セルム【7637・JQ】売上高1兆円超企業の65%と長期的に取引1300名の外部人材網を活用しリーダー育成
加島 禎二社長

経営層の開発支援などを行う経営塾の運営を手掛け、「リーダー人材開発」を行うのがセルムだ。大手企業をメインターゲットに、中長期視点に立った「個社個有」の課題に対してフルカスタマイズ型でサービスを提供。「企業カルチャーの革新」を支援し、顧客企業の持続的企業価値の向上に伴走している。

加島 禎二社長
Profile◉加島 禎二(かしま・ていじ)社長
1967年6月、神奈川県生まれ。1990年上智大学文学部心理学科を卒業後、リクルート映像に入社。営業、コンサルティング、研修講師を経験。98年セルムに入社。企画本部長、関西支社長を経て2010年代表取締役社長に就任(現任)。

次期幹部ら育成の経営塾を運営
顧客の7割と5年以上継続取引

セルムは、売上高1兆円以上の企業を主な顧客として、人材開発領域の最重要テーマである経営幹部候補育成を支援するための経営塾を運営、次期経営幹部候補や次期リーダーとして活躍する人材の育成を行っている。2021年3月期の売上高は46億300万円、営業利益は3億2900万円だ。

講師やコンサルタント役を担うのは、大手企業の元経営幹部やプロ経営者、元戦略コンサルの重鎮といった、1300名以上の「プロフェッショナルタレント」だ。代表的な人物として、三谷宏幸氏や名和高司氏、琴坂将広氏らも、名を連ねている。

「当社はプロフェッショナルタレントとエージェント契約を結んで『ナレッジとタレントのプラットフォーム』を構築、サービスを提供しています。他社の営業はひとりで30社、50社と担当することが多いですが、当社では営業1名あたりが担当する社数は4~5社のみです。サービスの提供もパッケージ型ではなくフルカスタマイズ型で、コンサルタントも、最終的な答えを出すのではなく、舞台を整えファシリテーターとして伴走するという形をとっています」(加島禎二社長)

同社と、一般的なコンサルティング会社や研修会社との大きな違いは、2つある。ひとつ目は、経営層の開発支援を皮切りとし、ミドル・若手まで、顧客企業にとって一貫性のある支援を受けられること。そして、2つ目は、プロフェッショナルタレントに外部の人物を起用することで、あらゆる個社のニーズへの対応が可能なことだ。

「140社しかないと言われる売上高1兆円超の企業のうち、当社では91社と取引があります。また、取引上位150社の平均取引高は、1年で2250万円。契約は基本的にはプロジェクトごとですが、5年以上の継続的取引顧客は7割以上になります」(同氏)

経営層に深くアプローチ
経営者選考も企画から関与

同社の創業は1995年。当初はコンサルティング業からで、前職でトップセールスだった創業メンバーらが、持ち前の営業力で大手企業の案件を獲得。そこを起点として、研修事業、経営塾の運営へと展開し、次世代経営者の育成という新たな市場を創出してきた。事業規模に関しても徐々に拡大しており、現在の売上は2010年頃と比較して約2・5倍に伸長、50億円規模に到達するに至っている。

外部のプロフェッショナルタレント起用のヒントは、創業から間もない時期の、大手企業のコンサルタントとの出会いにあった。

「とある案件で、そのコンサルタントの方がものの見事に場をさばいていく様を目の当たりにし、そういったことは自分たちにはできない、ならばその人たちと一緒にやっていこうと考えました。優秀な人をアサインする一方で、我々は顧客の求める中長期ニーズをしっかり具体化し続け、いつでも相談してもらえる役割に専念する仕組みにシフトしました。経営塾の基盤を構築できたのは2004~05年頃です」(同氏)

大手企業経営者層への支援は、深部にまで及ぶ。たとえば某大手グローバル企業の場合、育成プロセスの計画・候補選定・経営疑似体験の場の提供・社外取締役を交えた議論など、企画から運営まで伴走しているという。

このように、同社のビジネスモデルの中核に据えられているのが、次期トップ育成のための「経営塾・経営メンタリング」と、リーダー育成の「ミドルマネジメント革新」の2つだ。他には、「組織人材開発コンサルティング」「ファーストキャリア教育」「現地法人を対象とした、人材開発/組織開発」などがある。このように、経営塾を担当することで得た顧客からの信頼は、取引の拡大や長期化にも繋がっている。

トップに第一想起される企業へ
次世代経営人材の開発を推進

今期、22年3月期の連結業績予想は、売上高55億9000万円、営業利益5億8100万円となっている。21年3月期は新型コロナの影響で、売上・利益共に落ち込んだが、従来の主要サービスの提供形態であった完全対面式の集合型研修を、9割オンライン研修に切り替え、乗り切った。その後、大手市場は急速に回復、準大手は右肩上がりとなり、売上高・利益共に次期成長ステージを目指している。

同氏は、「我々は、世の中を動かしているリーダーに第一想起される会社になりたいという想いがあり、BtoBではなく、Bto『L』、『ビジネストゥリーダー』の市場を作っています」と話す。

日本においては、売上高1兆円超の大企業が人材育成に投資する費用は10億円程で、アメリカの10分の1と言われる。日本におけるコーポレートガバナンス改革も同社にとっては追い風で、次世代の経営幹部を育てていくプロセス自体が、経営者にとっての説明責任となっている。特に東証1部では取締役会のうち、3分の1以上の独立社外取締役を選任している企業が約1600社で、1部全体の7割に到達しているというデータがある。

「我々のサービスがあらゆるステークホルダーに求められる環境に急激にシフトしてきている感覚を持てています。日本を『失われた30年』から『甦りの30年』へと変えられるように、大企業で成長を求めているリーダーを支援し、数多くのリーダーを生み出していきたいと考えています」(同氏)


2021年3月期 連結業績

売上高46億300万円前期比 30.8%増
営業利益3億2900万円同 116.0%増
経常利益3億4400万円同 113.0%増
当期純利益1億4800万円同 140.3%増

2022年3月期 連結業績予想

売上高55億9000万円前期比 21.4%増
営業利益5億8100万円同 76.6%増
経常利益5億5900万円同 62.5%増
当期純利益2億9800万円同 101.0%増

※株主手帳2月号発売日時点

(提供=青潮出版株式会社