次世代レクサスの第2弾モデルの新型LXが世界初公開。商品コンセプトは「世界中のどんな道でも楽に、上質に」。4座独立式シートを備えた“エグゼクティブ”の新設などグレード展開も拡充
トヨタ自動車が展開する高級車ブランドのレクサスは2021年10月14日、第4世代となるフラッグシップSUVの新型LXを、オンラインならびにアラブ首長国連邦およびサウジアラビア王国で実施するイベントを通じて世界初公開した。日本での発売は2022年初頭を予定している。
新型NXに続く次世代レクサスの第2弾モデルに位置する新型LXは、「世界中のどんな道でも楽に、上質に」をコンセプトに、長年培った信頼性や耐久性、悪路走破性に加え、上質さをさらに磨き上げた唯一無二のSUVに仕立てたことが特徴である。グレード展開としては、3列式シートを配した標準仕様のほか、新たに4名乗り仕様の“エグゼクティブ(EXECUTIVE)”と、国内専用モデルとなる“オフロード(OFFROAD)”をラインアップした。
まずは基本骨格から解説しよう。新型LXは、ランドクルーザー300にも採用する新世代のGA-Fプラットフォームをレクサス車で初導入。伝統のラダーフレームは、最新の溶接技術の活用等により、高剛性(従来型比+20%)かつ軽量なフレームとし、衝突安全性能や静粛性ならびに走りの質を向上させる。また、ボディについても高張力鋼板の採用拡大やボンネット、ルーフ、全ドアパネルのアルミニウム化(ルーフのアルミニウム化はレクサス初)を実施し、同時にパワートレインの搭載位置を車両後方に70mm、下方に28mm移設。これらの新構成により従来型比で車両重量が約200kg軽くなり、合わせて低重心化や前後重量配分の改善を実現した。さらに、操舵時のボディ変形挙動をコンピューター解析し、スポット打点増し打ちやドアオープニング周囲およびフロアへの構造用接着剤の最適配置などによりねじり変形を抑えることで、優れたボディ剛性を達成。そして、悪路走行時に応力を受けやすいサイドレール断面特性を最適化したほか、路面からの入力に対する強度、剛性、衝突安全などの性能バランスを取るために9本のクロスメンバーを配置する。最大5mmの厚鋼鈑や高張力鋼板を適材適所に配して、悪路走行時に受ける衝撃に対して車体の歪みを抑え、操縦安定性や乗り心地への影響を低減させたことも訴求点だ。ほかにも、サイドレールの断面の高さを増した部分やクロスメンバーの一部に、厚板と薄板の鋼板をレーザー溶接によって結合し、プレス成形する世界初の技術「曲線テーラード・ウエルドブランク」を用いた工法を取り入れ、強度と剛性を維持したまま、大幅な軽量化を具現化している。
懸架機構に関しては、フロントにリバウンドストロークを従来型比で15mmアップしたハイマウントダブルウイッシュボーン式サスペンションを、リアに同20mmアップしたトレーリングリンク車軸式サスペンションを採用。サスペンションジオメトリおよびコイルスプリングのばね定数を最適化したほか、リアはショックアブソーバーをロアコントロールアームより外へ配置して、アブソーバー取付角度を車軸の動く角度に適合させた。
また、オンロードの走行性能をより高める目的で、選択可能な車高ポジションを拡大したほか、従来型では前輪のみに装着していたばねレート切り替え装置を後輪にも装備し、加えて車高の状態をメーターパネルだけでなく7インチタッチディスプレイにも表示可能とした新AHC(Active Height Control suspension、車高ポジションはNormal/Hi1/Hi2の3種類と乗降時のLowを設定)、リニアソレノイドバルブ方式に変更して減衰力切替えの優れた応答性を実現したAVS(Adaptive Variable Suspension system)、新規にモーターと減速機を用いた電動パワーステアリング(EPS)、ブレーキペダルの操作量をセンサーで検出して最適な制動力を油圧ブレーキで生み出す電子制御ブレーキシステム(ECB)などを採用。一方、オフロードの走破性向上を狙って、従来型と同レベルの対地障害角(アプローチアングル/デパーチャーアングル/ランプブレークオーバーアングル)や最大安定傾斜角44度、登坂能力45度、最大渡河性能700mmを確保したうえで、従来のブレーキ油圧に加えて駆動力やサスペンションを統合制御し、また従来ローレンジ(L4)のみであった動作範囲をハイレンジ(H4)にも拡張した進化版のマルチテレインセレクト(AUTO/DIRT/SAND/MUD/DEEP SNOW/ROCKの6モードを設定)、ドライバーが選択する5段階の速度設定に合わせて駆動力とブレーキ油圧を自動で最適制御するクロールコントロール、4輪のブレーキ油圧を自動制御してタイヤをロックさせることなく安定して降坂するダウンヒルアシストコントロール、フロント・サイド両側・リアに搭載したカメラでとらえた映像をカメラスイッチで切り替えて12.3インチディスプレイの全面に車両周辺映像をより鮮明に、かつ滑らかな動きで映し出すマルチテレインモニター、後退時に手前で撮影された過去の映像を合成することで車両を疑似的に透過して後輪付近を表示する世界初採用のバックアンダーフロアビューなどを組み込んだ。
パワーユニットには、V35A-FTS型3444cc・V型6気筒DOHCマルチホール直噴インジェクタ付D-4STガソリンツインターボエンジン(最高出力415ps、最大トルク650Nm)を搭載。トランスミッションには発進時を除くほぼ全域でロックアップを作動させるとともに、ギアステップのクロス化や全体のギアレシオのワイドレンジ化を果たしたDirect Shift-10AT(電子制御10速オートマチックトランスミッション)を組み合わせる。一方、駆動機構にはセンターデフ付フルタイム4WDを採用。また、車体の過度な傾斜などによりオイルレベルが著しく下がった場合に油面低下を検出して警告灯点灯によりドライバーに知らせるオイルレベルセンサーや、防水・防塵性能が高いベアリングおよびオイルシールを導入した。
エクステリアについては、“Dignified Sophistication”をデザインキーワードとし、本格オフローダーとしての走破性を考慮しつつ、圧倒的な存在感を狙った、上質で洗練されたスタイリングを創出する。基本フォルムは、フロントピラーを車両後方へ引くキャブバックワードデザインとし、加えて骨太なボディにレクサス最大となる22インチタイヤを採用して、ダイナミックかつスマートなプロポーションを具現化。同時に、プラットフォームを新たに開発しながら、歴代モデルから培った高い悪路走破性とゆとりある室内空間を両立するホイールベースの黄金比2850mmや優れた対地障害角を継承した。
各部のデザインにも徹底してこだわる。
フロント部では、新しいスピンドルグリルの表現として7組のフローティングバーで立体形状をつくり、フレームのないシームレスな構造を新採用。また、サイドラジエーターグリルも冷却性能を確保するために開口部を大きくとり、整流効果の高い形状とする。さらに、ヘッドランプはL字型のクリアランスランプ(デイタイムランニングランプ機能付)を立体形状へと刷新し、合わせてインナーレンズを二重化したうえでそれぞれに異なる段差を設けて、奥行き感と見る角度による変化を演出した。一方でサイドビューでは、フロントから始まる骨太で水平軸のトルソーをリアまで貫き、ルーフからバックウィンドウへ絞り込んだクォーターピラーと、ロッカー下端からリアタイヤ後方へ駆け上がるアンダーの流れによって、一体感のある強い塊感を表現。ブラックと切削光輝のハイコントラストでレクサス最大径を強調した22インチ鍛造アルミホイールの新装備も注目点だ。そしてリアセクションでは、先にデビューしたNXと同様、ゲート中央部に配するブランドマークを従来のL字ロゴから新たなLEXUSロゴに刷新したうえで、フロントからショルダー、さらにリアのシルエットに連続する軸の流れにL字形状と一文字を組み合わせた新デザインのコンビネーションランプを装備した。
ボディカラーは、圧倒的な存在感を引き立てるソニッククォーツやソニックチタニウム、マンガンラスター、ブラック、グラファイトブラックガラスフレーク、テレーンカーキマイカメタリックといった高品質な外板色を設定している。
内包するインテリアは、オフロードでも安心とくつろぎ感をもたらす室内空間をベースに、クルマとドライバーがより直感的につながり、運転操作に集中できる新たなコクピット思想「Tazuna Concept」を導入する。インストルメントパネルは薄く見せる二段構成とし、上段はエアコンの吹き出し口を左右にオーバーハングさせることで、より強い水平基調と広がり感を演出。下段では、インストルメントパネルのロアから左右ドアアシストグリップまでつながった造形として、乗員を包み込むような安心感を実現した。また、前方の道路からヘッドアップディスプレイ、メーターへとつながる走行情報表示系を配置し、合わせて12.3インチタッチディスプレイをナビ画面とすることで、運転中のスムーズな視線移動を創出。タッチディスプレイ上端を水平に配して、悪路走行時においてもドライバーが平衡感覚を保てるように配慮したこともトピックだ。さらに、マルチテレインセレクトなど走行系スイッチをセンタークラスターの手の届きやすい位置にレイアウトし、同時にクライメイトコントロールなどのスイッチを機能的に整理して7インチタッチディスプレイ下に配置。ダイヤルやトグル、プッシュの操作方法や形状に変化をつけることで、直感的な操作性を具現化したことも、新型LXのアピールポイントである。
機能面では、レクサス初の指紋認証スタートスイッチを全車に標準で装備。また、各種メニューの選択スイッチを運転席側に常時アイコンで表示することで優れたアクセス性を実現するとともに、画面全体のレイアウトも情報の粒度に応じて表示エリアを分け、ナビや音楽、車両設定などの操作フローを統一して使いやすさを向上させた最新のマルチメディアシステムを採用する。さらに、従来の車載ナビとクラウド上の地図情報を活用するコネクテッドナビを組み合わせたハイブリッド型のナビゲーション、反射防止コーティングを施したうえでボンディング技術(ガラスパネルと液晶の隙間を埋めて貼り合せる技術)も取り入れたフロントガラスパネル、ステアリングのトークスイッチ操作による起動に加えてディスプレイのマイクアイコン操作や音声による起動も可能とした最新の音声認識機能、大容量のサブウーファーボックスを含む10個のスピーカーで構成したレクサスプレミアムサウンドシステム、直感操作が可能なタッチパネル式の新世代リアエンターテイメントシステムなども設定した。
インテリアカラーはTazuna Conceptに基づいたコクピットに最適な、運転に集中できる配色で構成。3列シート仕様ではブラックのほかにヘーゼルやホワイト&ダークセピア、クリムゾンを、4名乗り仕様のエグゼクティブではブラックやサンフレアブラウンを用意する。また、シート自体はフロントに座面の安定性と圧力の分散性の高い素材のクッションパッドを、2列目にサイドサポートの高さとクッション性を最適化した新タイプを、3列目にユーザーニーズに合わせて調節できるよう電動リクライニングを採用した。さらに、シートアレンジとしてレクサス初となる「マルチシートオートアレンジ」を導入。荷室のオートアレンジスイッチの操作によってフロントシートを含む全てのシートが動いて広大な荷室を作り出す「ラゲージスペース拡大機構」と、2列目シート肩口のスイッチを押すことによってシートを電動で折りたたみつつ跳ね上げてサードシートへの乗降性をより容易にする「ウォークイン機構」を設定している。
一方、エグゼクティブにはNASAが提唱する中立姿勢を参考に、助手席を前方に移動させつつ、最大48度のリクライニングと座面角度をコントロールできる機能を採用。また、助手席背面のリアシートディスプレイを倒して前方視界を確保することで、開放感と最大レッグスペース1000mmのくつろぎの空間を実現する。さらに、リアシート自体には頭部、腰、臀部を優しく包み込む凹形状のヘッドレスト、シートバック、クッションを採用。快適なプライベート空間づくりを追求して、専用のリアシートディスプレイや読書灯、オーディオシステム、エアコン吹き出し口、センターコンソール、リアコントロールパネル、USB&HDMIソケット、新世代リアエンターテイメントシステムなども組み込んだ。
先進安全運転支援システムのLexus Safety System+に関しては、ミリ波レーダーおよび単眼カメラの性能向上により、昼間の自転車運転者や夜間の歩行者も検知可能なプリクラッシュセーフティの対応領域を拡大し、交差点右折前に前方から来る対向直進車や右左折時に前方から来る横断歩行者を検知できるように設定する。加えて、ドライバーの操舵をきっかけに車線内で操舵をアシストする緊急時操舵支援や低速時の事故予防をサポートする低速時加速抑制などの機能を追加。また、同一車線内中央を走行できるよう操舵を支援する高度運転支援機能のレーントレーシングアシスト(LTA)の車線認識にAI技術を活用することで支援範囲を拡大し、さらに自動車専用道路などにおいて設定した車速内で前走車との距離を一定になるよう加減速制御するレーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)にカーブの大きさに合わせて減速するカーブ速度抑制機能を採用した。ほかにも、カメラで 特定の道路標識を読み取ってマルチインフォメーションディスプレイに表示するロードサインアシスト(RSA)や最新のドライバー異常時対応システム、光源であるLEDからの光を高速で回転するブレードミラーに照射してブレードミラーに反射した光がレンズを介して高速移動しながら前方を照らす新機構のブレードスキャンアダプティブハイビームシステム(AHS)などを組み込んでいる。
(提供:CAR and DRIVER)