現在個人名義で不動産投資を行っている人の中には「法人化するかどうか悩んでいる」という人も多いのではないでしょうか。法人化は、ケースによって個人名義よりも節税効果が高かったり事業を拡大しやすかったりする点がメリットです。しかし自分の状況では法人化にするメリットがあるのか、どのタイミングで法人化にすべきなのかなど分からない人もいるかもしれません。
そこで本記事では、不動産投資で法人化するメリット、法人化に適している人の特徴、法人の設立方法などについて解説します。法人化について悩んでいる不動産投資家は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
個人名義と比較して不動産投資会社を設立するメリット
不動産投資では、個人名義だけでなく法人名義でも運用することができます。不動産投資会社を設立すれば個人名義では得られないメリットを得ることが可能です。本章では、個人名義と比較して不動産投資会社を設立する4つのメリットについて解説します。
節税対策が立てやすい
節税対策を立てやすい点は、大きなメリットの一つです。不動産投資会社を設立して法人化すれば個人名義よりも計上できる経費範囲が広がります。例えば家族を役員にして役員報酬や賞与などの人件費を経費として取り扱ったり生命保険や医療保険を経費としたりする場合でも計上する金額の上限はありません。その他の交際費、交通費なども個人名義より計上できる金額が大きくすることができます。
また所得の税率が「20%」を超えた場合は、法人名義のほうが税金を安く抑えることが可能です。日本では、累進課税制度を採用しているため、個人名義で不動産投資をする場合は、所得税の税率が適用されます。以下の所得税の速算表を見ると所得が上がるにつれて税率が高くなることが分かるでしょう。最も高い税率は、45%です。
一方で法人税の税率は、売上が800万円以下で15%、800万円を超えた金額は23.2%の税率となっています。つまり個人名義で20%の税率を超える所得となる場合は、法人名義のほうが節税につながるのです。
事業実績があれば融資を受けやすい
銀行をはじめとした金融機関からの融資を受けようと考える際は、しっかりとした事業実績があってかつ事業内容や融資金の使途が明確で返済能力があるなど金融機関から認定されれば、融資が受けやすくなる点もメリットです。個人名義の場合は、融資の審査を受ける際に個人の年収や勤務先などの条件が融資の審査基準となります。しかし法人の場合は、会社の業績で融資可能かどうかで審査するのが特徴です。
万が一損失したときの繰越期間が長い
法人で赤字になり損失したときは、10年間の繰り越しが認められ繰越損失を上手に活用すれば節税対策にもつながります。個人名義で青色申告をしていればその翌年以後3年間繰越することが可能です。しかし白色申告の場合は、損失の繰り越しができません。不動産投資を行う中では、赤字になるケースもあるため、損失の繰越期間が長いことはメリットとなるでしょう。
相続税対策としても効果的である
法人化は、相続税対策にも有効です。個人名義で不動産投資を行う場合、相続発生時に相続税が課税される可能性があります。しかし法人名義で不動産投資を行う場合、当該不動産は法人の所有物です。例えば会社を設立する際に子どもを役員にしていれば万が一自分(代表者)が亡くなって子どもが代表者になっても不動産の所有名義に変わりはありません。
そのため法人名義で不動産を相続しても相続税はかからないため、税金対策として非常に効果的といえます。しかし法人の代表者が変わった場合は、法人の株式の相続に対して相続税が発生するため、不動産に対しては、不動産取得税や登録免許税がかからない認識のほうが正しいといえるでしょう。
不動産投資で法人化を検討したほうがいい人
不動産投資で法人化した場合のメリットは、理解できたでしょうか。なかには、法人化すべきか判断しにくい人もいるかもしれません。そこでここからは、不動産投資において法人化を検討したほうがいい人の特徴を紹介します。
不動産投資を「業」として目指している
不動産投資を「業」として目指している人は、最初から法人化することをおすすめします。なぜなら個人名義と比べて法人名義のほうが明瞭な事業内容や事業計画に基づき、安定した業績を出して返済能力があると金融機関から信頼されることで融資を受けやすくなるからです。個人名義で購入した不動産を法人名義へ資産移転する場合は「登記費用」や「不動産所得税」などの費用がかかります。物件数が増えれば増えるほど費用も高額になりがちです。
そのため不動産投資を「業」として考えている人は、最初から法人化することが向いています。
税率が「20%」を超えた
冒頭に記載した通り個人名義で不動産投資をする場合は、個人の所得に対して所得税の税率が適用されます。つまり不動産所得が330万円以上となる場合は、所得税が20%と住民税10%で合計30%です。そのため法人税の税率15~23.2%を上回ることになります。これを踏まえると所得税の税率が「20%」を超えた場合は、法人化にするタイミングといえるでしょう。
小規模投資の人は法人名義にしないほうがいい
不動産投資を行っている人の中には、1~2部屋のような小規模投資の人もいます。今後投資規模の拡大を検討していない場合は、法人名義にしないほうがよいでしょう。なぜなら以下の3つの理由があるからです。
法人設立の費用がかかる
法人を設立する場合は、定款の認証費用や登録免許税などの費用がかかります。自分で手続きする場合でも例えば株式会社であれば「定款認証(電子認証)5万円+登録免許税15万円」で最低20万円程度もかかるのです。他にも実印を作ったり司法書士へ設立を依頼したりするとさらに費用がかかります。
赤字でも税金がかかる
会社経営の場合、赤字でも法人住民税として毎年最低7万円(資本金1,000万円以下の場合)は支払わなくてはなりません。個人名義で不動産所得が赤字になった場合は、給与所得などの所得と損益通算すれば所得金額を抑えられます。払いすぎた税金を確定申告することで税金の還付を受けることが可能です。
法人を維持するための費用もかかる
法人を維持する場合、税理士への報酬や事務所の家賃などの諸経費がかかります。つまり小規模投資を行っている人にとっては、不動産投資会社を設立するメリットはほとんどありません。そのため個人名義で所有を継続したほうがいいでしょう。
実際に不動産投資会社を設立する方法
実際に不動産投資会社を設立する手順を紹介します。
会社の定款を作成する
定款(ていかん)とは、会社の規則のことです。書式は決まっていませんが記載する内容が抜けている場合は、認証してもらえないため、注意しましょう。
資本金を代表者の口座に振り込む
資本金を代表者の口座へ振り込む必要があるため、銀行口座の通帳を準備しておきましょう。振り込んだことが証明される振込証明書と通帳のコピーが登記申請時に必要になるため、忘れずに保管することが重要です。
会社登記するための書類を作成する
会社登記するための書類は、代表者もしくは代理人が作成することが必要です。まずは「会社や法人の本店、事務所がある所在地」「商号」「代表者の住所」「代表者の氏名」を申請書に記載します。書類に不備があった場合に備えて連絡が取れる代表者か代理人の電話番号を記載し収入印紙も準備しましょう。申請書への契印は、忘れがちなので注意が必要です。
最後に記載漏れがないか確認すれば完了となります。法務局のホームページで申請手順や申請書類が添付されているため、参考にしながら記載しましょう。
参考:[株式会社・合同会社の設立]オンライン申請・QRコード(二次元バーコード)付き書面申請について:法務局 (moj.go.jp)
商業・法人登記の申請書様式:法務局 (moj.go.jp)
法務局で会社登記の申請する
会社登記に必要な書類を法務局に提出した後は、法人実印登録を行いましょう。なお会社設立日は、法務局が登記申請を受け付けた日です。登記が無事に終わったら会社の銀行口座を開設します。また税務署や市区町村役場、年金事務所に届け出を提出することも忘れないようにしましょう。
まとめ
今回は、不動産投資で法人化するメリットや設立手順などについて解説しました。不動産投資会社を設立すれば個人名義で得られないたくさんのメリットがあります。しかし投資目的や投資規模によっては、法人化がデメリットになる場合もあるため、注意が必要です。自分の不動産投資の規模で法人化すべきか判断ができない場合は、税理士などの専門家へ相談しましょう。
(提供:YANUSY)
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