡三証券――オンライン取引にも力を入れている老舗中堅総合証券

岡三証券では中国以外にも、高い経済成長率を期待できるアジアの新興国、韓国、シンガポール、マレーシア、インドネシアの一部銘柄を取り扱っている。また、現在の韓国経済を支える岡三証券厳選銘柄を、現地取次業者を経由して委託販売で取引できる。

対面取引がメインの証券会社だがオンライントレードにも力を入れており、サービスを申し込めば、支店口座、通信取引口座のどちらでもオンライントレードによる取引ができる。ただし、オンライントレードで取引できる外国株式は中国株のみだ。取扱銘柄情報を知りたければ問い合わせる必要があること、さらに韓国株を取引する際は、最寄りの店舗に赴かなければならないことは大きなデメリットといえる。

韓国株の売買単位は通常1株単位であるが、岡三証券での売買単位は10株単位であることも覚えておきたい。

取引手数料以外の手数料も発生することに注意してほしい。一定の条件を満たす人以外は、外国株取引口座管理手数料がかかる。さらに、現地の取次業者に支払う現地手数料と取引税が別途発生する。SBI証券に比べると、ややコストが高い印象だ。

取扱銘柄数
(個別銘柄、KDR、ETF)
店舗に問い合わせ
取引時間
(現地時間)
8:00~15:00
(現地時間8:00~15:00)
韓国株取引手数料
(税込)
・海外手数料:約定代金×0.5%
・有価証券取引税(売却時のみ):
約定代金×0.10%
・特別税(売却時のみ):
約定代金×0.15%
・国内取次手数料:
約定代金の価格帯と取引口座別に
手数料率を設定(下限1,980円、上限27万5,000円)
決済方法 ・韓国ウォンでの入出金の取り扱いなし
・日本円による円貨決済のみ
為替手数料 1韓国ウォン当たり0.2銭
外国株取引口座
開設、管理手数料
1口座あたりの外国株取引口座管理料(税込)
・1年で3,300円
・3年で7,920円
その他 ・特定口座対応
・NISA口座利用不可

アイザワ証券――証券業界のアジア株のパイオニア

老舗対面証券のアイザワ証券は、2000年にアジア株のパイオニアとして、韓国、香港、台湾3市場の株式取引を同時に開始した。その後アジア株の取扱市場は拡大し、現在は12市場。取扱銘柄数も多く、2020年11月4日現在は韓国株だけでも430銘柄に上る。

韓国株を含む10市場の取引は、アイザワ証券の「グローバルFIX」接続によって人手を介することなく、電子的、直接的に売買処理が行われている。

アイザワ証券では対面取引口座だけでなく、インターネット口座「ブルートレード口座」でも韓国株を取引できる。ブルートレード口座でも、国内株だけでなく、韓国株を含むアジア株の投資情報を入手できる。

インターネット口座ではあるが、営業員から投資情報の案内やアドバイスを受けることもできる。注文方法はオンライントレードシステムによる注文、コールセンターへの電話注文、営業員を介しての注文から選べる。

ブルートレード口座は韓国株初心者にとっては使い勝手の良い口座だが、コールセンターへの電話注文または営業員を介しての注文方法を選ぶと、取引手数料が高くなるので注意したい。

アイザワ証券の韓国株取扱状況

取扱銘柄数
(個別銘柄、KDR、ETF)
430銘柄
取引時間
(現地時間)
 
9:00~15:30
(現地時間9:00~15:30)
韓国株取引手数料
(税込) 
・対面取引:売買代金×2.20%
・ブルートレード(※):
ネット・モバイル発注・売買代金×1.165%
コールセンター発注・売買代金×1.98%
コンサルネット発注・売買代金×2.20%
(買いの場合のみ、最低手数料5,500円)
※現地諸費用込み
決済方法 ・韓国ウォンによる外貨決済
・日本円による円貨決済
為替手数料 100韓国ウォン当たり10銭
外国株取引口座
開設、管理手数料
無料
その他 特になし
※インターネット口座

6,韓国株投資の際に注意すべきポイントは?積極的な情報収集は必須

芸能や文化、食品など、韓国に関する情報は巷にあふれているが、韓国株の投資情報となると入手先が限定される。そのため、自分で積極的に韓国株の投資情報を収集する必要があると認識してほしい。韓国株を取り扱う証券会社でも、提供されている韓国株の銘柄情報や投資情報は少なく、銘柄選択や投資判断には不十分である。

韓国株に投資する際は、証券会社のサイトだけでなく、世界経済のニュースや韓国のニュースなどから韓国企業に関わる情報を入手して、その中から業績好調な企業や将来性のある企業を探してほしい。

投資したい企業が証券会社の韓国株取扱銘柄リストに載っていなかったら、取扱銘柄に加えてもらえるよう依頼してみよう。証券会社の取扱基準を満たす企業であれば、早々に取引できるようになるかもしれないからだ。

7,優良な韓国株を見つけて投資してみよう

韓国は日本に比べて経済成長率が高く、今後も一定の成長が期待できる。日本で人気のある韓国製品やパソコンに使われている韓国製の半導体、世界中で使われている韓国製の家電製品など、市場で存在感のある韓国製の製品を見つけたら、それを韓国株の投資機会ととらえてみてはどうだろうか。

銘柄選択が吉と出れば、数年後に大きな値上がり益を得られるだろう。グローバル展開している大企業の株式であれば、将来にわたって安定的に高い配当利回りも期待できる。情報が少なく一般的でないだけに、自分の裁量で購入した韓国株の成長は一層嬉しく感じられるはずだ。

日中多忙なビジネスパーソンが、信頼のおける国内の証券会社を利用して、インターネット取引で気軽に韓国株を購入するとなると、SBI証券とアイザワ証券の2社が現実的な選択肢となるだろう。

執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

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