コロナ禍に伴うテレワークの普及などで都心部を中心に賃貸住宅へのニーズが多様化するなど賃貸マーケットに変化が起こりつつあります。不動産投資家の中には「例年よりも反響が少なくなった」「市況の変化に負けず入居率をアップさせたい」と感じる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、賃貸住宅の入居率が下がる3つの理由と市況に応じて入居率をアップさせるための3つのコツを紹介します。
目次
2020年度下期の平均的な入居率は?
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会・日管協総合研究所が2021年6月に発表した「第25回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」によると2020年度下期(2020年10月~2021年3月)における首都圏の入居率は97.4%でした。同年上期の入居率は95.7%のため、1.7%上昇が見られたことになります。本調査では、以下のような考察が述べられています。
「新規物件供給が減少傾向にあるが、絶対数としての賃貸ニーズは増加しており、エリアのばらつきはあるものの、既存物件における移動が中心のため入居率が堅調に推移しているものと思われる」
出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会・日管協総合研究所
首都圏や関西圏を中心に入居率の改善が見られるため、都市部では賃貸住宅の需要が回復傾向といえそうです。
賃貸住宅において入居率が下がる原因3つ
賃貸住宅において入居率下落の原因となり得る要素は、以下の3つです。
- 賃貸需要の変化
- 人口減少
- 設備の老朽化
賃貸需要の変化
賃貸需要の変化とは、社会的・経済的な要因などにより賃貸住宅を探している人たちのニーズが変化することです。賃貸住宅は「その物件に住みたい」「住む必要がある」という需要に支えられています。そのため賃貸需要が少ない物件は、新築で駅から近い好条件でも入居率アップに苦戦する可能性が高くなるでしょう。
具体的に賃貸需要の変化は、以下のような例が挙げられます。
- テレワークの普及によって家賃の高い都心部に住む必要がなくなった
- 自宅で過ごす時間が増えたため、書斎のある部屋が求められるようになった
- 法人の事務所や大学のキャンパスの移転によってそのエリアに住みたい人が減少した
コロナ禍のように人々の生活様式に大きな変化が起きている時代では、賃貸需要にも変化が起きる可能性が高くなります。そのため不動産投資家は、社会の変化に敏感になっておく必要があるでしょう。
人口減少
人口減少とは、当該物件が所在するエリアで人口が減少したことに伴い賃貸需要が減少することです。日本は、少子高齢化で長期的に人口が減少していくと予測されています。東京23区でも人口が転出超過になるなど不動産投資をするうえで人口減少の問題は避けて通れないでしょう。人口減少が進む中でも新築住宅の供給は続いているため、全国的に賃貸住宅の競争率は高くなることが想定されます。
そのため所有中または購入検討中物件の所在エリアの長期的な人口推移は、自治体のホームページなどで確認することが必要です。人口動態とあわせて物件の最寄り駅における乗降客数の推移もチェックしておくといいでしょう。特に都心部の場合は、電車での移動がメインになる場合が多い傾向です。最寄り駅の乗降客数の推移を把握することで駅周辺の人口を測る指標の一つとして活用できるでしょう。
設備の老朽化
設備の老朽化とは、築年数の経過とともに住戸内や共用部の設備が老朽化することをいいます。設備の老朽化で入居率が下がるおそれがある理由は、以下の3つです。
- お客様や仲介業者からの印象が悪くなる
- 住戸内設備の故障や不具合により入居者の生活に支障が出る
- 共用設備の故障や不具合により物件全体の生活利便性が落ちる
物件内の設備の老朽化は、入居者の生活利便性を左右するだけでなく物件を内見したお客様や物件を紹介する仲介業者の印象にも関わる可能性がある点を認識しておきましょう。2021年1月に全国宅地建物取引業協会連合会・全国宅地建物取引業保証協会が公表している「住居の居住志向及び購買等に関する意識調査」によると物件情報を入手する際にあると便利な情報のTOP3は、以下の通りです。
- 第1位:室内の写真(65.9%)
- 第2位:周辺物件の相場(44.3%)
- 第3位:物件紹介の動画(32.8%)
※複数回答
物件選びの際には、物件の写真や動画が重視されるため、これらを通じて設備が老朽化していて物件が古い印象を与えてしまうと内見に来てもらえない可能性もあります。
市況に応じて入居率をアップさせるコツ3選
オーナーとしては、移り変わる賃貸マーケットの市況に応じて何らかの対策を講じることが求められます。入居率をアップさせるための主なコツは、以下の3つです。
- 市況を常に把握し、需要に応じた訴求をする
- 仲介業者との関係構築
- リフォームや修繕を必要に応じて行う
市況を常に把握し、需要に応じた訴求をする
賃貸需要は、社会的・経済的な要因や時代の潮流などに合わせて流動的に変化していきます。そのため不動産投資家として賃貸マーケットの動向を常にウォッチしておくことは重要です。オンタイムの市況を把握する方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 不動産会社などが発表しているデータを確認する
- 仲介業者に定期的にヒアリングをする
- 不動産投資家同士で情報交換をする
空室率や家賃相場の情報は、ネット上で取得できる場合もあるため、積極的に活用するといいでしょう。現場の生の情報として不動産投資家や仲介業者から情報を得ることも有効な手段の一つです。収集した市況に関する情報をもとに以下のような内容を考察しましょう。
- 自分の所有物件はどのような層(法人か個人か、学生か社会人かなど)向けか
- どのような需要(社宅としての需要、事務所兼自宅としての需要など)があるのか
賃貸需要を汲み取ることができれば「どのような層に対してどのような訴求をするのが最も効果的か」が見えやすくなります。
仲介業者との関係構築
仲介業者は、自分の物件をお客様に紹介してくれる重要なパートナーです。そのため不動産投資家として仲介業者との信頼関係を構築することは、入居率アップの効果的な施策の一つといえるでしょう。仲介業者との良好な関係が構築できれば「定期的に市況をヒアリングできる」「自分の物件を優先的にアプローチしてもらう」などさまざまなメリットがあります。
入居率をアップさせるためにも信頼できる仲介業者との関係性を構築しておくといいでしょう。
リフォームや修繕を必要に応じて行う
一棟物件の場合は、住戸内だけでなく共用部・外観のリフォームや修繕も必要に応じて定期的に行うようにしましょう。具体的に賃貸住宅のリフォームや修繕は、以下のようなものが挙げられます。
- エアコンや給湯器などの交換
- 住戸内の床やクロスの張り替え
- 需要に合わせた間取り変更、設備の更新
- 外壁塗装の塗り直し
- 屋上防水の塗り直し など
リフォームや修繕を行うことで入居者の住環境を向上させ、長期入居や家賃および資産価値の下落スピードを緩める効果が期待できます。そのためリフォームや修繕は必要に応じて行うようにしましょう。ただしリフォームや修繕を行うにあたっては、賃貸経営者としてコストパフォーマンスに見合った内容にすることも忘れてはいけません。
バリューアップが目的のリフォームをする場合は「効果として家賃と資産価値がどれだけ上がるのか」「どの程度下落スピードを緩めることができるのか」といった費用対効果をチェックするようにしましょう。
(提供:YANUSY)
【あなたにオススメ YANUSY】
・「財産債務調書」を提出している人は財産が○億円以上!
・ポスト港区!? 次に富裕層が住み始めるセレブ区はここだ!
・【特集#04】こんな領収証ならバレない?私的支出を経費にしたときのペナルティ
・固定資産税の過払いが頻発…還付を受けるための3つのポイント
・資産運用としての不動産投資の位置づけ