物価上振れは続くも、主要イールドカーブはスティープ化へ
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ワクチン接種の進展で21年成長率は6.5%へ

第一生命経済研究所 主任エコノミスト / 桂畑 誠治
週刊金融財政事情 2021年6月1日号

 米国経済は、2021年に入ってから景気回復の勢いを再び強めている。21年1~3月期の実質GDP成長率(1次推計)は、前期比年率6.4%と、20年10~12月期の同4.3%から再加速した。20年12月と21年3月に成立したそれぞれ9,000億ドル規模と1.9兆ドル規模の経済支援策や、新型コロナウイルス感染拡大ペースの鈍化を受けた行動制限の緩和が奏功している。加えて、ワクチン接種による人の移動の活発化等を背景に、個人消費が同10.7%増と急拡大し、成長を牽引した。

 5月に入っても、景気は堅調さを維持している。ワクチン接種の進展による感染拡大ペースの鈍化や、それらを受けた行動制限の緩和が続き、企業の景況感を示す総合PMI(購買担当者景気指数、速報)は5月に68.1と過去最高水準となった。

 一方、労働市場の回復ペースは鈍い。4月の非農業部門雇用者数が前月差26.6万人増(3月の同指標は77.0万人増)と大幅鈍化し、前月差100万人増と見込んでいた市場予想が裏切られたほか、失業率が6.1%(3月失業率は6.0%)と上昇した。行動制限の緩和を背景に飲食店、芸術・エンターテインメント、宿泊などが高い伸びとなったものの、半導体不足による自動車の生産調整で製造業や派遣業で減少したほか、労働力不足で運輸・倉庫、食品・飲料品店などが減少に転じた。

 また、失業保険の上乗せによる就業意欲の後退を背景に、賃金の低い職種の雇用が抑制された。労働市場がコロナ危機前の水準を回復するのは、雇用のミスマッチもあって時間がかかるとみている。しかし、雇用は景気拡大、失業保険の上乗せの終了、半導体供給の段階的な増加に伴い回復ペースを速めよう。

 米疾病対策センター(CDC)は5月13日、「ワクチン接種を完了した人は、活動規模の大きさに関係なく屋内外での活動にマスク着用や人的距離の確保をせずに参加することが可能」と従来の指針の大幅な変更を公表した。米バイデン政権は、経済の早期正常化を目指して、7月4日までに国内成人のうち70%が1回目のワクチンを接種することと、1.6億人(約62%)がワクチン接種を完了することを目標に掲げている。人口ベースでは、5月24日時点で39.3%が接種完了となっている。

 以上から、引き続き行動規制の緩和が見込まれるほか、経済支援策の効果などもあり、21年4~6月期の実質GDPの水準は、個人消費主導でコロナ危機前のピークを上回るだろう。21年後半の経済成長は、年前半からやや鈍化するものの、多くの米国民のワクチン接種完了により堅調さを持続し、21年の実質GDP成長率は前年比6.5%と高成長が見込まれる。

ワクチン接種の進展で21年米国GDP成長率は6.5%へ?
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(提供:きんざいOnlineより)