イートアンドホールディングス【2882・東1】巣ごもり需要で冷凍餃子等食品事業好調 加盟店に「儲かる商品」を供給する
文野直樹会長CEO

 国内で「大阪王将」352店を展開するイートアンドホールディングス(2882)。コロナ禍で繁華街の店舗売上が激減した影響もあり、2021年2月期第2四半期の業績は昨年度を下回るものの、食品事業が巣ごもり需要の拡大を追い風に売上を伸ばしていることから、今後の巻き返しにかかる期待は大きい。

文野直樹会長CEO
〔プロフィール]ふみの・なおき
1959年生まれ、大阪府出身。1980年、父が創業した大阪王将食品(現イートアンド)に入社。その後、経営を引き継ぎ、1985年に代表取締役に就任。直営・FC展開で事業を拡大し、上場を果たす。

巣ごもり需要の拡大を追い風に
食品事業売上高は昨対比107%

 同社は2021年2月期第2四半期に持株会社へ移行し、イートアンドホールディングスとして新たなスタートを切った。文野直樹会長は「グループ経営はもちろん、個々の事業経営の権限と責任を明確化し、意思決定を迅速化する。更にグループ経営戦略機能を強化し、企業風土や事業内容にあった制度へ移行していくことが目的です」と狙いを語る。

 今回の組織改編により、冷凍食品の製造や販売を行う「Eat&Foods」、ラーメン業態のFC本部及び店舗運営を行う「大阪王将」、ベーカリーカフェ業態のFC本部及び店舗運営の「R Baker」、レストラン業態の店舗運営の「A&B Co,Ltd」、海外FC本部及び店舗運営の「Eat&INTERNATIONAL Co.Ltd」、冷凍食品通販の「9 BLOCK」の6事業がそれぞれ独立して展開することとなった。

 同社の第2四半期決算によれば、7月〜9月の売上高は、「大阪王将」を中心とした外食事業が、新型コロナの影響で昨年対比75.1%の53億円と不調だったのに対し、食品事業は昨対比107%の81億円と対照的な結果となった。同社は2011年の上場を機に、事業の柱を外食企業から食品メーカーへと転換。意識的にメーカーとして売上比率を上げてきた成果が出たわけだ。

「不要不急の外出自粛で巣ごもり需要が爆発的に伸びたおかげで、食品事業は過去にないくらい忙しい状況が続いています。工場の生産能力を順次引き上げていますが、今はそれでも生産が追い付きません」と、文野会長はうれしい悲鳴を上げる。

 現在ではまだ、主力の冷凍餃子の生産がオーダーに100%応えられる段階になっていないこともあり、売上は昨年度を超えるところまで届いていないというが、「生産体制が整えば、外食事業の不調を完全にカバーできる水準までもっていけると踏んでいます」(同氏)

 同社は1969年の創業以来、「大阪王将」を中心とした外食チェーン店として成長してきた。食品メーカーに立ち位置を変えた狙いは、「フランチャイズ(FC)に対する我々の考え方にも関係している」(同氏)という。

 多くのFC本部は、「ノウハウやブランドの提供」や、「加盟店のフォロー」に注力している。しかし同社では加盟店に対して、「『売れて儲かるもの』を供給することこそ、本部が果たすべき最も重要な役割であり、使命だと考えています。つまり当社は『物流型本部』ということです。ノウハウやブランドももちろん大事ではありますが、それよりも売れる商品さえあれば、加盟店は儲かるんです。加盟店が儲かれば、本部もそれだけ売上が上がる。今度はその利益を、少しでも原価が安く、それでいて良い商品を作るために工場に投資する。そうすると、また加盟店が儲かる。これを継続していけば、本部が潰れることは絶対にありません。加盟店もものすごく安心できるはずです。だから我々は食品メーカーの立ち位置にこだわっているわけです」(同氏)

 同社は食品事業の売上比率は、今後も伸ばしていく考えだ。「食品事業の売上が増えれば、まだ製造原価は下げられるはず。もちろん、外食事業も伸ばしていきますが、位置づけは食品事業の出口であり、同時に消費のニーズを掴むための窓口だと考えています」(同氏)

「帰着駅」「郊外」店舗は復調
惨敗は「繁華街」の店舗だけ

 同社のコロナ禍による店舗売上高は、第2四半期前年同期比でマイナス24.9%と大幅減となっているが、「それはあくまでも全体での話であって、細かく分析していくと、店舗によって状況は大きく異なります」(同氏)という。同社の店舗は、「繁華街」「商業施設」「郊外」「帰着駅」と大きく4つの立地に分けられる。この中で「繁華街」は、インバウンドがなくなり、そこに通っていたビジネスマンもいなくなってしまったことで、エリア自体が大きな影響を受けた。一方で「帰着駅」の店舗は、もともと繁華街に通っていた人達が集まるようになり、変わらず賑わっているという。「郊外」もファミリー層の需要が増加した。

「結局、ブランドとか商品力とかは関係なく、すべては立地なんです。だから何もかもを一括りにして論じることはできない。当社も便宜上、決算資料では昨対比75.1%という言い方をしていますが、実際に不振を極めたのは繁華街の店舗だけで、それ以外についてはかなり健闘しています」(同氏)

「大阪王将」は、もともと一人利用が多い食堂業態でテイクアウトにも強い。しかも繁華街への出店は、昨年までの5年間で戦略的に進めていたもので、FC店も含め、多くの店舗は「帰着駅」や「郊外」にある。そのため、「他の外食チェーンと比べると、客足の戻りはかなり早いはずです」(同氏)

 今後の出店戦略については、繁華街は当分、回復は見込めないことから、10店程度の閉店を予定している。

「ただ、店舗オーナーとの契約もあり、いきなりすべてを閉めることはできませんので、順次という形になります。一方で、すでに客足が戻っている「帰着駅」や「郊外」については、今後も直営、FCの両輪で店舗を増やしていくつもりです」(同氏)

 海外展開は、事業の多角化によるリスク分散はある程度できている、それはあくまでも日本国内での話だ。

「より強い会社になるためには、やはり海外市場にも目を向けなればなりません。もちろん、今までも取り組んできてはいたのですが、柱と呼べるまでには至っていません。今はコロナでどの国も厳しい状況が続いていますが、事態が収束したら、改めてそこにもチャレンジしていきたいと考えています。国内については、市場のニーズに対応するために、工場の生産能力をさらに高める必要があると思っています」(同氏)(提供=青潮出版株式会社