歯科医師を新たに採用する際、面接でどんなことを聞けばよいのか迷ったことはありませんか?面接での質問は、自院に合った優秀な人材を採用する上で重要なポイント。まずは、自院の方針をはっきりと決め、医師に求める具体的な人物像を描くことが大切です。
腕が良くて、性格も穏やかで…とぼんやりとしたイメージでは、どんな人が自院に合うのか分からず、質問内容も要領を得ないものになってしまいます。
この記事では、歯科医師の面接で聞くべき7つの質問やその目的について解説します。面接を控えている先生はぜひ参考にしてみてください。
歯科医師の面接で聞くべき7つの質問
質問1:当院を選んだ理由は何ですか?
歯科のみならず、あらゆる業種の採用面接で最もよく聞かれるのが「志望動機」です。
この質問は、応募者が働く上で何を大事にしているのか、それが自院の求める人物像と合致しているかを確認するためにあります。どんな人を採用したいのか、あらかじめこちらのイメージも明確にしておきましょう。
応募者の回答からは、どれだけ自院について知っているか、理念や経営スタイルを理解しているかも読み取ることができます。応募者の本気度を推し量ったり、入職後のミスマッチを防ぐ上でも重要な質問です。
質問2:前職を辞めた(転職した)理由は?
臨床研修修了直後でない場合は、なぜ前の職場を辞めたのかも聞いておきましょう。仕事の内容や職場環境、給与などさまざまな理由が考えられますが、前職でなぜその問題が解決できなかったのか、当院ではなぜそれが解決できると思ったのか、応募者の考えを聞いてください。
例えば給与に満足していなかったことが理由であれば、希望給与額も聞き、面接の場で条件をすり合わせておくとよいでしょう。
転職・退職理由が明確でなかったり、問題の原因を全て医院や他のスタッフに求めたりするような人は、採用してもすぐに転職する恐れもあるので注意が必要です。
質問3:治療において大事にしていることは?
歯科医師の採用で注意深くチェックしたいポイントの一つが、治療への考え方です。ここが院長とズレていると、医院の治療が気に入って通っている患者さまからの評価にも関わります。
治療の方針や患者さまへの姿勢が自院とマッチしていない、あるいはこちらに柔軟に合わせてくれそうになければ、どんなに優秀な人材でも一緒に働くのは難しいものです。
質問4:得意な臨床科目・今後勉強したい分野は何ですか?
歯科医師の面接の際には、専門性やスキルアップへの意欲がどれ程あるかにも着目しましょう。最新の学術雑誌や論文を熱心に読んだり、治療技術の向上に熱心であったりすれば、入職後の活躍が期待できます。
自院が今後強化していきたいと考える分野に強かったり、苦手意識がある分野を補ってくれそうだったりするとなお良いでしょう。
また、自費治療への取り組みに積極的かどうかもポイントです。診療する中で患者さまに積極的に治療を提案して、経営に貢献した経験があるかどうかも併せて確認しましょう。
質問5:開業を考えていますか?
開業を志す勤務医は少なくありません。しかし、面接でハッキリと「将来は開業する予定です」といわれると、スキルアップして経験を積んだらすぐ辞めるのだろうとネガティブにとらえる先生も多いのではないでしょうか。
もちろん、長年の勤務を期待することはできないかもしれませんが、開業を望む歯科医師の中には仕事への意欲が高く、経営面でも熱心に取り組んでくれる人が多いというメリットもあります。
将来的には開業したいと応募者が答えたならば、何年後など具体的なプランを聞いて、自院にどれだけ貢献してくれるか見極めましょう。
質問6:勤務終了後や休日は何をしていますか?
面接では、仕事に関する話題だけでなく、勤務後や休日の過ごし方についても聞いておくことをおすすめします。
例えば、学会や勉強会に参加しているなら仕事熱心でスキルアップに意欲的なことが分かりますし、趣味に打ち込んだり、家族との時間を大切にしているのならばワーク・ライフ・バランスを重視し、メリハリのある生活を望んでいる人であることが推測できます。
オフタイムの過ごし方を聞くことで、その人の仕事観を見ることができるでしょう。
質問7:前職での人間関係は良好でしたか?
医院経営に貢献してもらうためには、技術や知識があるだけでは不十分です。前職がある応募者には、前の職場でどんな人間関係を築いていたのかも確認しておきましょう。
一つのチームとして助け合いながら患者さまに質の高い医療サービスを提供する上では、院長はもちろん、歯科衛生士や歯科助手・受付と円滑に意志疎通が取れるコミュニケーション能力は重要なポイントです。スタッフへの指示の出し方や要望の伝え方などを聞き、どのように対応していたかは知っておきたいところです。
歯科医師を採用する上で知っておきたいこと
歯科医師の働き方は多様化している
厚生労働省の調査によると、開業率は70%弱と減少傾向にあります(現在の歯科医院数に対する歯科医師数を開業率として推定)。個人経営の医院は微減する一方で医療法人の割合は増加しており、開業を志す先生には分院長という選択肢も増えています。
また、非常勤や女性歯科医師の比率が高くなっているのも近年の傾向です。出産や育児など家庭生活と仕事の両立(ワーク・ライフ・バランス)を重視したり、専門性を高めてフリーランスとして活躍する歯科医師が登場したりと、歯科医師の働き方も多様化してきています。
「将来的には開業するのだろう」「すぐに結婚して辞めてしまうかもしれない」などと杓子定規に考えず、応募者の仕事に対する考え方やキャリアプランを詳しく聞くことが重要です。
一方、求職者はさまざまな医院の求人票を見比べて就職先・転職先を検討しますが、歯科医師が最重要視するのは給与をはじめとした「待遇面」であることを知っておきましょう。
患者さまが求める治療は変化している
日本におけるう蝕有病率は減少傾向にあり、保険の範囲内で削って詰める従来型の治療から予防歯科へとシフトしています。また、患者さまの口腔ケアへの意識が向上したことによって、より良い見た目や機能性へのニーズも高まっています。
これまでとは違う経営戦略が求められる中、経営の安定化のためにも、審美や矯正などの自費治療や訪問診療などニーズが高まっている分野に対応できる歯科医師を採用するメリットは大きいといえるでしょう。
また、医療の現場でもサービスの質が重視されるようになっているため、面接ではコミュニケーションスキルやホスピタリティの高さもチェックポイントです。
まとめ
転職する歯科医師は給与や福利厚生、仕事内容など、さまざまな点においてより良い条件を望んで新天地を探しています。優秀な歯科医師を獲得するためには、求職者が求める職場環境を整え、求人サイトでもしっかりとアピールしていくことが大切です。
自院に合った良い人材を獲得するために、今回ご紹介したポイントを参考にしながら、その人の本質を見極めましょう。
引用:
厚生労働省 医師・歯科医師・薬剤師統計 参照歯科医師
中央社会保険医療協議会 歯科医療(その1) 参照歯科傷病分類別の推計患者数の動向
(提供:あきばれ歯科経営 online)