不動産経営で一定以上多くの物件を保有し成功を収めている人を「メガ大家」と呼んでいます。不動産経営を行う人にとって理想のオーナー像ですがいきなりメガ大家になれるわけではありません。どのようにすればメガ大家になれるのでしょうか。本稿では、メガ大家になるためのプロセスと注意点について確認します。
メガ大家とはどのレベルの大家を指すのか
はじめにメガ大家がどの程度の物件を保有している大家を指すのかについて解説します。メガ大家は、青色申告控除を受けるための「5棟10室ルール」のような明確な基準があるわけではありません。一般的には「総額10億円以上の物件を保有する大家」を指すといわれています。メガ大家は、金融機関からの融資を受けて物件数を拡大していくのが大きな特徴です。
近年金融機関が不動産融資を積極的に行うようになったことで追い風となっています。資産家だけでなく会社員や主婦が区分所有投資から始めて不動産経営を軌道に乗せメガ大家になっていくケースもあります。
著名なメガ大家の成功事例
メガ大家になった人は、どのようなプロセスで所有物件を増やしたのでしょうか。不動産業界でもよく知られている赤井誠氏の事例を見てみましょう。赤井氏は、単に賃貸物件を経営するだけでなく不動産サイト「nomu.com/pro (ノムコムプロ)」や「健美家」で不動産記事の連載を担当するなど幅広く活躍しているメガ大家です。
ノムコムプロ掲載の情報によると2005年に43歳で200万円を元手に不動産投資をスタート。2019年時点での所有物件数は16棟117室、年間家賃収入は約1億2,000万円です。健美家のインタビュー記事で当時の状況を語っています。最初に買った物件は福岡のアパートで、会社員をしていた属性の良さもあり5,000万円の融資が受けられたそうです。
そのため元手200万円もかけずに1棟アパートを手に入れました。駅から徒歩5分で大学が近くにある好立地物件でしたが入居者の出入りが多く結局1年半程度で売却し100万円程度のキャピタルゲインをあげています。2軒目は、仙台の駅から徒歩5分にあるアパートを購入。8割ほど入居の状態で購入しその後満室になり経営が軌道に乗っていきます。
2件目の物件は、買値と同額程度で売却しキャピタルゲインは出ませんでした。しかし6年の経営期間中に3,000万円ほどの家賃収入(インカムゲイン)をあげています。10年後の2015年、53歳のときに会社を退職して専業大家になりました。このように初期2物件で一定の成果を残したことによりメガ大家への道が始まり2019年には家賃収入が1億円を超えるまでに成長したのです。
参考文献:nomu.com/pro(ノムコムプロ)「何のために不動産投資をするのか?」/健美家「16棟117室を所有。「今はメガ大家さん」が買った1軒目と2軒目(前編)(後編)」
赤井氏の事例で注目したいのは、最初から専業大家ではなかったことです。会社員をしながらの副業でもメガ大家になれたのは、注目すべき事実といえます。それくらい不動産投資は、夢のある世界なのです。
メガ大家になるための理想のプロセス
メガ大家になるためのプロセスの第一歩は、最初の物件を購入することです。赤井氏の事例にもあるように駅から徒歩5分程度の好立地物件が望ましいといえます。最初に好立地物件を購入することで経営が軌道に乗ればその後の不動産経営にも自信が持てるようになるでしょう。次のプロセスは「複数経営」です。
1軒目の経営が軌道に乗ると金融機関から融資を受けやすくなり複数物件の購入につなげることが期待できます。融資を利用して物件数を増やしていくために大事なのは、各種ローンで滞納しないことです。また現状運用している物件も収益が出ていることを証明する必要があります。融資をうまく活用して物件数を増やし、事業規模が大きくなってきたら次に検討すべきは賃貸事業の法人化です。
もちろん個人事業主のままメガ大家を続ける人もいますが法人化すると次に紹介するようなメリットがあるため、検討する価値はあります。このように事業を拡大してメガ大家になるのが理想のプロセスといえるでしょう。
メガ大家になるために法人化するメリット
メガ大家になるためには、金融機関から有利な融資条件を得ることが必要です。事業拡大のために法人化すると以下のようなメリットが生まれます。
・金融機関からの融資が受けやすい
法人化を行った後、自己資本の比率が高くて業績が好調など、金融機関から高評価を得ると不動産経営を副業ではなく事業として行っていると認識されます。その結果融資も受けやすくなるため、優良物件の購入チャンスを逃がさずに済むことはメリットです。メガ大家になるには、自己資金だけで物件数を大きく増やすことは困難なため、金融機関からの融資が必須といえるでしょう。
・節税対策ができる
法人化するとさまざまな節税対策ができる点もメリットの一つです。売上規模が大きくなると法人税の税率が個人事業主のときよりも低くなるケースがあります。以下の所得税と法人税の税率比較表で課税所得が800万円を超えると法人税の税額が23.20%以上にはならないことが分かるでしょう。また経費計上できるものも多くなるため、法人化することでさまざまな節税対策が可能になります。
▽所得税と法人税(普通法人)の税率比較表
所得税率 | 法人税率(普通法人の場合) 2019年4月1日以降の場合 | ||||
---|---|---|---|---|---|
課税される所得金額 | 税率 | 課税される所得金額 | 税率 | ||
1,000~194万9,000円まで | 5% | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
195万~329万9,000円まで | 10% | 適用除外事業者 | 19% | ||
330万~694万9,000円まで | 20% | ||||
695万~899万9,000円まで | 23% | 年800万円超の部分 | 23.20% | ||
900万~1,799万9,000円まで | 33% | 上記以外の普通法人 | 23.20% | ||
1,800万~3,999万9,000円まで | 40% | ||||
4,000万円以上 | 45% |
・資金留保がしやすい
法人化すると資金を留保しやすくなるのもメリットです。例えば家族を役員にして社会保険料を経費として計上できるようになるため、将来の退職金として内部留保することも可能になります。
メガ大家になるための注意点
メガ大家になるためには、以下の2点にも注意しなければいけません。
・金利の上昇
フルローンやオーバーローンで融資を受けているメガ大家が多いため、金利が上昇した場合、金利負担増の影響は避けられません。そのため金利の上昇を想定して余裕のある返済計画を立てることが大事で
す。
・メガ大家の資産規模の目安となる「物件総額10億円以上」という基準
これは、必ずしも純資産ではありません。もともと資産家でローンが少ない人は別ですがメガ大家の多くは、総資産に対して70~80%の負債があるといわれています。それでも2億円以上の純資産にはなるため、目標にするのはよいでしょう。しかし資産と負債のバランスをとりながら堅実に運用することが大切です。
不動産投資の成功の形といえるメガ大家は、不動産経営者なら多くの人があこがれる存在でしょう。メガ大家の具体的な経営ノウハウを知るには、メガ大家が運営しているブログや不動産サイトのインタビュー記事などを読むのも参考になります。またメガ大家になるのに欠かせないのが良い不動産会社との付き合いです。
不動産会社を選ぶ場合は、仲介だけでなく管理も行っている総合不動産会社が理想です。管理を行っていれば空室が発生した場合にすぐに入居者募集をかけてもらえます。内覧希望者があれば対応し入居を希望した場合、仲介も行ってもらえるため、一連のプロセスを一つの不動産会社に任せることが可能です。
千里の道も一歩から……メガ大家の目標に到達するには、最初の物件選びが肝要となります。まずは、良い不動産会社を見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。
(提供:YANUSY)
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