デューデリジェンスとは、不動産投資をする前に行う建物の調査のことを指します。不動産投資は、不動産の経済的価値を前提とした投資手段です。そのため投資の成功には、不動産を多角的に調査したうえで正確な価値を算出しなければいけません。そこで今回は、投資のリスクとリターンを正確に把握するために欠かせないデューデリジェンスについて詳しく解説していきます。
不動産投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
そもそもデューデリジェンスとは
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、「Due=正当な」と「Diligence=義務・努力・精査」の合成語で「正当な精査」という意味合いの言葉です。国内でデューデリジェンスという言葉が使われ始めたのは、2000年ごろとされています。当初はM&Aにおける企業の財務諸表や市場での評価を調査することを指していました。企業の価値を多角的に評価して、買収の判断材料にしていたのです。
米国では、不動産の買主がディスクロージャー・ステートメントで物件の現状や過去の修繕履歴などに関するすべての情報を明記した資料を取得することができます。そのため情報の透明性は、非常に高いです。一方日本では、重要事項説明書により一部の情報が公開されていますが米国と比較して非常に少ないといえます。
つまり買主が各種情報を精査する手段は限定的です。このような状況下で高額な不動産投資を成功させるためには、投資対象とする不動産の多角的な評価が求められます。
不動産デューデリジェンスの3つのポイント
不動産デューデリジェンスは、買主と売主の間に情報の不均衡を防ぐために有効的な手段の一つで主に以下の3つの側面があります。
- 法的側面
- 経済的側面
- 物理的側面
法的側面
法的側面としては、所有権の正当性や借地権、地上権、抵当権、境界の確認などの権利関係、物件に関する訴訟の有無などが挙げられます。また建築基準法や消防法に違反していないかといった「法的順守」も調査の対象です。法的側面の確認をおろそかにすると物件購入後に思わぬ訴訟に発展する恐れがあります。
経済的側面
経済的側面では、公示価格や基準地価、固定資産税路線価などから建物の経済的な価値を見極めます。住宅用不動産であれば周辺建物の空室率や家賃相場の調査も行いましょう。このような調査を実施しなければ物件の資産価値を正確に算出することができません。
物理的側面
物理的側面では、建物の築年数や劣化状況、修繕履歴などを確認します。また劣化度合いから修繕費用も算出して正確な初期投資費用の判断に役立てましょう。建物の耐震性や土地環境における地震リスクなども評価の対象です。またアスベストやPCBといった有害物質が建材に使われていないか、土壌の汚染はないかといった細かい調査も行います。
建物デューデリジェンスで事前確認が必要な箇所
建物デューデリジェンスでは、どのような作業を行うのでしょうか。主に以下のような箇所を確認するため、ぜひ把握しておきましょう。
- 配管設備
- 外壁塗装
- 通信工事
- エレベーター
- 耐震工事
配管設備
まずは、配管設備です。1991年以前に建てられた物件は、鉄管のケースがさびていることが少なくありません。その場合は、高額な工事費用がかかるため、注意が必要です。配管の大規模な修繕が行われていれば問題ありません。しかし管理状況に難がある場合は、予想外の出費になる恐れもあるため、必ず事前に確認しましょう。
区分マンションに投資する場合は、管理組合に依頼して議事録などを閲覧し購入する部屋の他に建物全体の修繕履歴や修繕計画をチェックすることも大切です。
外壁塗装
建物の外壁塗装は、塗装のはがれやヒビ、雨水による浸食などを確認します。建物の傾きが原因で外壁に亀裂が生じていることもあるため、外観だけで判断するのは危険です。戸建てに投資する場合は、壁内部への雨水侵入も確認しておきましょう。雨水などの浸食が壁の内部や床下に達している場合は、カビやシロアリの発生要因となりかねません。
シロアリの被害が広範囲に及んでいると小さな地震でも建物が倒壊することもあるため、必ず専門家に調査を依頼してください。
通信工事
通信回線状況も投資判断の材料になります。近年では、ネット回線が引かれていない物件の入居率が低くなる傾向にあるため、建物に引かれている回線の有無や回線の種類を把握しておきましょう。
エレベーター
エレベーターのゴンドラを替える際には、高額な費用が発生します。不要な出費を避けるためにも、保守状況をしっかりと調査しておきましょう。エレベーターのリニューアル・改修工事費用は、1基あたり1,200万~1,500万円が相場です。工法によっては、1基あたり400~700万円でリニューアル・改修できるケースもあります。
国税庁の法定償却耐用年数によるとエレベーターの耐用年数は17年です。一方で国土交通省の長期修繕計画ガイドラインでは「12~15年で修繕」「26~30年で交換」とされています。定期的な点検や修繕を実施していれば20~25年程度は稼働すると考えていいでしょう。
耐震工事
新耐震基準では、中規模地震(震度5強程度)でほとんど損傷せず大規模地震(震度6強~7)で倒壊しない構造が目標です。しかし1981年6月までに建築確認が行われた旧耐震基準の建物は、大規模地震に弱い一面があります。旧耐震基準の建物は、物件価格が比較的安くなり利回りが高くなるため、投資対象としては魅力的に感じるかもしれません。
しかし以下のような費用が発生することもあるため、注意が必要です。
・エレベーターリニューアル費用
安全性が古く既存不適格となっている場合は、リニューアル工事を実施して新基準のエレベーターに換装しなければいけません。そのため高額な費用がかかるため、注意が必要です。
・耐震基準適合証明書の取得
金融機関から融資を受けて旧耐震基準の建物への投資する際には、「耐震基準適合証明書」の取得を求められることがあります。証明書の取得には1通あたり約5万円の費用が発生するだけでなく取得するまでに最低1ヵ月かかるなど時間と手間がかかることを覚えておきましょう。また耐震基準を満たすために補強工事が必要と判断された場合は、多額の工事費用も発生します。
・保険料の割増
旧耐震基準の建物は、物件購入時に加入する保険料が割高になります。新耐震基準と同額の保険料で加入するためには、耐震基準適合証明書の取得などが必要です。
実際にデューデリジェンスを依頼するには
不動産投資では、投資対象物件の状態を正しく把握するために買主がデューデリジェンスを行います。売主による建物情報の開示と並行して独自調査を実施するのが建物デューデリジェンスの特徴です。「経済的側面」「物理的側面」「法的側面」の3つを重点的に調査しますが詳細な分析は不動産鑑定士に依頼することになります。
なかには、公認会計士や土地家屋調査士といった専門家に依頼するケースもあるでしょう。以下で不動産デューデリジェンス業務を一括して提供している3つの会社をピックアップしました。複数の依頼先を手配するのが面倒な場合は、専門会社の利用を検討してみてください。
<主なデューデリジェンスの専門会社>
まとめ
不動産投資では、業者が提示する立地や坪数、利回りだけを参考にして建物を購入する方も少なくありません。しかし建物の状態を正しく把握せずに購入してしまうのは非常に危険です。投資の失敗を防ぐためには、建物の取得を判断する前のデューデリジェンスが必要となります。中古物件購入後に水漏れなどの不具合が発生すれば数百万円の工事費用が必要になることもあるのです。
特に旧耐震基準で設計された建物は、耐震補強工事や修繕費用が高額になるため、より慎重な投資判断が求められます。計画外の修繕費用で収益がマイナスになることのないように物件の購入前には十分な調査を行いましょう。
(提供:YANUSY)
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