エコモット 【3987・マザ/A】
入澤 拓也社長

 エコモットは、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」の専業ソリューションプロバイダーだ。北海道札幌市に本社を置き、モバイル技術を活用した融雪システム遠隔監視で創業。その技術を応用した建設土木現場ソリューションがヒットし全国展開している。最近は検温システムなどアフターコロナに向けた商品開発にも注力している。

入澤 拓也社長
Profile◉いりさわ・たくや
1980年1月10日生まれ、札幌市出身。2002年4月クリプトン・フューチャー・メディア入社。07年2月エコモット設立、代表取締役就任(現任)。20年6月北海道ソフトウェア技術開発機構社外取締役就任(現任)、10月シーラクンス社外取締役就任(現任)。

雪の状況を24時間監視
燃料コストを大幅削減

 同社は、モバイルコンテンツの開発などを手掛けていた入澤社長が2007年に創業した。入澤社長は高校卒業後、アメリカに留学。ITが盛んなシアトルでインターネットに触れ、帰国後はソフトウェア会社のクリプトン・フューチャー・メディアに就職して携帯電話のコンテンツビジネスを手掛けた。5年程務めた後、「モバイルを活用して世の中に貢献したい」との思いを実現するためクリプトン社を退職し起業した。

 現在、IoTで顧客が抱える課題を解決する「IoTインテグレーション事業」を展開。最初に手掛けたのは、ロードヒーティング(融雪システム)の遠隔制御代行サービス「ゆりもっと」の企画販売だ。

「ゆりもっと」は、ボイラーにモバイル通信端末とカメラを取り付け、遠隔監視センターで24時間運転代行を行うサービス。カメラで雪の状況を確認し、必要な時だけボイラーを操作することで燃費を大幅に抑えることができる。

「当時、ロードヒーティングの燃料代を節約するために、わざわざ車に乗ってロードヒーティングの電源のオン・オフをしに行っているという話を耳にしました。私は前職で携帯電話のコンテンツを作っていたので、携帯電話を使って雪の状況を監視する仕組みを作ろうと思ったのがきっかけです。これまでに北海道を中心に2000台以上設置しています。例えば札幌で融雪ボイラー8台を使っている賃貸マンションに導入すると、1シーズン平均140万円の節約効果があります」(入澤拓也社長)

建設現場をモニタリング
累積1万件以上の設置実績

 2つめの事業は「現場ロイド」だ。建設土木現場の状況をカメラやセンサーで記録して業務効率化などを実現するソリューションであり、2009年のサービス開始以来、累計1万件以上の建設現場に設置されている。

 約300種類のサービスラインナップがあり、代表的なものとして、スマートフォン等で現場状況を動画監視できる遠隔監視カメラシステム「ミルモット」、1キロ以上離れた建設現場のコンクリートの養生温度をモニタリングできる「おんどロイド」などがある。利用形態は月々のレンタルで、1現場あたり平均約30万円の月額利用料を課金している。

 現在の「現場ロイド」の売上比率は5割以上を占め、創業事業の「ゆりもっと」を大きく上回る。元々モバイルに詳しい入澤社長は、「ゆりもっと」に続くビジネスとして、北海道の主要産業である農業向けにソーラーパネルで動く遠隔監視カメラシステムを開発した。

「北海道だから農業だ、ということで農家の畑にカメラはどうですかと営業に回りましたが、価格が高めだったこともあり売れずに困っていました。そんな時たまたま展示会で建設現場の人から『これ、現場で使えるね』と声をかけられ、建設現場の監視カメラシステムとして売ったところヒットし全国展開への足掛かりをつかみました」(同氏)

 今では地元の中堅企業から大手ゼネコンまでほぼすべての建設土木会社で導入実績があり、現在、約1000現場で稼働している。今後、営業エリアを広げて売上比率6割以上に伸ばす計画だ。

「建設現場は全国にあるのでまだまだ伸ばす余地があります。今の売上に占める北海道のエリア比率は約10%と高いです。全国の土木予算に占める北海道の比率が5%なので、当社の北海道比率も5%程度になればようやく全国企業になったといえると考えています」(同氏)

KDDIと資本業務提携
新サービス開発に注力

 強みのモバイル技術を活用し、コロナ対策ソリューション開発にも注力している。飲食店の店舗内に画像センサーを設置し、無料対話アプリ「LINE」で空席状況を自動応答するサービス「アイテル」はその1つ。AI顔認識とサーモグラフィーカメラにより最大16人を同時に検温可能なスクリーニングソリューション「サーモロイド Pro」は新千歳空港で採用されている。

 同社は19年1月にKDDIとの資本業務提携を締結。IoTパッケージ製品の共同開発などの活動を一層強化するとともに、5Gなどの新技術に対する情報連携などを行ってIoT市場における新サービス開発に注力していく。

 IT専門調査会社のIDCジャパンによると、国内IoT市場は24年に向けて年間平均成長率10%超と予測されている。同社は23年8月期の売上高目標35億~50億円を掲げ、年平均15%以上の売上高伸長を目指す。「当社のコーポレートスローガンは『あなたの「見える」を、みんなの安心に』です。IoTを活用し、地球温暖化による環境問題を始め様々な社会の課題を解決するリーディングカンパニーを目指してソリューションを提供していきます」(同氏)

(提供=青潮出版株式会社