不動産の売買の際、よく耳にする言葉として「抵当権」があります。抵当権とは、具体的にどのような権利で抵当権が設定されるとどのような効力が発生するのでしょうか。本記事では「抵当権」の性質や効力について解説します。

目次

  1. 抵当権とは?
    1. 抵当権が行使されるとどうなる?
  2. 抵当権の4つの性質
    1. 付従性
    2. 随伴性
    3. 不可分性
    4. 物上代位性
  3. 抵当権の効力はどこまでおよぶ?
    1. 不可一体物
    2. 従物
    3. 果実
  4. 抵当権を確認する方法
    1. 登記簿謄本の見方
  5. 売却しようとした不動産に抵当権がついていたら?
    1. 自己資金で残債を返済する
    2. 同時決済を行う
    3. 任意売却の活用
  6. 抵当権が設定されている不動産の売却には注意が必要

抵当権とは?

抵当権とは?その性質と効力について徹底解説
(画像=solo122/stock.adobe.com)

抵当権とは、簡単にいえば「担保」のことです。例えば自分がローンを使って不動産を購入する場合、借入先の金融機関は当該不動産に対して抵当権を設定します。なぜなら抵当権を設定することで万が一債務者が返済できなくなり融資したお金が回収できなくなった場合でも抵当権を行使して不動産をお金に代えて融資額を回収できるからです。

抵当権が行使されるとどうなる?

実際に抵当権が行使されると金融機関は担保としている不動産を競売にかけます。(保証会社が代行するケースもあり)競売の流れは、以下の通りです。

【不動産の競売の流れ】

1.裁判所に対して競売の申立てを行う
2.裁判所が競売の開始を決定し、物件が差し押さえられる
3.裁判所の執行官が現地を訪問し、その不動産を調査する
4.調査を行った執行官などがその不動産を評価し、報告書を作成する
5.裁判所は報告書に基づき、売却価格を決定する
6.裁判所が売却を実施する公告を行う
7.公告の内容に基づき、入札が行われる
8.開札により、最終的な購入者が確定する
9.不動産の所有者は、裁判所の引き渡し命令に基づき、家を明け渡す

抵当権の4つの性質

抵当権には「付従性」「随伴性」「不可分性」「物上代位性」という4つの性質があります。これらの性質を説明するうえで「被担保債権」「抵当権者」「抵当権設定者」「物上保証人」という言葉が出てくるため、まずその用語の意味を簡単に押さえておきましょう。「被担保債権」とは、担保の対象となった不動産のことです。

その不動産に抵当権を設定した人を「抵当権者」といいます。ローンを利用している場合は、金融機関が抵当権者です。ローンを利用している本人は「抵当権設定者」という位置付けとなります。「抵当権を設定する者なのだから金融機関なのではないか」と勘違いする人も多いため、間違えないようにしましょう。

また「物上保証人」とは、担保となる物件が債務者以外の所有の場合に使われます。例えばローンを利用する本人が担保となる物件を保有しておらず親の土地を担保にしたなどの場合は、親が物上保証人です。

付従性

抵当権の付従性とは、被担保債権がなくなることで抵当権も消滅することをいいます。例えばローンを完済した場合、被担保債権はなくなるため、あわせて抵当権もなくなるといった具合です。またローン契約が何らかの理由で無効が判明した場合、抵当権も存在しないことになります。

随伴性

例えば抵当権が設定されている物件が別の人に譲渡された場合、当該物件に設定されている抵当権も一緒に移ることになります。これが抵当権の随伴性です。

不可分性

抵当権は、債務の一部がなくなっても効力は残っている物件全体におよびます。例えばローンを返済して融資残高が減少しても返済した部分だけ抵当権が消滅するわけではありません。あくまでもローンを完済するまで物件全体に抵当権の効力がおよぶのが抵当権の不可分性といわれるものです。

物上代位性

物上代位性とは、火事などの理由で当該物件が消滅しても保険金が下りた場合は、保険金から弁済をうけることができるという性質です。

抵当権の効力はどこまでおよぶ?

抵当権が設定されるのは、土地や建物といった不動産が多い傾向です。しかしそれ以外にも効力がおよぶことも覚えておきましょう。では、具体的にどのようなものに効力がおよぶのでしょうか。

不可一体物

例えば土地の上にある石垣や庭にある木などが該当します。ただしあくまでも取り除くことが困難なもの限定です。

従物

従物とは、建物に付帯しているエアコンや畳など取り外し可能なものを指します。また庭石なども従物に該当します。

果実

抵当権の効力は、当該不動産によって得られる果実などにもおよびます。例えば抵当権を設定した土地に柿の木があった場合、その木に生った柿の実が果実に該当します。

抵当権を確認する方法

不動産に抵当権が設定されているかどうかは、当該不動産の登記簿謄本を見ることで確認できます。登記簿謄本は、法務局の窓口で取得することができるほか郵送やオンラインでも取得可能です。

登記簿謄本の見方

登記簿謄本
(画像:法務省公式サイト「不動産登記のABC」より引用

登記簿謄本には「表題部」「権利部(甲区、乙区)」「共同担保目録」が記載されています。

・表題部
土地や建物の所在地や地積、地番、地目などを把握することが可能です。土地であれば地目が「宅地」などと記載され建物であれば構造などが記載されます。

・権利部(甲区)
甲区と乙区に分かれており甲区の欄には、当該不動産の所有者が記載されます。具体的には、所有者の氏名や住所のほか不動産の取得日などを知ることが可能です。甲区に記載されている内容をたどることでいつ誰から所有権が移転したかといった内容を読み取ることができます。

・権利部(乙区)
抵当権の内容は、乙区の欄に記載されています。所有権以外の権利が記載されているのが特徴です。乙区に記載される権利としては、抵当権以外にも地上権などがあります。

・共同担保目録
抵当権が複数の不動産に設定されている場合は、共同担保目録の欄に内容が記載されます。例えば土地と建物両方に抵当権が設定されるとその内容が共同担保目録欄で確認することが可能です。

売却しようとした不動産に抵当権がついていたら?

売却しようとした不動産に抵当権がついていた場合でも以下の方法を取ることで売却することができます。

自己資金で残債を返済する

抵当権が設定されているのは、借入金が残っていることを意味します。そのため抵当権を抹消させたい場合、借入金の残債を金融機関へ支払うことが必要です。そうすることで抵当権の抹消手続きを行うことができます。ただし、ここで注意しなければならないのは、完済することで抵当権の抹消手続きができる状態になるというだけで、実際の抹消手続きは自分もしくは司法書士などに依頼して行う必要があるという点です。残債を自己資金で返済した際には、抵当権の抹消手続きまで行わなければならないことを覚えておきましょう。

同時決済を行う

自己資金で借入金の残債を完済できない場合は、当該不動産を売却した資金で借入金を返済することで抵当権を抹消できます。ただし売却しても借入金を完済できない場合もあるため、慎重に売却の時期を見極めることが必要です。

任意売却の活用

任意売却は、債権者となる金融機関と交渉したうえで売却金額を決める方法です。ローンの返済ができなくなった際に抵当権を行使され競売にかけられるのを防ぐ目的で使われます。任意売却は、金融機関の承諾を得られれば行うことが可能です。競売よりも高い値段で売却できる可能性が高いため、このような方法を取ることを考えてもいいでしょう。

しかし任意売却は、競売が始まる前に行わなければならない点に注意が必要です。

抵当権が設定されている不動産の売却には注意が必要

抵当権が設定されている不動産でも同時決済や任意売却など方法を選択すれば売却することも可能です。しかし一般的には、抵当権を抹消してから売却します。また売却が困難な場合は、賃貸を選択することも方法の一つです。このように抵当権が設定されている不動産の売却は、利用しているローンの内容や状況によって選択できる対処方法は異なります。

そのため該当する場合は、抵当権の性質や効力などをしっかりと理解しておくことが必要です。物件の売却を考えている場合は、ローンを利用している金融機関と早めに相談するなど、現状に最も合った解決策を見いだすようにしましょう。

(提供:YANUSY

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