2014年に発生したマウントゴックス(Mt.Gox)事件に大きな進展があった。
Bloombergの報道によると、債権者が同取引所に残されているビットコインの90%に対して返還を求めることが可能になったという。
現在マウントゴックスの管財人となっている小林信明弁護士らと、かつてマウントゴックスの北米事業を請け負ったCoinLabが、債権者にビットコインを現物で返却することについて合意したことにより実現したようだ。
今後、債権者による投票を経て現物返還が行われるかどうかが決まる。債権者は現物返還ではなく、法的な手続きを経た上での資産返還を選択することもできるようだ。
CoinLabに出資を行った著名投資家であるTim Draper氏は、「債権者がやっとマウントゴックスからビットコインを返還されるというのは非常に嬉しいことだ。マウントゴックスの債権者は初期の暗号資産ファンで、彼らと共にビットコインが返還されることを楽しみにしている」とコメントし、自身のビットコインが返還されることに関して期待を寄せた。
なお、CoinLabは2013年の契約違反に関する訴訟などは継続していくという。
マウントゴックスは当時世界最大のビットコイン取引所として多くの顧客を抱えていた。
しかし2014年に発覚した85万BTC(当時レート約500億円:現レート約3兆1,800億円)の流出事件により経営破綻。一時は破産手続きが行われていたが、民事再生を求める声が相次いだことにより現在に至る。
一連の流れは「マウントゴックス事件」とも称され、2018年に約580億円相当のネム(NEM)が流出した「コインチェック事件」と並び、世界に衝撃を与えた暗号資産業界における事件となっている。
なお、どちらの事件においても真相解明には至っていないのが現状だ。
マウントゴックスの債権者にビットコインが現物で返還されるか否かは暗号資産市場にも大きな影響を与えており、民事再生案の提出期限が迫るたびにその動向に注目が集まる。
管財人の小林弁護士は2018年3月に当時レート約380億円分のビットコインと、約48億円分のビットコインキャッシュを売却したと書面で発表している。
もし現金での返還となれば、多額のビットコインやビットコインキャッシュが売却されるため、暗号資産市場に混乱が生じる可能性は高い。
そういった点を考慮しても、債権者に対して現物での返還に近づいたというのは非常に大きい出来事と言えるだろう。(提供:月刊暗号資産)