世界最強の銀行系財閥を築き上げたロスチャイルド家。約200年にわたり、欧州をはじめ世界の経済や政治史に大きな影響を与えてきた一族として、歴史に名を刻んでいます。しかし意外にも、国際銀行家、そして国際事業家としての歴史と影響力は、あまり日本では知られていません。

国際銀行家としての基盤を築いたマイアー・ロスチャイルド

金融
(画像=Gorodenkoff/stock.adobe.com)

フランクフルトのユダヤ人移住地区で暮らす、一介の市民に過ぎなかったロスチャイルド家を、欧州随一の貴族の地位に引き上げたのは、1744年に生まれたマイアー・ロスチャイルドです。

マイアーは、外貨や古銭の取引を職業としていた父親の影響を受け、ドイツの宮廷ユダヤ人銀行家ジェイコブ・ウルフ・オッペンハイマーの元、13歳のときから銀行業のノウハウを学びます。

その後、父の顧客だったヴィルヘルム1世(初代ヘッセン選帝侯)を含む、上流階級お抱えの古銭商人として事業を拡大。19世紀初頭までに、ヴィルヘルム1世御用達の国際銀行家としての地位を確立し、同伯爵から融資を受け、独自の国際ローンの発行を開始しました。

ナポレオンの侵略によりヴィルヘルム1世が亡命した際も、マイアーはロンドンへ資金を投資し続けるかたわら、輸入業を通しナポレオンの大陸封鎖から利益を得ました。

世界各地で金融、不動産、ワインなど、多角経営を展開

フランクフルト、ナポリ、ウィーン、パリ、ロンドンといった欧州の主要金融都市に送り込まれた4人の息子は、父親に負けない手腕を発揮し、マイアーの築いた巨額の富をさらに増大させます。

中でも三男のネイサンは大成功を納め、「国際金融の先駆者」の名声を父親から受け継ぐこととなりました。

ロスチャイルド家の事業は長い歳月を経た現在、金融だけでなく不動産や鉱業、エネルギー、慈善活動などに枝分かれしています。

金融事業としては、ネイサンがロンドンで設立した投資銀行、N・M・ロスチャイルド・アンド・サンズや、世界最大規模を誇る独立系アドバイザリー企業ロスチャイルド&カンパニーなどが健在です。

資産は未公表、富の流出を阻むマイアーの遺言とは?

一族の資産が気になるところですが、実はロスチャイルド家の資産については、正確な数字が公表されておらず、あくまで推定の域にとどまります。

一説によると、一族の富の流出を恐れたマイアーは、血族結婚を「家訓」とし、直接の継承から女性の子孫を排除するといった遺言を残したといわれています。現に、家族の多くがロスチャイルド系の企業に雇用されているか、一族の富を増やすための事業に投資しています。

いずれにせよ、その資力が私たちの想像を超えるものであることは疑う余地がありません。