丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

比較的新しい物件が安く買えることで「築浅物件」が人気を集めています。しかし、有利な点だけでなくデメリットもあるといわれます。築浅物件のメリット・デメリットを確認し、購入する場合の注意点や新築物件と比べてどちらが有利かを解説します。

目次

  1. 「築浅」とはどれくらいの築年数を指すのか、判断のポイントは?
  2. 築浅物件を選ぶにはメリット・デメリットの総合的判断が必要
  3. 築浅物件を探す際の注意点 
  4. 不動産投資における投資物件の種類 
  5. 新築物件を選ぶメリットおよびデメリット 
  6. 目標に合わせて新築・築浅を選択しよう
  7. 築浅物件に関するよくある質問

「築浅」とはどれくらいの築年数を指すのか、判断のポイントは?

築浅の物件で不動産投資を行うメリットとは?
(画像=marina_dikh/stock.adobe.com)

不動産投資の物件を探すときに築浅と聞くと魅力的に感じますが、築浅とはどれくらいの築年数を指すのか、判断するためのポイントを把握しておく必要があります。そして、築年数が浅いというだけで良好な物件とは限らない点にも注意が必要です。

「築浅」に定義はあるのか?

築浅という言葉に対して、新築として売り出されてからまだ数年しか経っていない比較的きれいな物件というイメージを持つ人は多いでしょう。しかし、新築には「完成後1年未満で、なおかつ未入居・未使用のもの」という定義がありますが、築浅には明確な定義はありません。

SUUMOが実施した「築浅に関するアンケート」(有効回答300人)において入居者が築浅と思えるボーダーラインを聞いたところ、築5年以内(123人)が最も多く、次いで3年未満(91人)、10年未満(51人)の順となっています。この結果から入居者に築浅とイメージさせるには築5年以内が基準と考えてよいでしょう。

参考:SUUMO「あなたにとって、築浅の基準は「築何年」まで?」

築年数が浅い=良好な状態とは限らない

築年数が浅い物件はきれいな可能性が高いですが、必ずしも良好な状態とは限らないため、内見時にはチェックが欠かせません。たとえ1~2年の入居期間であっても入居者の使用状態が悪ければ劣化が進んでいる可能性はあります。

投資物件を単に築年数の浅さだけで探すのは避け、デメリットも考慮して新築物件と並行して探すのも有効な方法です。新築物件であれば多少購入価格は高くても開業時の家賃を高く設定できるメリットがあります。

築年数によって注意すべきポイント

完成後1年未満の物件であっても、一度でも入居があれば新築ではなくなるので、築1年未満で入居者が退去した物件は築浅物件と呼ばれます。新築時よりは多少安く購入できる可能性があるので、売り物件があれば検討する価値はありそうです。ただし、新築としての価値はなくなるので、家賃も多少下げる必要がある点がデメリットです。

上記のアンケート結果から、築5年以内は築浅と広告に表記して問題なさそうですが、募集期間中に5年を超えるケースも考えられるので、築浅物件として募集したいなら、購入する際に築1~4年程度の物件を選んだほうが無難です。

もう1点、耐震基準については1981年6月に建築基準法が改正され基準が厳しくなったので、2022年7月現在では築41年以内の物件なら耐震基準を満たしていると判断できます。そのため、築浅物件であれば問題ないでしょう。

築浅物件を選ぶにはメリット・デメリットの総合的判断が必要

築浅物件を選ぶにはメリットとデメリットを把握して、総合的に判断する必要があります。新築と比べて価格差が小さい場合、あえて築浅物件を購入するには、メリットのほうが大きいと判断できる理由付けが必要です。築浅物件のメリット・デメリットを確認しておきましょう。

築浅物件を選ぶメリットとは?

新築物件と比較して物件価格が安くその分利回りが高くなりやすい点がメリットです。築浅物件であれば建物の法定耐用年数も長期間残っているため、比較的融資を受けやすい点もメリットといえるでしょう。その他にも、以下のようなメリットがあります。

室内外の劣化が少ない

近年の住宅資材の品質向上により、マンション建物の室内外は以前に比べて劣化の速度は遅くなっているといえます。築5年以内の築浅物件であれば、修繕やリフォームが必要なほどの傷みはない可能性が高いでしょう。ただし、入居者の使用状況によっては修繕が必要なケースも考えられるので、修繕リスクがゼロというわけではありません。

最新の住宅設備が導入されている

築浅物件は最近建てられたため、最新の住宅設備が導入されていることが期待できます。「インターネット無料」「モニター付きインターホン」「独立洗面台」などは賃貸物件では必須の設備になっており、物件がユーザーから選ばれる大きな要素といえます。築古物件では導入されていない可能性が高く、差別化ができる点がメリットです。

築浅物件のデメリットとは?

築浅の場合、経過年数による家賃の下落幅が大きい点はデメリットです。一度でも入居者があった物件は、新築という付加価値がなくなるため、以降は家賃を下げて募集する必要があります。とはいえ借り手にとっては、割安の価格で築浅の物件に入居できる点はメリットにもなるため、需要は多いといえるでしょう。その他のデメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

人気が集中しやすく購入するのが難しい

築浅物件は比較的きれいな建物を新築よりも安い家賃で借りることができるため、築古物件に比べてユーザーの人気が集中しやすい傾向があります。このように空室リスクが低いことに着目して築浅物件を狙っている投資家も多いことから、購入するのが難しい傾向がある点はデメリットです。

立地が悪いと入居者確保に苦労する

マンション用地は年々少なくなっていくため、最近建てられた物件は立地条件が悪い場合があります。とくに駅から遠い立地の物件は、いくら築浅でも入居者を確保するのに苦労するかもしれません。築浅でも立地には十分注意する必要があります。

築浅物件を探す際の注意点 

築浅物件であればどれでもいいわけではありません。なぜなら不動産投資では、借り手が付かなければ収入を得ることができないからです。築浅物件を購入できても投資に失敗してしまっては元も子もありません。

立地条件を重視する

不動産投資では、立地条件を考えることは必要不可欠です。いくら利回りが高く割安な築浅物件でも需要がなければ意味がありません。そのため、事前に物件の賃貸需要についてきちんとリサーチしておくことが大切です。

単身会社員や学生をターゲットにしたワンルームマンションであれば、最低限駅から徒歩10分程度であることが必須です。子育て世帯が入居するファミリーマンションの場合は、学校や保育園、スーパー、公園などが近い立地であれば、駅から多少遠くても入居需要が見込めます。ワンルームマンションは利便性、ファミリーマンションは住環境を重視する必要があります。

レバレッジ効果で自己資金を有効に活かせるように考える

不動産投資は、金融機関から融資を受けて物件を購入し賃貸物件として貸し出すことで収入を得る投資手法です。ローンの返済金は、家賃収入が原資となるため、自分の資金は毎月数万円ずつしか積み上がらない可能性があります。しかし優良な物件を所有し多くの資金を生み出すスキームを構築することで金融機関からさらにお金を借りやすくなることが期待できるでしょう。

資金調達がしやすくなることで今まで以上に大きな規模の物件を購入することができるようになります。これが不動産投資におけるレバレッジ効果です。

▽レバレッジシミュレーション(家賃利回り8.0%、借入金利2.0%、元利均等払い、返済期間30年)

購入物件価格自己資金借入額年間総収益支払い利息自己資金利回り
A:2,000万円2,000万円0160万円08.0%
B:4,000万円2,000万円2,000万円320万円約40万円14.0%
C:6,000万円2,000万円4,000万円480万円約79万円20.05%
※諸経費は含んでいません。支払い利息は初年度の金額です。

A: 160万円÷2,000万円=8.0%
B: 320万円-約40万円÷2,000万円=14.0%
C: 480万円-約79万円÷2,000万円=20.05%

シミュレーションのように借入額が多いほど、自己資金利回りが高くなります。C物件はA物件よりも20.05÷8.0=2.50625で、約2.5倍のレバレッジを効かせたことになります。全額自己資金のほうが安全性は高いですが、資金効率は悪くなることがわかります。

不動産投資における投資物件の種類 

不動産にはさまざまな種類があり、大きく以下の4つに分けることができます。

・区分マンション
・戸建て
・1棟アパート
・1棟マンション

区分マンションと戸建は投資金額が少ないため、副業で行うことが可能です。一棟アパートと一棟マンションは投資金額が大きく管理も手間がかかるので専業で行うのに向いています。遊休地を持つオーナーが一棟物件を建築すると、無駄に固定資産税を払い続けることがなくなり、土地を有効活用できます。

投資物件ごとの特徴

上に挙げた投資物件の特徴について表にまとめると以下のようになります。

区分マンション戸建て1棟アパート1棟マンション
投資金額中~大
空室リスク0か1000か100分散可能分散可能
立地リスク分散可能分散可能複数棟で分散複数棟で分散
事業規模の拡大スピード遅い遅いやや速い速い
担保価値低い土地の値段次第土地の値段次第高い
流動性高い高い低い
その他物件管理費や修繕積立金が割高になるため、手取り収入がマイナスになる可能性がある賃貸市場で供給が少なく、比較的埋まりやすい取得競争が激しい。1度の手間で得られる利益が大きい一方でリスクもそれなりに大きくなる

このように区分マンションや戸建ては、投資金額が比較的少なくてすむ点はメリットです。しかし戸建ての場合、需要は多いものの供給が少ないことや家賃収入がそれほど高くないことから規模拡大のスピードが遅くなる特徴があります。1棟アパートや1棟マンションになると家賃収入も多く拡大スピードも速くなる傾向です。

とくに遊休地を持っていて、有効に土地活用したい場合は1棟アパート・マンションを建築するのが最も効率的です。土地の購入費用がかからない上、土地を担保に建築資金の融資が受けられるため、少ない自己資金で「一国一城の主」になることが可能です。アパートとマンションの比較では、法定耐用年数が長く、担保価値が高い点で1棟マンションが有利といえます。

ただし、規模が大きい分、修繕費などの費用が多くかかるリスクも忘れてはいけません。

区分マンションと一棟マンション。どちらを選ぶべき?

一般的に投資金額が少なくてすむ区分マンションから不動産投資をスタートする人が多い傾向です。しかし区分マンションは、節税目的で買う人が多いため、買い手が多く収益の割に値段が高くなってしまい、その結果利回りが低くなりやすい傾向があります。また区分マンションの場合は、毎月の修繕積立金や管理費、共益費がかかることも忘れてはいけません。

そのためキャッシュが貯まりにくく、物件によっては毎月の収支がマイナスになることもあり得ます。区分マンションを購入する場合「不動産以外の収入が多いので節税したい」「ローン完済後に年金代わりにしたい」といった理由であればよいかもしれません。しかし「できるだけ早く事業規模を拡大したい」と考えているのであれば一棟マンションから始めることがおすすめです。

青色申告特別控除65万円の適用など税制優遇が受けられる事業規模になるには「5棟10室基準」をクリアしなければなりません。その場合、一戸建てなら5棟、区分マンションなら10室を購入しなければならず、購入にかなりの期間を要する上に管理に手間がかかり、効率的とはいえないでしょう。

その点、一棟マンションであれば投資額は大きいですが一度の購入で事業規模をクリア(10戸以上の物件の場合)できます。しかも区分所有と違い土地もすべて自己所有になるため、担保価値が高くなり、金融機関の融資審査で有利になるというメリットがあります。

もちろん事業規模を目指さず、ローン完済後に家賃収入を個人年金代わりにするという目的であれば区分マンションは有効な物件タイプといえます。区分か一棟かは自分自身のマンション経営の方針によって選択すればよいでしょう。

新築物件を選ぶメリットおよびデメリット 

新築物件のメリットは、内装や外観がきれいなことから客付けがしやすいことです。開業からしばらくは修繕箇所が発生しないので修繕費がかからない点でも有利です。また建物が新しく法定耐用年数が長期間残っていることから長期の融資を受けやすくなる点もメリットの一つです。

半面デメリットは、価格が高いことから利回りが低くなりがちなことです。投資額が大きくなるため、中古に比べてある程度自己資金がないと購入が難しいかもしれません。

新築物件を選ぶ際の注意点とは

新築物件は「最初の入居者」という付加価値から開業時の入居者募集で高い家賃を設定できる半面、2人目以降は「築浅物件」に変わり、家賃が下落する傾向があります。そのため、ある程度家賃が下落することを想定して資金計画を立てることが必要です。

また、新築マンションは価格が高い分、中古マンションよりも表面利回りが低くなります。しかし、中古物件は空室リスクが高く、修繕箇所が発生する確率も高くなるため、諸経費を引いた実質利回りでは新築物件のほうが高い場合もあります。単純に利回りだけで新築・中古を選択しないことが大事です。

もう1点、新築マンションの場合は完成以前に売り出しを行う場合があります。完成していない物件は内見することができないため、モデルルームや図面などで確認するしかありません。完成済み物件で部屋を実際に見ることが理想ですが、人気物件は完成前に完売してしまうこともあるので、判断が難しいところです。

さらに、新築物件はもともと数が少ないので、中古物件に比べて優良物件を探しにくいという事情があります。日頃からの情報収集が勝負といえるでしょう。

目標に合わせて新築・築浅を選択しよう

不動産投資において重要なことは、目標を明確にすることです。不動産投資を始める前に「自分はどのくらいの収入を得たいのか」をしっかりと明確化しておきましょう。不動産投資の目標は、「お小遣い程度の収入でいい」「不動産投資だけで生計を立てたい」など人によって異なります。また各目標によって探すべき物件や取るべきリスクの度合いが変わってくる点は押さえておきましょう。

不動産投資で給料以上の収入を目指すのであれば、一棟アパートや一棟マンションといった大きな物件の購入が必要となり、さらには融資の知識も必要です。一方お小遣い程度の収入を目標とするのであれば区分マンションを自己資金のみで購入できる可能性もあります。その場合、借金リスクを負わないことはメリットです。

ただし不動産投資を行う場合、「将来的に規模を大きくしていきたい」と考える人は多いのではないでしょうか。事業規模を大きくするためには、どうしてもレバレッジ効果を利用することは避けて通れません。レバレッジ効果を最大限に高めるには「今後何年間続けていく必要があるのか」を検討することが必要です。また、最適な物件は何かを考える際に築浅の物件を候補に入れることも大切になります。

新築よりも安く購入し高い利回りで運用することができれば事業拡大のスピードを高めることが期待できるでしょう。例えば最終目標が「不動産投資で給料以上の収入を得ること」というものであれば長期目線で考えることが大切です。投資開始時点では、築浅の区分マンションから始め軌道に乗り始めたら一棟アパートや一棟マンションの所有を考えることも選択肢の一つといえます。

一方で築浅物件にもデメリットはあります。まず新築ほどの高い家賃を設定することはできません。比較的新しいのに新築よりも価格が安いため、好立地の築浅物件を探すのが難しいという事情もあります。また築浅でも立地が悪いと入居者がなかなか決まらないという事態が考えられます。無理に立地が悪い築浅物件を買うなら、新築物件を選んだほうが長期的には収益が上がる可能性が高いといえるでしょう。

投資に定年はありません。自分が描く成功の姿を揺るがすことなく生涯にわたって収入を得ることができる体制づくりのためにも、新築・築浅それぞれのメリット・デメリットを把握して、収益の上がる物件を選ぶようにしましょう。

築浅物件に関するよくある質問

Q.築浅物件とは?

築浅物件とは、建築されてからおおむね5年以内の物件のことを指します。築1年以内の建物でも、一度でも入居があれば築浅物件に分類されます。

Q.築浅物件のデメリットは?

築浅物件のデメリットは、新築時より家賃を下げなければならないことです。賃貸物件は一度でも入居があると、新築として募集することはできません。誰も住んだことのない住宅に入居できることに高い家賃を払う価値があるからです。

Q.築浅物件と新築物件はどちらが有利?

築浅物件は物件価格が新築時より安くなるので、初期費用を低く抑えることができます。ただし、入居者の使用状況によっては劣化が進んでおり、リフォームなどの費用が必要になる場合があります。

一方の新築は法定耐用年数が長く、担保価値が高いため、金融機関から融資を受けやすいメリットがあります。価格は高いですが、劣化がないため余計な費用がかかりません。

それぞれメリット・デメリットがありますが、マンション経営の観点から考えると家賃を高く設定でき、スタートから入居者を確保しやすい新築物件が有利といえるでしょう。

(提供:YANUSY

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