【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介
不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。
著者 浦田健
目次
物件の価値を高める努力が必要
空室が続くと不安になって、つい家賃を下げてしまいたくなるときがある。不動産業者からも「家賃を下げないと決まりませんよ」といわれると、ますます不安になり、泣く泣く家賃を下げてしまう大家さんも多い。とくに中古物件は、近くに新しい賃貸物件ができると家賃の〝下げ圧力〟が強くなる。
しかし、一度下げた家賃を再び元に戻すのは大変だ。モノの値段は、買い手が感じる価値に対して決められるべきである。したがって、商品価値を常に高める努力をすれば値段を上げることはできる。家賃も同じで「物件の価値を得たい家賃水準」まで引き上げれば家賃アップはできるし、少なくとも現状の家賃を維持することは十分できるのだ。
家賃をアップさせながら即満室を実現する具体的な方法
下げすぎた家賃を相場水準に戻すのに、なにも理由はいらない。地域の家賃相場や、実際に提供している入居サービスのバランスを考え、いまの家賃が低すぎると感じているのなら、適正家賃に変更したい旨を入居者に要求してみよう。
確かに契約期間中であれば家賃の改定は難しいとは思う。しかし、契約更新のタイミングなら家賃改定の要求は通りやすくなる。わずか千円、二千円の小幅なアップでも長い期間でみれば大きな収益増につながるのだ。
とはいえ、入居者からなにかと異論がでてくるのは避けられない。簡単にすべての家賃を上げるとはいかないだろう。そこで、たとえば更新のときに新たな防犯設備を追加するなどのオファーを用意したりするのは、とても効果的だ。
新たに入居者を募集する際に家賃アップを実現するのはさほど難しくない。家賃を上げる代わりに入居一時金を緩和したり新たなサービスを付加すれば、最低でも家賃の下落を抑えることはできる。
では、具体的に家賃をアップさせるための戦略を紹介しよう。
①入居一時金を緩和する
毎月の賃料が多少高くなっても、一時金の負担が少ない物件を選ぶ人が増えている。賃貸の大きな魅力は住み替えがしやすいという点であるから、敷金や礼金などの一時金をゼロとし入居時の経済的負担を軽くする。その代わり家賃を若干上げるようにする。たとえば、同じ物件が次のような別々の条件で募集されていたとしたら、あなたはどちらを選ぶだろうか?
(A)敷金10万円、礼金10万円、月額家賃5万円
(B)敷金0、礼金0、月額家賃6万円
もちろん物件にもよるだろうが、一見すると(B)のほうが良い条件にみえるのではないだろうか。一方、大家さんの側からすると敷金、礼金の収入がなくなる分、損をするようにみえる。しかし、実は(B)のほうが2年以上住んでもらえば、(A)の敷金・礼金の額と2年分の家賃の合計額を上回るのである。つまり(B)の場合、2年経てば実質的に返却の必要のない敷金、礼金が手に入るということになるのである。
このように、なかなか入居者が決まらない場合は、家賃を下げるのではなく、まず先に敷金・礼金を下げることを考える。そして、その分、家賃をいくらにすれば一時金を下げない場合とのバランスが取れるのかを考えて、家賃設定をしていくのである。
②契約条件を緩和する
「連帯保証人不要」「外国人入居可」「高齢者可」「生活保護者可」「事務所利用可」「ワンルームの2人入居可」など、入居者層や利用目的の条件を緩和するのも効果的だ。
入居者の条件緩和は当然、滞納や不良入居者を招くなどのリスクは伴うが、滞納保証会社の利用を条件にすることや面接審査、入居後の啓蒙活動を強化するなどして対応する。
さらに、最悪のケースを想定し、契約は必ず再契約型の定期借家契約にすることが重要だ。
もし、不良入居者化してしまったときは、再契約しないことが抑止力になるほか、万一、契約満了をもって退去させる場合には、立退料なしに退去させることができる。1年未満の定期借家契約なら期間満了とともに契約解除でき、同時に明け渡しも求めることができる。さらに契約解除の事前通告もいらない。したがって、入居希望者の信用に不安がある場合には、最初は3か月の定期借家契約、次に6か月、1年と信用の積み重ねによって契約期間を延ばしていく方法も有効になるだろう。
以前、私が所有するアパートの一室に外国人が住みたいといってきた。しかし、この外国人は連帯保証人がまったくいない人だった。大学への入学は決まっており、入学すれば留学生住宅総合保障に加入し家賃の債務保証が利用できる。しかし、入学までの3か月間は連帯保証人がいないので家賃の債務を保証することができないのだ。そこで、入学までの3か月間の定期借家契約を条件とし入居をOKしたのである。ワンルームを「2人可」にして入居してもらった外国人にも短期間の定期借家契約を利用している。もちろん、なにも問題がなければ契約期間も長くしていくつもりだ。
信用に不安がある人の入居を拒否するのは簡単である。しかし、今後はますます入居者は多様化し、利用の仕方も多様化していく。より柔軟に対応していくためにも、このようなノウハウを持っておくことはこれからの時代、大きなアドバンテージになるのである。
③「家具家電込み」にする
学生や単身赴任者をターゲットにした物件の場合は、必要となる家具や家電類を先に用意しておく方法が有効だ。入居時の費用が節約できるだけなく、身の回りのものだけで引越しがすむため、非常にラクに新生活をスタートできる手軽さと便利さをアピールできる。
その分、家賃を5千~1万円高く設定するとよい。
用意しておくものは、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、テレビ(テレビ台、DVDプレーヤーつき)、テーブル、室内照明など。中古なら10万円もあればすべてそろえることがで
きるだろう。
新たに設置する金銭的な余裕がなければリースという方法もある。家賃5万円で2か月空室になるくらいなら、家具家電込みにしたほうがいいし、場合によっては家賃アップとの差額分が利益として残るから一石二鳥である。
④水道光熱費を使い放題にする
水道代や電気代、ガス代を毎月一定額にすることにより、住み替えやすくする方法もある。とくに水道、電気、ガスの開栓手続きなどに不慣れな外国人には、入居してすぐに使えるようになるし、法人契約として会社が家賃負担をしてくれる場合には、家賃に水道光熱費が含まれていると、社員である入居者には大変喜ばれる。
たとえば、ワンルームの場合の水道光熱費込みの値段はプラス1万円前後が目安になる。
実際にはそこまで使われないことも多く、差額分は大家さんの収益となるのも魅力だ。
⑤インターネット使い放題にする
インターネットの利用料を家賃に含めてしまって、完全無料とする方法もある。仮に入居者が個別に光インターネット接続環境を導入すると、1戸当たり月5千円前後のランニングコストが必要になる。しかし最近では、大家さんが1棟丸ごと専門業者にインターネット環境を構築してもらうと、1戸当たりの月額ランニングコストは2千円前後で納まるようになっている(戸数に応じて初期設定費用が無料になる業者もある)。
たとえば、このランニングコスト分を3千円の家賃アップで対応し、入居者には無料で提供するといい。入居者には多少高めの家賃でも、インターネットが無料なら入居したその日から使えるし、入居者が個人でインターネットを引くよりコストも手間もかからないので物件のメリットを十分アピールすることができる。また、大家さんも家賃が3千円アップすれば、差額の千円分が利益として残るメリットもある。
⑥ペット入居可にする
「ペット可」への対応は空室対策として有効なだけではなく、家賃のアップも期待できる。
また、一度入居したら長く入居してもらえる可能性が高いから安定入居が期待できる。私の会社でも導入時から「ペット可」で管理している物件があるが、退去は過去5年で1割もない。たとえ退去されても、すぐに入居希望者が現れるほどペット可物件の需要は高い。
ただし、既存物件を「ペット可」にする場合には、ペットを飼っていない人も同居することになるため、さまざまなトラブル防止に細心の注意を払わなければならない。たとえば、ペットのしつけの問題(鳴き声、抱きつき等)、予防接種の問題、種類(犬、猫等)、また大・中・小型犬の別など、ペットに対応する際は必ず「ペット可」物件の管理に慣れている不動産業者や専門家にアドバイスをもらいながら導入することがポイントになる。
主な著書に『「金持ち大家さん」になる アパート・マンション経営塾』(日本実業出版社)、『もうアパート投資はするな! 利回り20%をたたき出す戸建賃貸運用法』(ダイヤモンド社)、『あなたのアパート・マンションを即満室にする方法』(フォレスト出版)など多数。
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(提供:オーナーズ倶楽部)
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