相続税は土地の値段だけで決まるものではなく、土地以外の遺産も合わせた総額で決まります。そして、遺産総額が多いほど税率が高くなり、納める税金も多くなります。
遺産総額を計算するときに、大きく節税ができる可能性があるのが、土地の評価額です。土地の評価額は特例や控除によって大きく変化するからです。
本記事では、相続税の計算方法と、土地の相続時に利用できる特例や控除、土地の相続税評価額を抑えて節税する方法について紹介します。
土地にかかる相続税の計算方法を解説
不動産を相続した場合には、不動産の価値に応じた相続税を納める必要があります。
納める相続税を計算するためには、遺産総額の計算と、遺産総額で決まる相続税率を求める必要があります。
ここでは、土地にかかる相続税の計算方法について解説します。
遺産総額を求める
まず、不動産を含む遺産全体の総額を計算します。預貯金などすぐに価値がわかるものはそのまま金額を足していきます。一方、借金や告別式の費用などは差し引かれます。
遺産の中で特に複雑なのが土地の評価額です。基本的には路線価や固定資産税から相続税評価額を求めます。しかし状況によって、最大で80%も減額ができる小規模宅地等の特例などが適用されます。
さまざまな特例、控除があるため、遺産総額を求める際には専門家に相談した方がよいでしょう。
遺産総額から相続税率を求める
遺産総額が分かると、課税遺産総額が計算できます。課税遺産総額は下記の通り計算できます。
課税総額-基礎控除額
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で求められます。
課税遺産総額が決まると、法定相続人に分配して法定相続分に応じた取得金額が決まります。分配される割合は、法定相続人の構成によって変わります。
法定相続分に応じた取得金額が決まったら、下表から税率と控除額を適用し、相続税を計算します。この計算を全ての法定相続人で行います。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
土地にかかる相続税を求める
法定相続人全員の相続税が決まると、相続税の合計額が求められます。この金額を実際に遺産を分けた割合に応じて分配していきます。
つまり、遺産のうち土地のみを相続する場合に納める相続税は、下記のとおり計算できます。
土地のみを相続する場合に納める相続税=土地評価額÷遺産総額×相続税
シミュレーションしてみる
預金が6,000万円、土地の評価額が1億円の土地を、配偶者と子ども2人で相続するとします。この場合のシミュレーションをしていきます。
遺産総額は、6,000万円+1億円で1億6,000万円です。基礎控除額は、3,000万円+600万円×3人で4,800万円です。
よって、課税遺産総額は1億6,000万円-4,800万円で、1億1,200万円になります。
法定相続人が、配偶者と子どもの場合、遺産は1:1で分けられます。子どもが2人の場合は、さらに半分ずつに分けられます。よって、配偶者は5,600万円、子どもは2,800万円ずつが法定相続分になります。
この金額にそれぞれ相続税率をかけると、下記のとおりです。
- 配偶者:5,600万円×30%-700万円=980万円
- 子どもA:2,800万円×15%-50万円=370万円
- 子どもB:2,800万円×15%-50万円=370万円
よって、相続税の合計は1,720万円です。この金額を実際の相続する割合によって分配します。
1億6,000万円の遺産を1人で相続する場合は、相続する人が1,720万円の相続税を支払います。
ここから土地のみの相続税を計算するには、下記のとおりです。
1億円(土地の評価額)÷1億6,000万円(遺産総額)×1,720万円(相続税の合計)=1,075万円
土地の相続時に利用できる特例や控除
土地の相続には、さまざまな特例や控除があり、それを利用することで相続税を下げることができます。ここではその例を紹介します。
基礎控除
基礎控除は前述したとおり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
遺産総額より基礎控除額の方が高ければ、課税されることはありません。
配偶者控除
配偶者が遺産を相続した場合には、1億6,000万円または法定相続分以下の部分に対して、相続税は免除されます。そのため、多くの場合が非課税となります。
配偶者控除の理由は、配偶者の老後生活を保障するためや、資産形成に少なからず関わっているためです。
未成年者控除
未成年が遺産を相続する場合も下記のとおり控除されます。
(18歳-相続する年齢)×10万円
ここでの相続する年齢は満年齢を入れるため、10歳11ヶ月であれば8歳を入れます。(2022年4月1日より成年年齢が20から18に引き下げられました。)
この額は、丸々税金から控除され、本人で引ききれなかった場合は、ほかの相続人の税額から引くこともできます。
たとえば、21歳と14歳の2人兄弟で30万円ずつ相続税を納めなければいけなかった場合、14歳の子どもには40万円の未成年者控除が適用されます。
よって、14歳の子どもの30万円は非課税になるのですが、未成年者控除が10万円分残っています。そこで、21歳の子どもの相続税から10万円が控除され、20万円の相続税を納めるだけでよくなります。
障害者控除
相続人が85歳未満の一般障害者である場合には下記のとおり控除されます。
(85歳―相続時の年齢)×10万円
特別障害者の場合は控除額が2倍になります。
この額は、丸々税金から控除され、本人で引ききれなかった場合は、ほかの相続人でかつ扶養義務者である人の税額から引くことができます。
相次相続控除
相続が10年以内に2回以上起こった場合には、相次相続控除が受けられます。これは、相続税を連続で払う負担を減らすためです。
計算が複雑なため、ここでは省略しますが、父親が亡くなって、10年以内に母親が亡くなった場合などが当てはまります。該当する場合は、専門家と相談することをおすすめします。
小規模宅地等の特例
小規模な宅地について、一定の条件を満たしていれば、その宅地の評価を最大で80%も減額してもらえます。
主な条件は、下記のとおりです。
- 住んでいた土地
- 事業をしていた土地
- 貸していた土地
つまり、土地を有効活用していれば、減額を認めてもらえるわけです。
土地の相続税評価額を抑えられるケースとは
改めて、相続税評価額とは相続税や贈与税を決める時に、不動産の価値を評価するための金額です。
土地の評価額が抑えられれば、相続税は下がります。評価額が抑えられるケースについて紹介します。
居住用建物が建っている場合
所有している土地の建物に住んでいた人が亡くなったとき、小規模宅地等の特例で330m2まで、評価額が80%減額になります。
ただし、下記に該当する人が相続した場合のみに適用されます。
- 亡くなった人の配偶者か同居人
- 亡くなった人が1人住まいだった場合には、別所で3年間以上借家住まいの人
下記のケースでシミュレーションしてみます。
- 預金:6,000万円
- 土地:評価額が1億円
- 相続人:配偶者と子ども2人
土地の評価額が1億円から80%減額され、2,000万円になります。預金の6,000万円を足して、総額は8,000万円です。
そこから基礎控除額の4,800万円を引いて、課税遺産総額は3,200万円です。
法定相続分は、配偶者が1,600万円、子どもが800万円なので、相続税の合計は下記のとおりです。
- 配偶者:1,600万円×15%-50万円=190万円
- 子どもA:800万円×10%=80万円
- 子どもB:800万円×10%=80万円
相続税の総額が350万円にまで減額されました。
ここから土地のみの相続税を計算すると下記のとおりです。
2,000万円÷8,000万円×350万円=87.5万円
貸家(アパートやマンション)が建っている場合
アパートやマンションなどの貸家が建っている土地を相続した場合も、土地の評価額を大幅に下げられる可能性があります。
まず貸家が建てられていると、貸家建付地に該当し評価額が下がります。計算方法は複雑で借地権割合などで評価額は変わります。一般的な土地だと更地の8割程度の評価になります。
さらに、借家が建っている場合は、小規模宅地等の特例により、その土地の評価額が200平米まで50%になります。
上記と同じ条件で計算してみます。
1億円×80%(貸家建付地)=8,000万円
8,000×50%(小規模宅地等の特例)=4,000万円
預金の6,000万円を足して、総額は1億円です。
そこから基礎控除額の4,800万円を引いて、課税遺産総額は5,200万円です。
法定相続分は、配偶者が2,600万円、子どもが1,300万円なので、相続税の合計は下記のとおりです。
- 配偶者:2,600万円×15%-50万円=340万円
- 子どもA:1,300万円×15%-50万円=145万円
- 子どもB:1,300万円×15%-50万円=145万円
相続税が630万円にまで減額されました。
ここから土地のみの相続税を計算すると下記のとおりです。
4,000万円÷1億円×630万円=252万円
更地の土地を相続した場合の土地相続税は1,075万円でした。貸家が建っている場合は252万円なので、823万円も節税になることが分かります。
居住用建物が建っている場合が最も評価額を下げられますが、居住用の建物では家賃収入はありませんし、相続対策のために自宅を建てるのは現実的ではないでしょう。
また、固定資産税も更地の時より安くなります。
このようなことから相続対策として賃貸経営される方が多いです。
土地の活用を考えるなら専門家に相談してみよう
このように相続をする場合には、更地ではなく土地を有効活用することが節税になります。
土地を有効活用するためには、不動産会社などの専門家の協力が不可欠となります。長い付き合いとなるので、早めに行動をして、もしもの時に備えましょう。
(提供:YANUSY)
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