株式投資家のなかには「テンバガーを発掘して大きく利益を上げたい」と考えている人も多いのではないでしょうか。今回は、テンバガーとは何か、テンバガー銘柄に投資するメリットとデメリット、2020年にテンバガーを達成した銘柄、過去に100倍を達成した銘柄、テンバガー銘柄や100倍銘柄の共通点、テンバガーを探す際はどんな指標を見ればよいか、などについて解説します。
目次
1. テンバガーとは?
テンバガーとは、株価が10倍になった銘柄または10倍になりそうな銘柄のことです。テン(ten)は数字の10、バガー(bagger)は米国の野球スラング用語で「塁打」を意味します。1試合で10塁打(テンバガー)を記録する勢いで株価が急騰する、ということが言葉の由来となっています。
1-1. テンバガー銘柄は毎年登場している
「株価が10倍になる銘柄なんて、めったにあるわけないじゃないか」と思うかもしれませんが、テンバガー銘柄は毎年のように登場しています。
テンバガーを達成する期間はまちまちで、「何年以内に10倍にならないとテンバガー銘柄とは呼ばない」というルールはありません。短期間でテンバガーになる銘柄もあれば、長い時間をかけてテンバガーになる銘柄もあります。実際、株価が1年間で10倍になるような銘柄は毎年のように登場しているのです。
1-2. テンバガー銘柄は中小型株に多い
テンバガー銘柄は、大型株ではなく中小型株に多い傾向があります。時価総額が小さい中小型株のほうが、相対的に少しの業績向上や需給の改善で株価が上がりやすいためです。
たとえば、日本で最も時価総額が大きいトヨタ自動車(7203)の時価総額は約32兆円(2021年6月執筆時点)ですが、トヨタ自動車がここからテンバガーになるためには、相当な業績インパクトが必要でしょう。なかには大型株でテンバガーを達成銘柄もありますが、数でいえばそのほとんどが中小型株です。
2. テンバガー銘柄に投資するメリットとデメリット
ここからは、テンバガー銘柄に投資するメリットやデメリットを解説します。なお、ここでいう「テンバガー銘柄」とは、「すでに10倍になった銘柄」のことではなく、「これから10倍になりそうな銘柄」のことを指します。
2-1. テンバガー銘柄に投資するメリット
テンバガー銘柄に投資するメリットは、何といっても大きな値上がりを期待できることです。なかには、1年でテンバガーを達成する銘柄もあります。「100万円が1年で1,000万円になる」「1,000万円が1年で1億円になる」と考えると夢があるでしょう。
また、テンバガーは意外と身近に潜んでいるので、アンテナを高く張っていると見つかるかもしれません。たとえば2017年頃に、立ち食いステーキが大流行して、運営会社のペッパーフードサービス<3053>の株価が1年経たずでテンバガーになったことがありました。
流行が始まったくらいのときに「このステーキをこの値段で食べられるのはすごくないか!?」「そういえば最近いろいろな街に出店しているな」「そしてどの店も行列になっているな」と気づくことができれば、運営会社の株を買ってみようという気になったかもしれません。
2-2. テンバガー銘柄に投資するデメリット
それでは、テンバガー銘柄に投資するデメリットにはどのようなことが挙げられるでしょうか。テンバガーになる銘柄には中小型株が多いと解説しました。しかし中小型株は、大型株と比較すると基本的にボラティリティ(価格の変動幅)が大きく、それがリスクとなることもあります。
また、そのような銘柄は資金を成長投資に回すことも多く、配当が少ない、もしくは配当がないケースも少なくありません。このようなこともデメリットといえます。
3. テンバガーを達成した銘柄はこれだ!
ここからは、実際にテンバガーを達成した銘柄を紹介していきます。
3-1. 2020年にテンバガーを達成した銘柄
まず、2020年の1年間でテンバガーを達成した銘柄を紹介します。なお足元の株価は、2021年6月執筆現在の株価を指します。
・BASE<4477>
Eコマースプラットフォーム「BASE」や、オンライン決済サービス「PAY.JP」の運営を手掛ける企業です。コロナ禍の巣ごもり需要の盛り上がりもあり、200円超から3,000円超まで上昇しました。足元ではやや上昇が落ち着き、1,700円ほどで推移しています。(2021年6月執筆時点)
・ダントーホールディングス<5337>
内外装・床タイルの大手で、デザインタイルなど高級化に力を入れている企業です。米国で住宅開発・不動産も行っています。70円ほどだった株価は、一時1,000円を超える水準まで上昇しました。足元では300円弱で推移しています。(2021年6月執筆時点)
・すららネット<3998>
小学生から高校生向けのネット学習教材「すらら」を提供している企業です。コロナ禍でオンライン学習が脚光を浴び、800円ほどだった株価は、一時約9,000円まで上昇しました。足元では2,500円前後で推移しています。(2021年6月執筆時点)
3-2. 過去に100倍を達成した銘柄
テンバガーは、株価が10倍になることを指しますが、なかには株価が100倍になる銘柄も存在します。ここからは、いわば「ハンドレッドバガー」ともいえる、過去に100倍を達成した銘柄を紹介します。
・朝日インテック<7747>
カテーテル治療用ガイドワイヤなどの医療用器具を製造している企業です。産業用ワイヤも製造しています。リーマンショック後の安値(10円強)から、2020年には高値で3,800円を超えました。約12年で350倍以上上昇している計算です。
・UTグループ<2146>
大手企業を中心とした製造工場への人材派遣・請負等の人材サービスを提供しています。半導体・電子部品、自動車関連など取引先の業界は多岐に渡ります。リーマンショック後の安値(20円弱)から、2018年には高値で4,000円を超えました。リーマンショック後は製造業においてアウトソーシングが主流となり、そのトレンドにうまく乗った銘柄と言えます。
・そーせいグループ<4565>
がん治療薬などを研究開発している創薬ベンチャーです。リーマンショック後の安値(20円強)から、2016年には高値で6,500円を超えました。医療関連やバイオブームといった時代のトレンドにうまく乗った銘柄と言えます。
4. テンバガー銘柄や100倍銘柄の共通点や特徴は?
テンバガー銘柄や100倍銘柄の共通点や特徴には、たとえば、以下のようなことが挙げられます。
・創業(上場)して日が浅い新興企業(ベンチャー企業)
・時価総額が小さい
・売上高や利益などの業績成長率が高い
・時代のトレンドに乗った事業領域である
・大株主である創業者(オーナー経営者)が経営している
・ストックビジネスである
これらを満たさないとテンバガーにならないというわけではありませんが、多くのテンバガー銘柄は上記のいずれか、もしくは複数に該当しています。
テンバガー銘柄や100倍銘柄の特徴には「一発屋では終わらないビジネスモデル」ということも挙げられます。1つの事業や1つのサービスが大きく伸びることによって、テンバガーになる銘柄もゼロではありませんが、それでは継続的な株価上昇につながらず、一過性のものになってしまいます。
そもそも一本足打法では、100倍はおろか、10倍まで上昇するケースは多くありません。テンバガーになるためには、「ビジネスモデルに独自性がある」「ビジネスドメインの参入障壁が高い」「事業領域の市場規模が大きい」などの要因が必要であることが多いです。
5. テンバガー銘柄を探そう!
ここからは、いよいよテンバガー銘柄の探し方について解説していきます。
5-1. 資料を読み込んで探していく地道な方法が王道
テンバガーを見つける方法に近道はありません。基本的には、決算短信や決算資料、「会社四季報」といったごく一般的な情報や資料を読み込んで探していく地道な方法が王道です。
また、前述のペッパーフードサービス<3053>のように、世の中で流行っているサービスや商品がヒントになることもあります。
5-2. 見極めポイントはここ!
それでは、決算短信や決算資料、「会社四季報」といったごく一般的な情報や資料のどのような部分に着目して読み込んでいけば良いのでしょうか。最も重要なことは業績の推移です。上場企業の業績動向をつかむためには、決算短信で初動を見極めるようにしましょう。
株式市場では、黒転(赤字から黒字に転じること)したときに大きく株価が上昇するといわれています。黒転したかどうかを確認することはもちろん、「もうすぐ黒字に転換しそうか」という視点も重要です。
これは、「先行投資フェーズが終了しそうか」を確認すると良いでしょう。たとえば、稼いだお金をプールせずに先行投資に回してきた成長企業の赤字幅が徐々に狭くなってきた場合、先行投資が着実に利益を生み出し、「利益回収フェーズ」に突入する直前である可能性があります。
また業績が劇的に向上し、ストップ高まで買われている銘柄であっても、「買うには遅すぎる」とは限りません。ストップ高となっていても、業績の急拡大に株価が追いついていない場合もあるためです。
さらに、「グリッチ」という現象にも注目しましょう。グリッチとは、成長企業が初期のころに経験する経営上の挫折のことです。グリッチに陥ると、業績も一時的に下がります。業績が下がれば、株価も低迷します。しかし、新興企業(成長企業)に失敗はつきものです。重要なことは、グリッチを克服して、業績を回復できるかどうかです。
グリッチを克服して、良い決算を連続して出してきた企業は、今後のさらなる株価上昇が期待できるでしょう。そのような銘柄は、テンバガー候補といえます。また、その銘柄への深い理解があれば、あえてグリッチで株価が低迷しているときに購入することも選択肢の1つです。
5-3. どんな指標を見ればよい?
テンバガーを探す際は、どのような指標を見れば良いのでしょうか。たとえば、以下のようなものが挙げられます。
【売上成長率】
売上が前期比や前年同期比でどれくらい成長しているかです。とくに、上記のグリッチのような一時的な落ち込みがあった場合には、その落ち込みからの反発力を確認しましょう。たとえば、これまでずっと30%成長だったのに急に2倍になっているなど売上が非連続な成長をした銘柄にも注目です。
【利益率】
利益(利益率)が前期比や前年同期比でどれくらい成長しているかです。上記と同様に、グリッチのような一時的な落ち込みがあった場合は、その落ち込みからの反発力を確認しましょう。また、前述のように赤字から黒字に転じる瞬間にも注目です。
【PSR】
株価の水準を測るための指標には、「株価収益率(PER)」や「株価純資産倍率(PBR)」などがあります。しかし、これらの指標は赤字であったり、債務超過の状態であったりする企業には適切に使用できません。また、テンバガーになり得る企業の多くはスタートアップなどの新興企業であり、新興企業は赤字であることも多いです。
そこで、新興企業の株価水準を測るときに使用されるのが「PSR」です。「PSR」とはPrice to Sales Ratioの略で、株価売上高倍率のことです。時価総額を年間売上で割って算出されます。
PSR(株価売上高倍率)=時価総額÷年間売上
たとえば売上高が同等の2社を比較したとき、この倍率が高いほど株価は割高と言えます。ただ、PSRだけでは割高・割安を判定することは難しく、あくまで1つの目安として捉えることが重要です。
【時価総額】
前述したように、時価総額が小さい中小型株のほうが、相対的に少しの業績向上や需給の改善で株価が上がりやすいため、テンバガーになりやすい傾向があります。そのため、時価総額もテンバガー選びの1つの指標となります。
具体的には、より短い時間でテンバガーを達成したいのであれば、時価総額10億円〜50億円の銘柄を中心に探してみると良いでしょう。中長期の時間軸でも良いのであれば、300億円〜500億円の銘柄でも十分にテンバガーが期待できます。
なお繰り返しになりますが、最も重要なことは業績の動向ですので、時価総額が低ければ良いというわけではありません。時価総額が低い企業には低いなりの理由があります。重要なことは、「時価総額が低い企業の業績が急拡大していくと、大型株に比べて株価の爆発力(上昇)が大きい」ということです。
6. 意外と身近にある?テンバガーを探してみよう
ここまで、テンバガーとは何か、テンバガー銘柄に投資するメリットとデメリット、2020年にテンバガーを達成した銘柄、過去に100倍を達成した銘柄、テンバガー銘柄や100倍銘柄の共通点、テンバガーを探す際はどんな指標を見ればよいか、などについて解説してきました。
テンバガーになる銘柄は、言い換えれば「業績が拡大しはじめている(少なくともその予兆がある)が、多くの人がそれに気づいていない銘柄」です。自分の得意な領域や、普段から利用しているものであれば、多くの人よりも早くそれに気がつける可能性は十分にあります。
テンバガーを探すヒントは意外と身近にあるものです。この記事を参考にしながら、あなたも株価が10倍になるようなテンバガー銘柄を探してみてはいかがでしょうか。
文・菅野陽平
(提供:SmallCap ONLINE)