米国でインフレが止まらない。米国労働省が発表した「2022年2月の消費者物価指数の上昇率」では前年同月比でプラス7.9%となり、40年ぶりの水準となった。米国では2%をやや上回る水準がインフレ目標として掲げられてきたが、さすがに7.9%は行き過ぎとして是正を試みている。インフレのメリットと怖さとは何なのだろうか?
そもそも「インフレ」とは?
インフレの基礎知識を、あらためて確認してみよう。インフレとは「インフレーション(inflation)」の略で「物価の上昇」を意味する。
例えばリンゴの価格が、前年の同月は1個100円だったものが1年後に1個105円に上がったとする。リンゴの価格が上昇したことから、リンゴのインフレが5%起こっていることになる。
ちなみにインフレの対義語は「デフレ」だ。デフレは「デフレーション(deflation)」の略で、物価が下がり続ける状況のことを指す。
通貨の視点からインフレを見ると?
「物価」という視点から見るとインフレは物価の上昇、デフレは物価の下落を指すが、「通貨」という視点から見るとインフレは通貨の価値の下落、デフレは通貨の価値の上昇を指す。
インフレが起こると、かつては100円で買えていたものが100円で買えなくなり、デフレが進行すると、100円で買っていたものがもっと安い価格で買えるようになる。つまり、通貨の持つモノの購買力がインフレでは下がり、デフレでは上がることになるのだ。
インフレのメリットとは?
結論から書くと、一般的に経済によい影響を与えるとされるのは、デフレではなくインフレだ。デフレはモノの値段が下がるので得な気がするかもしれないが、経済全体にとってはマイナスなのだ。インフレのメリットを挙げると、次の通りとなる。
メリット①:企業がもうかりやすい
インフレになるとモノの値段が上がるため、企業の売り上げが上がる。売り上げが増えれば利益を出しやすくなる。
メリット②:従業員の給与が増えやすい
企業の利益が増えると、企業側は雇用している従業員の給与額や賞与(ボーナス)の金額を上げやすくなる。
メリット③:景気回復のプラス材料になりやすい
従業員の給与が上がると、その従業員のモノやサービスの購買力が上がる。その従業員がさまざまなモノを購入したりサービスを利用したりすることで、モノやサービスを提供している企業の売り上げが増える。こうした経済の好循環により、インフレは景気回復のプラス材料になりやすい。
現時点ではインフレ?デフレ?
インフレにはこうしたメリットがあるため、世界的各国がインフレの続く状態を維持しようとしている。
一方、インフレが急に進みすぎると、給与の上昇が追いついていない状態でモノやサービスの価格が上がることになり、消費者の購買意欲を極端に下げる可能性がある。そのため昨今の急速なインフレに対しては、頭を悩ませているわけだ。
ここまで説明すれば、「適度なインフレ」を維持することが、経済にとっては非常に重要だということが分かるだろう。我が国も年2%のインフレ率を目標として掲げている。では、日本はいまインフレ状態なのか、デフレ状態なのか。
総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」の前年に対する上昇率(インフレ率)を見ると、2000年以降で日本はデフレとなった期間がかなりある(下図参照)。具体的に例を挙げると、2000~2004年ごろ、2009~2011年ごろ、2015~2016年ごろだ。最近では、2020年中旬から2021年中旬にかけてデフレとなっている。
<消費者物価指数の前年に対する上昇率(インフレ率)>
ちなみに直近2022年2月の日本のインフレ率(生鮮食品を除く)は、前年同月比でプラス0.6%だった。つまり現在の日本はインフレ状態だと言えるだろう。
保有資産への影響に目を向けよう
先述したように、インフレは通貨の価値を下げる。そのため、日銀が目指している通りに日本でインフレ状態が続いていくとなると、個人が保有している貨幣の価値がどんどん低くなっていくことになる。
こうした状況を回避するための方法の一つとして、資産運用によって保有資産の価値を膨らましていくという方法がある。仮に毎年2%のインフレが続いたとしても、現在の保有資産の価値が毎年2%膨らんでいけば、購買力は変わらない。
一方、仮にデフレの状況が続くとしても、保有資産の価値を膨らますことにはメリットしかないため、まだ資産運用を開始していない人は、ぜひ検討したいところだ。
良いインフレと悪いインフレ
ここまでインフレについて説明してきたが、一言にインフレと言っても良いインフレと悪いインフレがある。企業が儲かり、社員の所得も増え、景気が好転するのが良いインフレだ。一方、悪いインフレは物価が急上昇し、企業がそれに追いつかず、社員の所得が増えない悪循環に陥ることである。インフレだが景気は好転しない、いわゆる「スタグフレーション」と呼ばれる状態だ。
ロシア・ウクライナ情勢の悪化はエネルギー価格の高騰を引き起こし、そのことがモノやサービスのコストを吊り上げ、インフレを助長している。そのため最近の経済ニュースでは、インフレというワードが以前にも増して頻繁に登場するようになった。
現在は良いインフレと悪いインフレ、どちらの状態なのか。状況がしっかりと見極められる目を養いたいところだ。
(提供:manabu不動産投資 )
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