不動産投資を行ううえで現在金融機関から受けている融資の繰り上げ返済を行うべきか、判断に迷う人は多いかもしれません。家賃収入が順調に入っていれば通帳の残高は自然と増えていくでしょう。たまった資金の使い道は、修繕費用だけでなくローンを繰り上げ返済して総支払利息の削減を図ることも可能です。
実際に不動産投資を行う中で繰り上げ返済は、行ったほうがよいのでしょうか。今回は、繰り上げ返済の基本や不動産投資における融資の特徴、最終的な利益を生む方法などについて解説します。
繰り上げ返済とは
「繰り上げ返済」とは、まとまった資金ができた際に毎月の返済とは別に借入残高の一部を返済することです。返済額は、すべて元本の返済に充当するため、本来その部分にかかるはずだった利息の支払負担を削減することができます。繰り上げ返済の種類は「期間短縮型」と「返済額削減型」の2種類です。
- 期間短縮型:毎月の返済額を変えずに返済期間を短縮する方法
- 返済額削減型:返済期間はそのままで毎月の返済額を減額する方法
一般的に繰り上げ返済を行うことによる利息削減効果が高いのは「期間短縮型」といわれています。
繰り上げ返済によって得られる効果
繰り上げ返済を行うことで得られる主なメリットは、以下の2つです。
返済期間を短縮できる
「期間短縮型」で繰り上げ返済を行った場合は、その分完済までの期間を短縮することができるため「追加の融資を受けやすくなる」というメリットがあります。もちろん追加融資を依頼する時点で借入残高があっても融資を受けることは可能です。しかしできれば完済後に追加の融資を依頼するほうが金融機関の印象はよく希望通りの融資を受けることが期待できるでしょう。
利息負担を削減できる
繰り上げ返済を行うことで利息負担分を削減できる点もメリットの一つです。元金を一部返済することで総返済額の削減につながります。不動産投資の融資において適用される金利は、住宅ローンほど低くはありません。物件の評価額や借入申込者の属性によっても異なりますが2021年12月時点で年利3%前後です。
一棟アパートなど高額となる物件の場合は、利息負担は大きくなるでしょう。比較的高めの金利のため、繰り上げ返済を効果的に行えば大きな利息削減効果が期待できます。
不動産投資における繰り上げ返済の考え方
繰り上げ返済には、さまざまなメリットがありますが不動産投資においては上記に挙げた「金利負担削減」や「返済期間短縮」以外に考えなければならない点があります。その具体的な内容について解説します。
キャッシュフローはどうなっているか
不動産投資において借入金額の元本部分は、経費になりませんが利息分については経費計上することができます。そのためローンの金利次第では、繰り上げ返済を行うことが必要です。例えば以下のようなケースでは、繰り上げ返済を行わないとキャッシュフローを得られないどころかその分税負担も大きくなります。
- あまりにも高額および高金利で融資を受けた場合
- レバレッジ効果を求めすぎて毎月の返済額(元本部分)が減価償却費を上回っている場合
不動産投資では、減価償却費を費用計上できるため、有効活用ができます。しかし毎年の減価償却費を上回る返済を行っている場合は、繰り上げ返済を行いキャッシュフローの改善が急務です。逆に繰り上げ返済を行うことでキャッシュフローがどのように変化するかを考えることも忘れてはいけません。繰り上げ返済を行ったことで不測の修繕費用の発生などに対応できなくなるようでは本末転倒です。
利益を得る目的で繰り上げ返済を行ったにもかかわらず物件を保有し続けることができなくなり最終的に売却が必要となる可能性もあります。
金利と物件の利回りの関係はどうなっているか
繰り上げ返済を行うかどうか、判断するポイントとして2つ目に挙げられるのが「金利と物件利回りの関係性」です。繰り上げ返済を行うと本来支払うはずだった元金が減るため、その金利分が得となります。しかし物件の利回りのほうが上回っているのであれば繰り上げ返済を行うよりも新たな物件取得を考えたほうがいいでしょう。
仮にローンの金利が2%、物件の利回りが7%の場合は、物件の利回りとローンの金利差となる5%の得となり金利の2%よりも大きな利益を得ることが期待できます。ローンの金利と物件の利回りの差が大きければ大きいほど利益も大きくなるため、繰り上げ返済を考えるよりも新規に物件を取得することを考えましょう。
もちろん「これ以上事業規模を拡大したくない」と思っている場合は、繰り上げ返済を行いその利息削減効果を得るほうが賢明です。もし変動金利で契約しており金利上昇局面にいるのであればなおさらその効果が実感できるでしょう。
そもそも繰り上げ返済ができないケースがある
アパートローンや不動産担保ローンの金利プランには、変動金利のほか固定金利(期間選択型を含む)が設定されています。金融機関の中には、固定金利を選んだ場合や固定金利期間について「原則繰り上げ返済ができない」と規定しているところもあるため、注意が必要です。仮に繰り上げ返済ができる場合でも違約金(手数料)の支払いが発生する場合もあります。
そのため利用しているローンの契約内容をしっかりと確認することが必要です。繰り上げ返済は、金融機関側からすれば当初利益を得られる予定が大きく減ってしまうため、違約金を設定していてもおかしくはありません。このような意味からも物件をある期間保有した後に売却しようと考えている場合は、固定金利を選ぶことは避けたほうが賢明です。
金融機関との付き合い方も大切
不動産投資を行う際や追加融資を考えている場合は、金融機関との付き合い方も大切です。具体的には、融資を受けた以上、金融機関にもある程度の利益を残せるような関係が必要といえるでしょう。なぜなら次に融資を受けたいと思った際に何らかの影響があるかもしれないからです。これらを踏まえると繰り上げ返済は、自分にはメリットがあるものの金融機関側にはデメリットしかありません。
不動産投資を行う際に現金で物件購入できる経済力があれば、そのようなことを考える必要はないでしょう。しかし多くの方が金融機関から融資を受けて物件購入しているのが現状です。つまり物件を購入して不動産投資を行えているのは、金融機関からの協力があるからといえます。融資を申し込む際は、複数の金融機関を比較検討し粘り強く交渉を行い金利などの条件から最終決定する方が多いでしょう。
もちろん融資を受ける際にそのように交渉することは正しい方法ですがその交渉で決めた契約内容については、双方がきちんと守ることが大切です。このような視点からも将来的に協力関係を構築していくためには、繰り上げ返済ではなく節税などといった別の方法で自分にメリットを生むことを考えるほうがいいでしょう。
繰り上げ返済を行うかどうかは、まず自分がこれからも不動産投資を続けていくのかを考えたうえでキャッシュフローなどを判断しながら最終的に決定することが大切です。
(提供:YANUSY)
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