企業業績改善で日経平均は2万6,000円を視野に
三井住友DSアセットマネジメント チーフストラテジスト / 石山 仁
週刊金融財政事情 2020年11月16日号
米大統領選の終了や米国の雇用改善により景気の不透明感が後退したことなどを受け、日本株式市場は大きく上昇している。
もちろん、日本株上昇の背景には業績回復期待の強まりもある。米国の企業業績は2020年4~6月期にボトムを付け、株価上昇にも弾みがついている。諸外国に遅れ気味だった日本企業の業績も利益予想の見通しに明るさが見え始めた。10年以降で見ると、東証株価指数(TOPIX)の12カ月先1株当たり予想利益(EPS)は、いったん反転すると持続して改善することが多く、株価も上昇傾向となることが多い。株式市場は、こうした利益の改善を積極的に織り込むため、より長めの時間軸で見通せば、大きな転換点となる可能性を秘めている。今がまさにそのタイミングといえよう。
米大統領選は民主党のバイデン氏が勝利した。大統領がトランプ氏からバイデン氏に代わる一方、議会のねじれ(上院は共和党、下院は民主党)は継続する可能性が高まっている。今後の懸念材料は、新型コロナウイルスの世界的な感染再拡大の景気へのマイナスの影響だ。また、トランプ大統領は郵便投票などの是非を巡って法廷闘争の継続を表明しており、政治的に混迷する可能性が高まっている。確かに、このような政治的混乱の長期化はリスク要因であり、これまでと同様に議会がねじれていることで、米国の政策運営は慎重にならざるを得ない。しかし、大幅な金融緩和は継続され、新型コロナを抑制しつつ追加の景気対策を行う必要があることに変わりはない。
新型コロナ感染拡大については、米国では年内にもいくつかのワクチンが承認される見通しだ。エッセンシャルワーカーや高リスク者から接種が始まる公算が大きい。さらなる感染拡大が懸念されている中で、ワクチン開発のメドが立ち、使用許可が与えられれば、米国の景気・業績にとって大きなプラス要因になろう。楽観は慎みながらも、極端に悲観する必要はないのではないか。
今後、グローバルな景気回復が腰折れしなければ、日本の企業業績のさらなる改善は可能と考えられる。日本企業の業績予想の上振れ・下振れを示すリビジョン・インデックスは、グローバル製造業の購買担当者景気指数(PMI)と連動しながら、大きく改善する傾向を示している。日本株式市場を巡る環境は次第に明るさを増し、リビジョン・インデックスがゼロを上回る場面で、株価上昇のモメンタムが働きやすい。来年に向け、日経平均株価は2万6,000円を視野に入れた展開になろう。
(提供:きんざいOnlineより)