暗号資産のビットコインと聞くと、変動の激しい投資商品と思っている人もいれば、今後の主要通貨になると考えている人もいるでしょう。実際に、世界に目を向けると、ビットコインを法定通貨として採用する国も出ています。そこで今回は、身近な通貨になるかもしれない暗号資産の基本情報とともに、税金の関係や法人化するメリットについて解説していきます。

目次

  1. ビットコインとはどんなもの?
  2. 雑所得とは?株式の税金と何が違う
  3. 暗号資産で税金が発生するタイミング
    1. 暗号資産の売却
    2. 暗号資産で買い物
    3. 暗号資産で他の暗号資産を購入
    4. 暗号資産をマイニングで入手
  4. 法人化するメリット
    1. 税負担の軽減
    2. 損益通算できる
    3. 損失を繰り越せる
  5. 暗号資産にまつわる税金の仕組みを知って賢く取引しよう

ビットコインとはどんなもの?

気になるビットコインと税金の関係!法人化するメリットとは
(画像=OpenStudio/stock.adobe.com)

「暗号資産」というと、また新しいものが出てきたのかと感じる人もいるかもしれないので、簡単に暗号資産とビットコインについて紹介します。まず暗号資産は、以前「仮想通貨」とも呼ばれていました。

2020年5月の資金決済法改正により、法令上、暗号資産へ呼称変更されただけで、仮想通貨と暗号資産は同じものです。そして暗号資産とは、インターネット上で取引できる通貨のような性質を持った電子データのことをいいます。電子マネーと同じようなイメージですが、電子マネーは円での取引となるので、暗号資産ではありません。

また暗号資産には、ビットコインやライトコイン、リップル、イーサリアムなどさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。取引は、交換所や取引所を通じてインターネット上で行い、暗号資産の価格は、株式のように利用者の需給関係で変動するのです。

国が管理している通貨ではないため、購入時よりも値上がりしたり、気づけば暗号資産が無価値になっていたりするリスクもあるでしょう。

雑所得とは?株式の税金と何が違う

基本的に暗号資産は、利益が出た際には税金を支払わなければなりません。ここでは、暗号資産の税区分と、暗号資産と同じく価格が変動する株式の売却時に発生する税金と何が違うのかを見ていきましょう。

ビットコインのような暗号資産の取引で得た所得は、原則雑所得に区分され、雑所得には公的年金や副業に係る所得などが含まれます。そして雑所得は、総合課税といった課税方法をとるため、給与所得など他の所得と合計し、その金額に応じて課税されるのです。

株式の売却による所得は、申告分離課税となり、他の所得に加えず税金を計算するため、この点が違います。雑所得で総合課税の方式をとるということは、所得が多くなるほど課税負担が大きくなるということです。株式であれば、申告分離課税なら20.315%で済むところ、暗号資産のように総合課税の場合、累進課税となり住民税を含めると最高で約55%の税率が適用されます。

ただ、1ヵ所からだけの給与所得で、給与所得が年間2,000万円を超えず、仮想通貨などの所得合計が20万円を超えない場合は、申告が不要です。

暗号資産で税金が発生するタイミング

株式であれば、売却したときに税金が発生しますが、暗号資産では、売却時以外でも税金が発生するタイミングがあります。ここでは、暗号資産で税金が発生するタイミングをチェックしていきましょう。

暗号資産の売却

株式や投資信託などと同じパターンです。暗号資産を売却したときに、購入したときの価格より売却したときの価格が高ければ、その差額に対して税金がかかります。

暗号資産で買い物

暗号資産は通貨としての性質もあるため、暗号資産で買い物をすることも可能です。そのため、暗号資産で支払いをした時点で損益が決まり、支払時の価格が購入時よりも高ければ、その差額に対して課税されます。

暗号資産で他の暗号資産を購入

先ほどの買い物と同じ考え方で、保有している暗号資産を使って他の暗号資産を購入した際は、購入時点で損益が決まります。保有している暗号資産を購入したときよりも、他の暗号資産を購入した時点の価格が高ければ、差額分が課税対象になるでしょう。

暗号資産をマイニングで入手

マイニングの報酬として暗号資産を受け取ると、その時点の価格からマイニングでかかった費用を引いた金額が課税対象になります。

そもそもマイニングとは、ビットコインなどの取引を承認する作業のことをいい、この作業に協力すると報酬として暗号資産を受け取れるといったものです。ただこの作業には専用のハードウェアなどが必要になるため、個人で参加するのはなかなか難しいでしょう。

法人化するメリット

ビットコインなどの暗号資産で利益を得るのは嬉しいものの、利益が大きすぎたり、他での収入が多かったりすると、かなりの税金を支払わなければなりません。そこで考えたいのが節税方法ではないでしょうか。

節税方法にはいくつかあり、たとえば会社員の方なら、年間の利益を確定申告不要の20万円以下に抑えるのも1つの作戦です。ただ、暗号資産の価格が急騰して、利益を確定したいときに、利益を20万円以下に抑えるのは難しいケースもあるため、投資額や価格の変動によっては使えないかもしれません。

もう1つの節税方法として注目されているのが、法人化です。簡単にいえば、暗号資産の取引専門の会社を設立するということです。そこで最後に、法人化するメリットについて紹介します。

税負担の軽減

個人が暗号資産で利益を得た場合、総合課税のため住民税を含めると、所得税の税率が最高でおよそ55%となります。つまり、所得が多いと、半分ほどを税金として支払う必要があるのです。反対に法人税で考えると、法人の種類や区分によりますが、多くても22~33%の税負担で済むため、法人化して取引すると大幅な節税が期待できるでしょう。

損益通算できる

通常、暗号資産を個人で確定申告しようとすると、損益通算ができません。損益通算とは、他の所得と損失を合算して計算すること、具体的にいうと、暗号資産の取引で大きな損失が出た際に、その損失分を他の所得と相殺できるということです。

しかし法人であれば、法人内の取引はどんなものでも合算するため、暗号資産で出た損失を他の所得と合算して計算ができます。つまり法人であれば、損益通算が可能となるのです。

損失を繰り越せる

一般的に、株式や投資信託などの譲渡損失は、確定申告をすれば個人でも3年間繰り越せますが、暗号資産の損失は翌年の確定申告に繰り越せません。しかし法人であれば、繰越欠損金として暗号資産でも損失を繰り越せるのです。さらに法人であれば、繰越欠損金の申告ができる期間は10年となっています。

ただ、法人にするデメリットもあります。法人が、活発に取引されている市場の暗号資産を持っている場合は、期末に評価損益を益金や損金として算入しなければならないという決まりがあるのです。個人であれば、暗号資産を持っているだけなら課税されませんが、法人なら保有しているだけで、課税される可能性も出てきます。

たとえば、3月決算の法人が1月に100万円でビットコインを購入したとします。3月末の決算時に、ビットコインの価格が600万円になると、500万円の含み益が発生し、その利益を計上しなければなりません。利益を計上するということは、その分税金がかかることになります。

しかしそれは3月末時点の評価であって、その後ビットコインの価格が上がり続けるとは限りません。万一、納税後にどんどん下落するようなら、支払った税金分を取り戻すことは難しいでしょう。

また下落を続けて、次の決算ではさらに赤字になったとします。すると、繰越欠損金扱いで損失を繰り越せますが、その後も下落するようなら、さらに取り戻すことが厳しくなるでしょう。法人での取引はメリットもありますが、潤沢な現金を用意していないと、こういったケースの税金の支払いに困ることもあるため注意してください。

対処法とすれば、他のFX(外国為替証拠金取引)や株式の取引と相殺したり、課税される可能性がある金額だけ暗号資産を売却して現金を用意したりする方法が考えられます。

暗号資産にまつわる税金の仕組みを知って賢く取引しよう

暗号資産は、これからも注目される通貨になる可能性があります。暗号資産がどういったもので、現在の税制度はどうなっているのかを正しく知ってから取引を始めましょう。

基礎知識を学んでから取引すれば、思ってもいないところで課税されたり、多額の税金を支払ったりするリスクを回避できます。暗号資産にまつわる税制や法整備が、着々と進んでいく可能性もあるため、最新の情報をチェックするようにしましょう。

執筆者:山村望愛

(提供:JPRIME


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