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相続税の増税と贈与税

平成27年1月以降に発生する相続に関して、相続税の税制改正が行われ、増税の方向に進むことはみなさんご存知かと思います。非課税枠が縮小され、税率も引き上げられます。

ちなみに、日本の相続税率は世界諸国と比べて最高水準です。カナダ、オーストラリア、ロシアなど相続税のない国(※執筆当時)もたくさんありますし、アメリカでは500万ドル(約5億円)までは非課税です。最高税率が55%の日本に次ぐイギリスのそれは40%と比較的高いのですが、その代わり贈与税がありません。

財産を多く所有して亡くなるのは損だから、生きているうちに子や孫に渡してしまおう!と考えても、日本には贈与税があるので、どちらにせよ国にいくらかは納めざるを得なくなっています。このように富裕層を悩ませる相続税と贈与税ですが、うまく活用すれば効果の得られる贈与の制度や方法も少なからずあります。そんな制度や方法を注意点も合わせて具体的にみてみましょう。


生前贈与とは?具体的な方法

いつかは訪れる相続に対して、若くて元気なうちから出来るだけ子や孫に財産を移し、相続税を減らすことを生前贈与と言います。ここでは3つの方法を紹介します。

1.贈与税(暦年課税)の基礎控除を活用
贈与を受ける人ひとり当たり、年間110万円までが非課税になります。3人の子どもに20年間贈与すると、

110万円×3人×20年間=6,600万円

を非課税で贈与することが出来ます。この時、1人の子どもは年間に最大110万円までの贈与しか受けることが出来ないので、父からも母からも110万円ずつを非課税で受け取れるというわけではありません。その場合は110万円までが非課税、残りの110万円には課税されるので、申告し納税する必要があります。

2.住宅取得等資金贈与の特例
住宅を購入するための資金として贈与を受けた場合、省エネ・耐震対応住宅は1,000万円、一般住宅は500万円までが非課税となります。これは平成26年中の贈与に限ります。

3.相続時精算課税制度
贈与を受ける金額の非課税枠を2,500万円とし、「相続」が発生したときにその贈与を相続財産に加えることで、相続税として「精算課税」する制度です。財産だけ無税(贈与税)で前借りしておいて、相続税でツケを払うというイメージですね。2,500万円までは非課税ですが、超えた額に対しては一律20%の贈与税が課税されます。

また贈与をしてくれる人それぞれに対し、この制度を適用するかどうかを選択することが出来ますので、父と母合わせると5,000万円までが非課税となります。
余談ですが、なぜ2,500万円なのでしょう?例えば法定相続人が3人の場合、相続税の基礎控除は現在8,000万円です。これを3で割ると

8,000万円÷3=2,666万円

これが基準となり2,500万円というわけです。来年から相続税の基礎控除は下がりますが、精算課税の額は今のところ変わりません。相対的に有効な手段となりえますね。贈与の場合は実際にお金が動き、消費につながる可能性があります。出来るだけそちらを選択して欲しいという国の思惑が垣間見えます。

上記3つの制度は①と②、②と③は同時に活用することが出来ますが、①と③の併用は出来ません。


生前贈与の注意点

生前贈与の具体的な方法を3つみてきましたが、それぞれの注意点をお話ししたいと思います。

1.贈与税(暦年課税)の基礎控除の活用の注意点
年間110万円の非課税枠があると言いましたが、例えば毎年決まって100万円ずつ20年間贈与したとすると「定期贈与」とみなされる可能性があります。もともと2,000万円を贈与する予定だったのでは?と税務署に判断されるかも知れないということです。その場合、贈与税を支払うか、相続時精算課税制度の適用を選択し、相続税を支払うかが必要になります。そうならないために、例えば毎年110万円を少し超える額を贈与し、超えた額に対する贈与税を支払うことで、定期贈与ではないとアピールする方法もあります。また、亡くなる前の3年間に贈与した財産は相続財産とみなされるので、申告の際注意が必要です。

2.住宅取得等資金贈与の特例の注意点
この特例は住宅を購入する、増改築するときにのみ対象となり、住宅ローンの返済に充てるなどには使えません。

3.相続時精算課税制度の注意点
上でも述べたように、暦年課税の基礎控除とは併用出来ません。そればかりか、一旦この制度を選択すると、二度と暦年課税には戻れませんので、慎重に選択する必要があります。

ここで述べた3つの方法はどれも数千万円の贈与を対象としていて、1億前後の相続財産に対しては非常に有効な対策と言えるでしょう。しかし10億~20億となればそこまでの効果は見込めません。そのような方は不動産や株での所有が多くなるでしょうから、その評価額を下げることで相続財産を減らすことを考えても良いでしょう。

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