不動産投資で減価償却をコントロールする5つの方法
(画像=PIXTA、ZUU online)

「減価償却が登場する資産といえば不動産」というイメージを持っている人は多い。しかし、ある程度の規模の不動産投資家であっても、自身の状況に合わせて経済的合理性の高い「償却戦略」を持っている人は意外と少ない。

第3回では、第2回に引き続き、7棟を保有する現役不動産投資家であり、『「減価償却」節税バイブル』の著者で不動産専門税理士の萱谷有香氏(叶税理士法人副代表、東京事務所代表)に「不動産投資における減価償却のコツ」を聞く。

菅野陽平
萱谷 有香(かやたに・ゆか)
叶税理士法人東京事務所代表。不動産専門の税理士。不動産投資に特化した税理士事務所で働きながら収益物件について税務と投資面で多くの知識を得られたことを活かし、自らも不動産投資を手掛ける。大手管理会社、ハウスメーカーや賃貸フェアなどで講演実績があり、記事執筆も行う。不動産投資の規模を拡大していくために、なくてはならない金融機関からの融資についても積極的に紹介やアドバイスを行う。金融機関から融資を引きやすい、または金利交渉しやすい決算書の作成を得意とする。物件購入前、物件保有中、物件売却時、相続時、どの時点で相談を受けても必ず投資家にプラスになるアドバイスを心掛けている。著書に『減価償却節税バイブル』( 技術評論社)がある。

法人で減価償却をコントロールする5つの方法

第2回では、法人での不動産投資においては、減価償却をうまくコントロールすることによって利益額を合法的に調整し、有利な法人実効税率を適用させることが肝であると述べた。萱谷氏によると、「法人で減価償却をコントロールする方法」には以下の5つがあるという。

【1】減価償却限度額を最大限に使う方法
【2】借入の返済期限と同じ年数で償却していく方法
【3】建物の付属設備も建物と同じ耐用年数と考えて使う方法
【4】キャッシュフローを安定させられる(完璧に近い形で平準化できる)方法
【5】売却を見据えて使う方法

ここからは、以上5つの方法の概要を見ていこう。なお、「どの方法が適切か」は各人の状況や「どれくらいの規模まで不動産投資を拡大させていきたいか」といった拡大マインドなどによって変わってくるため、一概に決められるものではない。自分の状況と照らし合わせて、経済的合理性が高いと思われる方法を選択してほしい。

「減価償却にそこまで気を遣っていない投資家は【1】の状態になっていることが多い」と萱谷氏は言う。減価償却限度額を最大限に使うということは、利益が出にくくなるということであり、税金の支払いも少なくなるということだ。減価償却を計上できるうちは、手元にキャッシュが残りやすい。そのため、次の物件購入のタネ銭も作りやすく、短期間で投資規模を拡大させていきたい人にはおすすめの方法と言えるだろう。

しかし、「キャッシュフローが厚い状態がずっと続くわけではない。不動産投資全般に言えることだが、減価償却を早めに使って最初にラクをすると後々苦しくなる。反対に、最初に苦しい思いをすると、後々ラクになってくる。【1】の人は、どこかで帳尻合わせがやってくることを忘れないで欲しい」と萱谷氏は警鐘を鳴らす。

【1】の場合は、デットクロス(減価償却費よりも元本返済が大きくなり、利益は多いのにキャッシュフローは少ない状態)が訪れるまでに何かしらの対策を打つことが重要だ。いつデットクロスが発生するかを認識しておくことはもちろん、厚いキャッシュフローが出ている段階から、それに甘んじることなく、第2回で紹介したような節税策を練っておくようにしたい。

「多くの投資家は『買いたい病』になっており、買ったあとのことはおざなりになるケースが多い」(萱谷氏)。なお、個人で物件を購入する場合は、減価償却のコントロールはできない(強制償却)ため、この【1】が原則となる。したがって、萱谷氏の警鐘は個人保有の投資家も傾聴したい内容だ。

キャッシュフローの変動幅を少なくする方法

【2】は「建物価額÷借入期間」で求められる金額を減価償却費として毎年計上する方法だ。この方法であれば、借入期間中は毎年一定の減価償却費を計上できるため、急激な利益の増加や税負担の増加が起こりにくく、キャッシュフローが比較的安定するというメリットがある。

【2】がおすすめなのは、「法定耐用年数<借入期間」であったり、「中古の耐用年数<借入期間」であったり、耐用年数オーバーで借り入れができたケースだ。たとえば、「築25年の木造アパートを15年ローンで購入する」といったケースである(住宅用の木造物件の耐用年数は22年)。このような場合、【1】だとすぐに減価償却を使い切ってしまい、その後はキャッシュフローが苦しくなる可能性がある。

融資に詳しい読者であれば、「耐用年数オーバーで借り入れできることは滅多にないのでは?」と感じるかもしれない。しかし、「確かにメガバンクは嫌がる傾向があるが、地銀や信金では耐用年数オーバーでも融資がおりることはある。鑑定士を入れて診断書を出させることで、15年しか貸せない築古物件を20年で貸した事例もあった」(萱谷氏)という。

ただし、減価償却費を一定にしても支払利息は右肩下がりになるので、利益が毎年増えて、税負担は右肩上がりになりやすい(キャッシュフローは減っていく)。あくまでキャッシュフローが「一定になる」わけではなく「変動幅が少なくなり、比較的安定する」方法だと認識しておこう。

【3】は建物付属設備の償却期間をコントロールする方法だ。