マンション経営には、株式など他の投資手段と異なる点があります。株式やFXの投資は、投資対象を「買う」か「売る」かですが、マンション経営には「買う」、「売る」に加えて、「管理する」というプロセスがあります。
ここでいう「管理」とは、オーナーが購入した自分の賃貸物件に、より多くの人に、より長く入居してもらうための施策です。管理がうまくいけば、マンション経営は軌道に乗り、失敗すると暗礁に乗り上げてしまうかもしれません。
そこで、長くマンション経営を続けるにあたって重要になってくるのが管理会社です。物件選びと同じほど管理会社の選定も重要になってきます。本稿では、マンション経営のオーナーになる前に知っておくべき管理会社の選び方ついて解説します。
目次
1.「管理」こそマンション経営の本質
マンション経営の特徴は、良くも悪くも「買って終わり」ではないところです。投資対象の賃貸住宅には、他人が入居し生活しています。
オーナーは顧客である入居者に長く住んでもらうためにも、生活環境を維持・向上できるように、物件を管理しなければなりません。
マンション経営は、投資を通じて「住宅」という社会インフラ整備に関与するビジネスでもあります。人の生活や社会インフラに関わることを面倒に感じる人もいるかもしれません。
しかし、この面倒があるからこそ、マンション経営は長期にわたり安定した収入を得ることが可能なのです。
1-1.株式投資はハイリスク・ハイリターン
株式投資では1ヵ月などの短期で資産が倍になるケースもあります。場合によっては1日や1週間の短期で資産が倍増することもあるでしょう。しかし、その逆もありえます。
1-2. 国債や預貯金はローリスク・ローリターン
国債や預貯金は、元本と利子がほぼ保証されているローリスクな投資です。しかし、利子は少額で、低リスクとはいえリターンが少なすぎて、「投資の妙味」は感じられないかもしれません。
1-3.マンション経営はローリスク・ロングリターン
マンション経営の基本的なリターンは家賃収入です。家賃収入は、安いアパートでも1室あたり月5万円程度の売上になります。
ワンルームマンションならば月に10万円程度の収入になります。しかも家賃収入は、急に暴落することがありません。
家賃は「人が住むためのコスト」であり、大きく変動しない傾向があります。また、政治情勢の影響や地政学リスクもありません。
長く時間をかけ、じっくりと資産形成を行いたい人にとって、不動産は非常に魅力的であり、ローリスク・ロングリターンの投資といえます。
2.3つのマンション管理方法とメリット・デメリット
管理会社の選び方を知る前に、先にマンション経営にはどのような管理方法があるのかを見ていきましょう。入居者と物件の管理には、次の3つの方法があります。
1.自主管理:オーナー(投資家)自ら管理する
2.管理委託:管理会社に業務を委託する
3.一括借り上げ(サブリース):管理会社などに借り上げてもらう
それぞれの管理方法のメリット・デメリットを確認していきます。
2−1.自主管理のメリット・デメリット
自主管理とは、マンションの管理業務(入金管理・家賃督促・退去立ち会い・建物管理・クレーム対応など)をすべてオーナー自身で行う方法です。
一棟物件の場合は、建物の巡回・清掃・修繕などもオーナーとしての業務に含まれます。
・自主管理のメリット
自主管理のメリットは、管理コストを抑えられることです。
管理会社に委託すれば手数料が発生し、その分、オーナーの収入は減少します。入居者とコミュニケーションを取りたい人はあえて自主管理を選ぶこともあります。
かつては所有しているアパートの一室に大家さんが居住して管理を行っているといったアパートを目にすることもありましたが、こうした物件の多くは自主管理であったと推察できます。
・自主管理のデメリット
デメリットは、本業を持つサラリーマンが副業でマンション経営をしている場合、自主管理は負担が大きいことです。
マンション経営は生活の基盤である「住居」を提供するサービスです。入居者の生活の基盤に関する連絡は緊急を要することもあり、自主管理はサラリーマンなど別の本業を持っている人には非常に負担が大きいといえます。
2−2.管理委託のメリット・デメリット
管理委託とは、マンション経営に関わる業務の大半を専門の管理会社にアウトソース(外注)することです。賃貸経営が本業の専業のオーナーでない限り、管理委託を選択するのが無難であり一般的な形態です。
・管理委託のメリット
管理会社に委託するメリットは、オーナー自身で管理業務を行う必要がなく、本業に集中できることです。管理会社は対応に慣れているので、入居者の満足度を高める効果も期待できます。
・管理委託のデメリット
デメリットは、業務委託にかかるコストが発生することですが、5%程度のコストで管理業務をアウトソースできるので、費用対効果は高いといえます。
2-3.一括借り上げ(サブリース)のメリット・デメリット
一括借り上げ(サブリース)とは、賃貸マンションを管理会社などが借り上げ、それを管理会社が入居者に転貸する方法です。とくに空室リスクが気になる場合は検討するのも一案です。
・一括借り上げのメリット
一括借り上げ(サブリース)のメリットは、入居者がいても空室でも変わらずオーナーに家賃収入が入ってくることです。借主が管理会社のため、管理の手間も一切かかりません。
・一括借り上げのデメリット
デメリットは、サブリース料金が発生することです。10%前後のケースが多いです。
また、家賃相場が下がったり、空室率が高い状態が続いたりしたときに家賃減額の可能性があることもリスクですが、自主管理や管理委託でも家賃が下がることや空室率が上がることは起こることです。
一括借り上げの場合はサブリース料金が何%であるのかが経営の収支を左右するので、その比率によってメリットにもデメリットにもなり得るというのが実際のところです。
2-4.3つの方法の定期コスト比較
ここで、紹介してきた3つのマンション管理方法のコストを比較してみましょう。端的にまとめると下記の表のようになります。
管理方法 | 定期コスト | コスト例 |
---|---|---|
自主管理 | かからない | − |
管理委託 | 家賃の4〜7%程度 | 家賃10万円なら月に4,000〜7,000円 |
一括借り上げ | 家賃の10%程度 | 家賃10万円なら月に1万円 |
※一括借り上げでは、建物のメンテナンス費用はオーナー負担のケースが一般的です。
「自主管理」なら定期コストは0円ですが、「管理委託」だと手間をかけずにマンション経営ができますし、「一括借り上げ(サブリース)」だと空室リスクを回避しやすくなります。あくまでも、コストとメリットの比較が大切です。
3.管理会社の選び方で知っておくべき8つのポイント
ここまでの内容で、本業を持つサラリーマンオーナーは、「管理委託」または「一括借り上げ(サブリース)」を選択したほうがスムーズということをご理解いただけたと思います。なぜなら、そのほうが管理の手間がかからないからです。
とはいえ、管理会社に管理業務を委託したとしても、マンション経営の最終責任はオーナーにあります。
オーナーとして、どのようなことが管理業務なのかを全く知らないというのも、マンション経営をしていくうえで問題になります。
具体的に管理業務は、「賃貸管理」と「建物管理」に分かれます。マンション経営をするのであれば、「管理」の業務内容をしっかりと知っておきたいところです。
そこで、これから管理業務の説明と共に、管理会社の選び方のポイントをご紹介いたします。管理業務を知ることで管理会社の良し悪しがわかり、見極めることが可能になります。
3-1.賃貸管理の業務とは?
賃貸管理は一棟物件のオーナー、区分マンションのオーナーの両方が対象のサービスです。管理会社に入居者管理を委託した際、提供される主なサービスは次の内容です。
※サービス内容は管理会社によって異なります。
・空室が発生した場合の入居者募集業務
空室が発生したら不動産賃貸ネットワークに掲載することなど、入居を希望している人の目に留まるように活動を行います。
空室になると家賃収入がゼロになってしまいますが、いかに家賃を引き下げるなど、収入が減ってしまう選択を避けながら、短期間で入居者を見つけることができるかが管理会社の手腕でもあります。
・滞納家賃の督促
万が一入居者から家賃が入らず、滞納が発生した際にはオーナーに代わって入居者に対して家賃の督促や回収を行います。
失業してお金がないなど何らかの事情で家賃滞納をしているケースも多いため、その状況でいかに問題を解決するかは管理会社としての「能力」を示しているといってもよいでしょう。
管理会社のなかには家賃の回収率を公開しているところもあるので、これも管理会社を選ぶ判断材料のひとつになります。
・契約更新や退去時の立ち会い
満期を迎える賃貸契約について、入居者に契約を更新するのか退去するのかの意思を確認し、その意思に沿って手続きを行うのも管理会社の仕事です。
退去時には原状回復に関連する立ち会いが必要になりますが、立ち会いについても管理会社が代行してくれます。
・入居者からのクレーム、トラブル対応
入居者にとっての賃貸マンションは、毎日の生活の場です。多くの人が集団生活をしていると問題やトラブルが起きることもあるわけですが、こうしたときに発生するクレームなどへの対応も管理会社が代行します。
入居者からのクレーム対応や家賃の督促などはオーナーによっては精神的な負担が大きくなりがちな業務なので、オーナーによってはこの業務を重視する人もいます。
3-2.建物管理の業務とは?
管理会社の業務は、建物の管理にも及びます。入居者対応がソフト的な業務だとすると、建物に関する業務はハード的な業務に分類されます。建物管理に関する管理会社の業務を列挙すると、以下のようになります。
・ 共有部の巡回、清掃、ゴミ出し
マンションの共用部はそれぞれの入居者にとって管理責任のない部分なので、誰も管理していないと問題が放置されたままになってしまいます。
清掃やメンテナンスを適切に行うことでマンション全体の品格を良好に保つことができるので、資産価値を維持する観点からも重要な業務です。
定期的な巡回を行って問題が小さいうちに対応してくれる管理会社は優良であるといえます。
・共有部の修繕(提案)
共用部に故障やメンテナンスの必要がある場合、それを修繕するのも管理会社の業務です。
管理会社自身が作業や手配をする場合もありますが、管轄外の業務である箇所については修繕の提案という形で業務を行う場合もあります。
・長期修繕計画の作成・実行
マンションは建てたら終わりではなく、建てたあとからは適切な管理によって物件の性能や資産価値を維持する必要があります。
実需の分譲マンションの場合では個々の部屋の区分所有者がいるので、その人たちを管理組合として組織化し、マンションの長期修繕計画や維持管理についての意思決定を行います。管理会社はその組成や運営に関する業務を行っています。
3-3.管理業務の範囲を確認する
ここまで解説してきた業務はいずれも、不動産管理会社の業務としては標準的なものです。しかし、それぞれの業務についてどこまでの責任をもっているかは、管理会社やそれぞれの管理会社が設定しているサービスメニューによって異なります。
一口に管理業務といっても、その提供するサービス内容はさまざまというわけです。また、標準のサービスにどれくらいの範囲の業務が含まれているかもまちまちです。そのため、「標準サービス」と「オプションサービス」の内容・追加料金などに納得したうえで管理会社と委託契約を結ぶと安心です。
3-4.複数の管理会社と比較する
優秀な管理会社を選ぶには、複数の管理会社を比較検討して選ぶのがよいでしょう。ただし、管理委託費の安さだけで管理会社を比較するのは避けたいところです。
「総管理戸数」「平均入居率」「サービス内容」など複数の指標で比較することで、真に優秀な管理会社を選びやすくなります。
ただし、こうした数値は各社が自社の集計結果を公開しているのに過ぎないので、実際に比較検討する際には担当者に具体的な根拠や実績を明示してもらうようにすると、その管理会社の実力を正確に知ることができます。
3-5.デジタルやネットを管理に取り入れている
管理会社を選ぶ際、地元で何代にもわたって経営してきたような老舗の管理会社が安心できるという考え方もあるでしょう。
もちろん、老舗の管理会社には歴史や信頼があるかと思いますが、業務内容を見直さずアナログな手法にこだわり、時代に合わない非効率な管理会社もあります。
そのため、「管理にIT化やデジタル化を進めているか」もチェックしたいポイントです。
3-6.担当者との相性、信頼関係
多くの場合、管理会社は会社法人です。そのため会社という組織と取引をするわけですが、実際に管理業務で動くのは個々の人間ですし、オーナーと向き合って窓口になるのも人間です。
このように不動産投資は人の出番が多く、人間同士の信頼関係も成否に深く関わります。
そこで、不動産管理会社選びにおいては管理会社の担当者が信頼に値する人物なのかどうか、今後長く付き合っていける人物なのかといった視点で精査することも重要です。
管理会社といえども完璧ではありませんし、ときにはうまくいかないこともあります。そのようなときに人間同士の信頼関係があるかどうかでオーナーの満足度や信頼感は大きく変わってくるので、納得して管理を任せるためにも重視したいところです。
3-7.その管理会社の管理物件を現地調査してみる
先ほどから、共用部分やエントランスは管理会社の管轄であると述べてきました。個々の部屋のなかは勝手に見たりすることはできませんが、共用部分やエントランスは誰でも見ることができます。
管理会社選びにおいては、その会社が実際に管理している物件の共用部分などを現地まで行って見てみましょう。共用部が酷く汚れている、散らかっている、傷んでいるといった場合、管理が杜撰な可能性があります。
可能であれば1つの物件だけでなく、複数の物件を視察してみてください。それによって管理会社の性質や特徴が見えてくるかもしれません。
3-8.ネット上の評判
今どきの比較検討では、ネットの評判をチェックするのも有効な方法です。
検討している管理会社の名前と「評判」というキーワードで検索してみてもいいですし、SNSで同様の検索をしてみてもいいでしょう。公式発表では見えてこない、その管理会社の別の一面が見えてくるかもしれません。
ただし、注意したいのは情報の質です。ネット上では誰もが自由に情報発信できるため「生の声」を見つけやすい反面、事実でない情報や何らかの腹いせや誹謗中傷の域を出ないような情報もあります。
まさに玉石混交の世界なので、情報の出元や信憑性については十分注意する必要があります。
4.管理会社を選ぶなら、大手?地域密着?
管理会社の選び方において、大手か地域密着の管理会社かというのは、大きな分かれ道になります。
最終的な目的は所有している物件の管理を任せることができて、不動産投資を成功に導いてくれるパートナーを見つけることですが、そのためには大手がいいのか地域密着型の中小管理会社がいいのかは判断に迷うところでしょう。
4-1.大手の管理会社のメリット・デメリット
大手の管理会社には、圧倒的な知名度があります。ブランドイメージが大切なので、その名に恥じるようなことをしない業務姿勢が期待できます。
その一方で地域の特性に配慮したきめ細かいサービスが期待できない、担当者が人事異動で変わる可能性があるといったデメリットもあります。
4-2.地域密着型管理会社のメリット・デメリット
一方の地域密着型管理会社には規模の大きな会社は少ないでしょう。スケールメリットはありませんが、地域密着型の管理会社はそのエリアだけが営業エリアである可能性が高く、地域の歴史や事情に詳しいといったメリットがあります。
動かない資産と書いて不動産というように、所有物件も動くことはありません。それならそのエリアにしっかり根付いている管理会社に任せるのも、有効な選択といえるでしょう。
5.管理会社の見つけ方
管理を任せたい物件の近隣を見て回るとさまざまなヒントがあります。物件の最寄り駅に行ってみると管理会社そのものがあったり、広告の看板が出ていることがあります。
その他にも対象物件の近隣にあるマンションのエントランスを見ると、よく目にする管理会社を見つけることができると思います。
こうした会社もその地域で勢力を持っている管理会社である可能性が高いので、選択肢に入れる価値があるでしょう。
6.管理会社を変更する方法を押さえておこう
管理会社選びのポイントについてお話しましたが、一方で契約してみないとわからない部分もあります。最悪の場合は、契約しても管理会社を変更することが可能ですが、いきなり契約解除ではなく段階を踏むのが賢明です。
管理会社の業務に不満があればまずは担当者を変更し、それでも改善されない場合は管理会社を変更すべきでしょう。
ただし、管理委託では契約書を交わしているため、その内容に沿って進める必要があります。以下の内容を契約書で確認しましょう。
・契約解除の予告はいつまでにする決まりになっているか
・契約解除するとオーナー側に不利な条件はないか
これらを確認のうえ、管理会社に契約解除の意向を伝えましょう。
7.優秀な管理会社をパートナーに選ぶと安定経営が実現できる
当記事では、マンション経営の管理について解説してきました。最重要となる部分「マンション管理の方法」と「管理会社に委託する業務内容」、そして「管理会社選びのポイント」について振り返ってみましょう。
7-1.3つのマンション管理の方法
1.オーナー(投資家)自ら管理する「自主管理」
2.管理会社に業務を委託する「管理委託」
3.管理会社などに借り上げてもらう「一括借り上げ(サブリース)」
このうち、本業のあるサラリーマン投資家は「管理委託」または「一括借り上げ(サブリース)」を選ぶと、管理の手間がなく本業に集中できます。
管理会社選びをするのに大事な「業務内容」には「入居者管理」と「建物管理」があり、区分マンションオーナーは入居者管理主体で管理会社と契約することになります。
7-2.管理会社に委託する主な業務内容
・入居者管理:家賃の集金、滞納家賃の督促、クレーム対応など
・建物管理:共有部の巡回、清掃、ゴミ出しなど
管理会社選びで大事なポイントは、「管理業務の範囲を確認する」「複数の管理会社と比較する」「実際の管理物件を視察してみる」などです。
優秀な管理会社をパートナーに選ぶことで安定したマンション経営が実現でき、戸数を増やしてビジネスの規模拡大がしやすくなります。
(提供:Dear Reicious Online)
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