「じゃかあしい! この桜吹雪に見覚えがねえとは言わせねえぜ!」ーー遠山の金さんの名ゼリフである。こんなとき、金さんがいてくれたらどんなに胸がすくだろう。新型コロナ禍で多くの人が将来に不安を抱いている。そうした中、前向きに金融リテラシーを磨きたいという心理につけ込んで、お金を騙し取るのは許し難い行為だ。つい先日もホテルに勤務する友人がフィッシングメールの被害にあった。新型コロナ禍で収入が激減したのを機に、新たな資産運用を検討していたところ『金融リテラシーを高めて大富豪になろう!』というコピーに引っかかったのだ。

最近のスキャム(Scam=詐欺)は実に狡猾だ。過去数回にわたるスキャム被害で人の100倍疑い深くなった筆者でさえも、うっかりリンクをクリックしてしまいそうになる。決して冗談ではなく、フィッシングメール等のスキャムは日々進化している。だが、そもそも論として、金融リテラシーを磨けば誰もがお金持ちになれるとは限らない。金融リテラシーは自由市場で「誰もが平等に競争するため」のスタートラインに立つ、最低限の条件の一つにすぎないからだ。その意味では前述の『金融リテラシーを高めて大富豪になろう!』というコピーそのものに違和感がある。インテリジェンスや金融リテラシーは必要なことではあるが、一方で意外と見落とされがちなのが「コンシエンシャス・マインド(Conscientious Mind)」だ。

今回は「富の要因(Wealth Factor)」の一つとされている「コンシエンシャス・マインド」について考察したい。

「富の要因」コンシエンシャス・マインドとは?

お金持ちになるには,投資
(画像=SergeyNivens / pixta, ZUU online)

「考えが言葉となる。言葉は行動となり、行動は習慣となる。習慣は人格となり、人格は運命となる」英国史上初の女性首相、故マーガレット・サッチャー氏はそのような言葉を遺している。もともとは彼女の父親の口ぐせだったとの説もあるが、実に興味深い言葉だ。「考え」が人をつくる。「考え」が運命となるーーこの言葉に従えば、人の運命は、その人の「考え方」によるところが大きいということになる。

では、お金持ちになるにはどのような「考え方」が必要なのだろうか?

米国の心理学者でオレゴン大学の名誉教授でもあるルイス・ゴールドバーグ氏は、人間の性格が5つの因子によって構成されているという学説『ビッグファイブ』を提唱している。その5つの因子とは、(1)外向性、(2)情緒安定性、(3)開放性、(4)誠実性、(5)協調性……である。コンシエンシャスは、そのうちの一つ「誠実性」のことで、他にも「良心的な」「善悪の判断力がある」「自制心のある」「慎重」などの意味が含まれている。そしてこのコンシエンシャスなマインド(思考・感情・記憶などをつかさどる心)こそが、富と成功を手に入れる上で重要な要素の一つであるとの研究結果が報告されている。