アズジェント(4288)は、ネットワークセキュリティ商品の販売とセキュリティサービスの提供というハイブリッド型が特徴のネットワークセキュリティベンダーだ。これから迎えるIoT時代に向けて仕込みを行うとともに、セキュリティの啓蒙活動も行いながら、社会的に重要性を増す同分野で存在感を示している。
海外メーカーの
新商品輸入に強み
同社は、国内外の優れたサイバーセキュリティ製品を扱うBtoB向けセキュリティサービス提供会社だ。同分野では、専業で上場した日本初の会社となる。
2020年3月期実績の売上高は31億2600万円、営業利益は4400万円。セグメントはネットワークセキュリティ事業の単一セグメントだが、細かくみるとネットワークセキュリティ関連商品の輸入販売(①商品販売事業)と関連サービス(②商品組み合せ型事業)、セキュリティ対策の重要性を企業に伝える取組み(③啓蒙事業)の3つに大別される。
前述の3事業のうち、祖業に当たるのが①の商品販売事業だ。
「我々の特長は、ベンチャー企業が開始した新しいカテゴリーの、まだ確立されていない商品を持ってくるということにあります。また、商品を出す前にラボできちんと検証作業をして、日本市場に合うよう開発元と調整し、作り直すこともあります」(杉本隆洋社長)
販売する主な商品には、あらゆる標的型サイバー攻撃対策機能が集約された次世代ファイアウォール「チェック・ポイント・セキュリティアプライアンス」や、メールやファイルを無害化する「ボティーロディスアーマー」などがある。ボティーロディスアーマーは、同社が日本市場でナンバーワンのシェアをもつ商品。46都道府県における750以上の自治体および金融・医療機関、生損保会社、放送局など多方面で導入されている(19年1月時点)。
同事業のビジネスモデルは、主に海外メーカーから商品を仕入れ、企業や官公庁といったエンドユーザーに向けて、システムインテグレーターを通じて販売するフロー型。強みは、品揃えの豊富さだ。20年以上にも及ぶ杉本社長のイスラエルとのパイプを生かし、同国の製品を中心に14社・30種類程の製品を取り扱う。
地方自治体で導入が急激に進んだ無害化商品も、同氏が見つけて日本に導入したものという。当時はイスラエルであまり有名でなかったメーカーの商品が日本でナンバーワンのシェアを獲得したことで、イスラエルにおける同社の知名度はより高まったという。
セキュリティサービスは
対応機器の多さで差別化
一方、7年前に同社が参入したストック型ビジネスが、②の商品組み合せ型サービス事業だ。
同事業では「セキュリティ・プラス」というブランドでサービスを展開。セキュリティ監視サービスやウェブサイトの改ざん防止・DDoS(複数コンピュータからの同時攻撃)対策、脆弱性を調べるウェブアプリケーション診断など、様々な面を網羅する。
ターゲットは、運用において専門性が必要となる中堅以上の企業。①の事業における契約企業に加え、他社販売製品についてのサポート提供も実施する。
「これはいわゆる監視サービスです。当社ではセキュリティオペレーションセンター(SOC)を立ち上げ、24時間365日、専門のセキュリティアナリストが監視しています。
ここでは、たとえば侵入兆候があるかどうかを監視していち早くワーニングを出したり、万が一侵入されてしまった場合はどうしてやられてしまったのかを分析する後作業を行ったりします」(同氏)
同社はこの市場で後発に当たるが、高品質・低価格で勝負。多くの機器のサポートで差別化を図りつつ、販売後の技術サポートにも力を入れる。
「今はクラウドシフトが顕著のため、クラウドに関する監視やサービスを強化しています」(同氏)
成長可能性の高い
IoT分野に注力
近年同社では、コネクテッドカーセキュリティやIoTの分野にも参入している。
コネクテッドカーとは、IoT端末機能を有した車のこと。ネットワークを経由することで、車両の状態や周辺の道路状況などの様々なデータを取得・分析でき、利用者の安全性や利便性を高められる反面、ハッカーに狙われる可能性も生じる。そこで重要になるのがセキュリティだ。4年程前に、かつてスタートアップの資金を支援した人から「新しく会社を創ったのでコネクテッドカーセキュリティ商品を売ってくれないか」と電話があり、販売を決めた。
同社は16年にイスラエルのカランバ・セキュリティ社と、コネクテッドカー用セキュリティ「Carwall」、IoT用セキュリティ「IoTwall」両商品に関する販売契約を締結。17年には同社に対し、100万ドルの投資も行っている。
杉本社長は、今後の計画としてIoT全般の事業範囲拡大も視野に入れていると話す。
「今日では、IoTという集合の中にコネクテッドカーが入ってきています。その技術もIoTに転用できるものですので、IoT分野をこれからどんどん伸びて行く分野として、色々な仕込みを進めております」(同氏)
(提供=青潮出版株式会社)