4 ―― 属性別に見た1年後の働き方の予測~女性や正規雇用者でテレワーク浸透、若者で飲み会再開の見方が強い

1|性別の状況~男性より女性でテレワーク浸透への期待感が強いが現実的な見方も強まっている

性別に働き方について見ると、そう思う割合は、いずれも女性が男性を上回り、出張が減りオンライン会議が増えることについては約1割(男性40.8%、女性50.0%で男性より+9.2%pt)、出社が減りテレワーク併用が主流になることについては5%pt以上上回る(男性35.9%、女性41.4%で同+5.5%pt)(図表 - 4)。また、7月と比べると、男性は出張が減ることについては、そう思う割合がやや低下しているが、女性は同程度である。

女性の方が男性より1年後にテレワークが浸透すると考える背景には、女性の方がテレワークの浸透に対して肯定的で期待感が強いことがあげられる。従来から女性では仕事と家庭との両立にあたり、家事や育児の負担が大きいことはさまざまなところで指摘されている(*6)。

調査では、テレワーク環境が浸透し、在宅勤務が増えることについての就業者の意識を捉えているのだが(*7)、女性の方が男性より、そう思う割合が高い項目には「人間関係のストレスが減る」(男性20.6%、女性32.0%で男性より+11.4%pt)や「郊外の居住が増える」(男性28.4%、女性36.9%で同+8.6%pt)、「時間管理型から成果主義の報酬体系へと変わる」(男性30.1%、女性34.3%で同+4.3%pt)、「都合のよい時間に働きやすくなる」(男性29.3%、女性32.8%で同+3.5%pt)などがある。

なお、これらの在宅勤務が増えることへの期待は、7月と比べると、男女ともやや低下している(数値表記省略)。また、全体的に女性の方が低下幅は大きい傾向があり、特に「郊外の居住が増える」で目立つ(男性▲1.3%pt、女性▲5.2%pt)。よって、女性の方が依然として在宅勤務等によるテレワークの浸透への期待感は強いものの、長引くコロナ禍で働き方が定着してきたことで、現実的な見方も強まっているのかもしれない。

一方、勤め先での飲み会や会食の再開については、そう思う割合は男女とも3割弱にとどまる。また、そう思う割合は7月と比べて低下しており、男女とも働き方が変わることで職場でのコミュニケーションの在り方も変わっていくという見方は強まっている。

消費者の考える1年後の行動や働き方の予測
(画像=ニッセイ基礎研究所)

(*6) 例えば、内閣府「令和2年版男女共同参画白書」によると、2016年の共働き世帯の家事・育児・介護時間は、夫は週平均39分だが、妻は258分であり、3時間半以上の差があることなど。
(*7) いずれも選択肢は「そう思う」「ややそう思う」「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「そう思わない」の5つ。


2|年代別の状況~感染による重篤化リスクが低い若者で飲み会の再開への期待感が強い

年代別に見ると、テレワークと併用した働き方が主流になることについては、そう思う割合は年代による差は見られず、おおむね4割前後を占める。一方、出張が減りオンライン会議が増えることについては、そう思う割合は30歳代以上では高年齢層ほど高く、70~74歳で50.9%を占めて全体を+5.5%pt上回る。また、コロナ前のように勤め先で飲み会等が実施されることについては、そう思う割合は50歳代を底に若い年代ほど高い傾向があり、20歳代で34.1%を占めて全体を+6.6%pt上回る。背景には消費行動の再開でも見た通り、若者は重篤化リスクが低いために飲み会等にも積極的であり、期待感が強いことがあげられる。

なお、シニア層では無職が多いため、自分自身のことというよりも世間一般のことを想定して回答している層が多くを占める。当調査では専業主婦・主夫や無職・その他は60歳代で52.3%、70歳代で79.5%を占める。

3|就業形態別の状況~サービス従事者の多い非正規雇用者より正規でテレワーク浸透の見方が強い

就業形態別に見ると、そう思う割合は、いずれも正規雇用者、特に管理職以上で高い傾向があり、特にテレワークを併用した働き方が主流になることでは46.0%を占めて全体を+7.3%pt上回る(図表 - 5)。一方、非正規雇用者や自営業・自由業ではテレワークの浸透に対して、そう思う割合が低い傾向がある。背景には非正規雇用者ではテレワークの難しい対面型サービス業従事者が多いことがあげられる。調査では、特に飲食サービス業や理美容業を含む生活関連サービス業、清掃業を含むその他サービス業従事者が非正規雇用者で多く、これらを合計した従事割合は正規雇用者では1割未満だが(管理職7.0%、一般8.6%)、非正規雇用者では2割を超える(21.7%)。また、正規雇用者でも管理職以上と一般で差のある背景には、前稿2でも指摘した通り、管理職以上は、組織においてテレワークを推進していく立場にあることや、在宅勤務の利用をはじめ日頃の業務における裁量の幅が大きいこと、また、現場業務が比較的少ないために在宅勤務を活用しやすいことなどがあげられる。

なお、先の在宅勤務が増えることについての就業者の意識について就業形態別に見ると、「在宅勤務が増え、人間関係のストレスが減る」を除くと、正規雇用者の管理職以上で、在宅勤務が増えたことで生じる効果について、そう思う割合が高い傾向がある。

また、7月と比べると、正規雇用者の管理職以上や一般で、勤め先での飲み会や会食の再開については、そう思う割合が5%pt以上低下する一方(管理職以上▲9.6%pt、一般▲5.3%pt)、テレワークを併用した働き方が主流になることについては若干上昇している(管理職以上+1.9%pt、一般+0.6%pt)。やはりテレワークの浸透が進む層ほど、働き方が変わることで職場でのコミュニケーションの在り方も変わっていくという見方は強まっているようだ。

消費者の考える1年後の行動や働き方の予測
(画像=ニッセイ基礎研究所)

5 ―― おわりに~外出型の消費行動再開への肯定的な見方は弱まるが、今後の状況次第で揺り戻しも

本稿で見た通り、12月下旬に実施した調査では、1年後にマスク着用など新しい生活様式が定着することについて約7割がそう思うと回答し、7月調査時点より上昇していた。昨年の夏から秋にかけてのデルタ株による爆発的な感染拡大を経て、感染予防対策の定着化の見方は強まっているようだ。

また、旅行や店舗で買い物などの外出を伴う消費行動がコロナ前と同様になるかどうかについて、消費者の約4割は肯定的に捉えているが、全体的に7月より肯定的な見方は弱まっていた。特に、友人・知人と会うことについて顕著であり、コロナ禍の2年間で同居家族以外と会うことに制約を感じた生活者は少なくない様子がうかがえた。

働き方については、約4割がテレワーク浸透との見方をしており、働き方が変わることで飲み会が減るなど職場の上司や同僚との付き合い方が変わっていくという見方は強まっていた。

この中で働き方(テレワークの浸透)については、コロナ前からの「働き方改革」による流れのもとでコロナ禍が契機となって加速した不可逆的な変化であり、今後も技術革新等によって一層、進化していくのだろう。一方で生活習慣や消費行動については、今後の感染状況の推移や、ワクチンや特効薬などの対応で、どの程度、制御が可能となっていくのかに大きく影響されると考える。

消費行動の中には買い物のネットシフトや中食需要の高まりなど、働き方と同様に、コロナ前からの変化が加速したものもあるが、旅行や外食、会いたい人と会うことなどは、そのとき、その場所で、その人と、そこでしか感じられない空気を臨場感を持って、五感で楽しむこと自体が目的の行動だ。将来的にはメタバースやバーチャル・リアリティの進展で、現在のリアル行動の代替手段の水準は格段に上がり、新たな付加価値を持つ形にも成長していくだろう。一方で、1年後、3年後の近い将来においては、今後のウイルスの制御状況次第では、むしろリアルの価値が再認識されることで、大きく揺り戻しが生じる可能性もある。特に、コロナ禍で人との交流に制約がある中では、リアル・コミュニケーションを楽しむ場への需要が強いのではないか。

ニッセイ基礎研究所では引き続き、コロナ禍における意識や行動について調査・分析していく予定であり、今後の変化も報告していきたい。

久我 尚子 (くが なおこ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員

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