今年の米株は現在の水準から±10%程度のレンジ推移に
GCIアセット・マネジメント シニアポートフォリオマネージャー / 池田 隆政
週刊金融財政事情 2021年1月25日号
2020年2月からのコロナショックにより、世界の株式市場は一時大きく下落した。しかし、3月下旬以降は世界の中央銀行が前例のない流動性を供給したため、リバウンドが続き、米国の株価指数などは大きな戻りを演じた。本誌20年9月28日号の当欄では、ナスダック総合指数をもとに「前例のないこの戻りのトレンドがどこまで継続するのか」という点を中心に考察した。
今回は、S&P500株価指数の200日移動平均線との乖離という視点で考えてみたい。そもそも移動平均線乖離という指標は、相場の体温を測るようなものであり、価格の短期的な方向性を見るためのものではない。ただし、歴史的な暴落が起こった場合には、移動平均線乖離のピークは価格の底値や高値の近くに位置することが多い。
S&P500株価指数の今年1月8日の終値は3,824.68で、200日移動平均線は3,269.20であった。そしてその移動平均線乖離率はプラス15%を大きく超えている。
過去約40年で見て、200日移動平均線乖離率がマイナス20%を下回ったケースは4回ある。ブラックマンデー、ニューヨーク同時多発テロ、リーマンショック、そして、今回のコロナショックである。これらすべてのケースで、およそ1年後にプラス10%を超える乖離を記録する戻りを見せている。過去・現在問わず、「暴落後には上方の大きな乖離が出現する」ということが当てはまっているといえる。
問題は現在の立ち位置、つまり上方の大きな乖離を見せてからどうなるかだ。過去3回は、200日移動平均線乖離率がピークアウトしてから、半年から1年をかけて、ゼロ~マイナス10%程度まで下落している。コロナショックに当てはめて考えると、これ以上のピッチで上昇する可能性は低いということになるのかもしれない。半年後から1年以内には200日移動平均線乖離率は、ゼロ~マイナス10%程度まで落ち着く可能性が高いと考えるべきだろう。
ただ、この調整は単純に株価下落を意味するものではない。というのは、足元、200日移動平均線は毎日6ポイント程度上昇しており、半年後には、おそらく現在の株価水準に近いレベルに到達すると予想されるからである。結局のところ、半年~1年以内の株価は現在の水準からプラスマイナス10%程度の中で動く可能性が高いのではないだろうか。
もちろん、世界の主要中央銀行は未曽有の流動性の供給を行っており、想像以上に上昇する可能性は排除できないものの、常識的には、現在の200日移動平均線乖離はすでに高い水準にあり、ある程度の調整は意識しておくべき時期にきているものと思われる。
(提供:きんざいOnlineより)