サラリーマン大家として成功をおさめ、約10年前に早期リタイアを達成。その後、資産を十数億円まで増やした不動産投資家、赤井誠さんのインタビューです。伺うテーマは「年間1棟ペースで新築物件を建て続ける理由」「最近のローン審査の状況」「物件ジャンルを選ぶ際の考え方」などについてです。
【プロフィール】
神奈川県横浜市生まれ。北海道大学・大学院修了後、電機メーカーで勤務。サラリーマン時代に副業として不動産投資を開始。その後、2013年に退社、専業大家へ。2022年4月段階の所有物件数は日本国内19棟・129室、さらにハワイとバンコクにコンドミニアムを各2戸所有。近著に『めざせ!満室経営 本気ではじめる不動産投資』(すばる舎)などがある。
目次
最近は新築物件を1年に1棟ペースで建て続けている
−まずは赤井さんの不動産投資家としての近況を伺いたいと思います。資産規模、家賃収入はどれくらいでしょうか。
資産規模としては今、12、13億円くらいですかね。家賃収入で言いますと年間約1億2,000万円、月間約1,000万円の規模です。
−国内の所有物件は19棟とのことですが、この数は最近、増えたり減ったりしていますか。
最近は極端な規模拡大をしていませんが、おおむね1年に1棟のペースで新築し続けています。これに加えて、区分マンションとか戸建住宅とか、良さそうな物件があったら買い足しているような感じです。
−ちなみに、購入される物件はどのようなルートで見つけるのですか。
以前は、おつきあいのある不動産業者から企画商品を持ち込まれることが多かったのですが、最近は低利回り傾向ですのでこのパターンは減っています。その代わり、僕が所有している物件の隣地や近隣の人から「うちの土地を購入しませんか?」と話がくることが多いですね。
あらかじめご近所に「隣で(近所で)アパート経営している者ですけど、もし今後売却するようなことがあったら一声かけてもらえますか」とご挨拶しておくと、先方が売りたいタイミングでお声がけいただけたりする。それで購入することが最近、3件ほどありました。
−その時々で物件を見つける方法が変わってくるんですね。また、さきほど話題に出ましたが、赤井さんが最近購入される物件は、新築中心なんですね。
ほとんど新築ですね。たまに築浅の物件を購入するくらいです。エリア的には横浜周辺がメインです。
−横浜エリアですと購入後に、かなり値上がりした物件もあるのではないですか?
そうですね。ただ、値上がりを手放しでは喜べない。売却する立場では儲けたといえますが、物件を購入する立場だと、低利回りになったということですからね。4、5年くらい前と比べると利回りが1〜2%前後、低くなりましたね。以前は、新築物件の利回りの目安を9%台以上に設定していましたが、最近は、7%台半ば〜8%台前半くらいでしょうか。
−割高になった利回りに抵抗感はないですか?
もちろん、ありますけど、状況的には仕方ない面もある。木材、コンクリート、人件費など 軒並み値上がりしていますからね。このような状況下だと、新築物件が値上がりしているといっても、不動産業者も利ざやがあまりとれていない。ようは、値引き交渉をしても期待できないということです。
だから、物件を仕入れる段階で、少しでも利回りが高められるよう努力しています。例えば、不動産業者がまだ一般に情報発信していない物件を探すとか。まだ広告費をかけていないので、その分、値引き交渉の余地がある。また、家賃を少しでも高くとれる間取りになるようプランニングするなんて工夫もしています。
ローン審査が厳しいことは、物件を買わない理由にならない
−ここ最近の不動産投資ローンの審査の感触はいかがでしょう。
僕が今、メインで取引している金融機関は、都銀、地銀、信金の3つですね。いずれの金融機関でも「融資しない」と言われることはないです。その一番の理由は、僕の資産を管理している法人の決算内容を金融機関が高く評価しているからだと思います。
−不動産投資ローンの審査が厳しくなったという声もよく聞かれますが……赤井さんには関係ないということでしょうか。
いえ、融資の可否ではよいお返事をいただけても、自己資金(頭金)と金利が厳しくなっています。例えば、ひと昔は1億円の物件が、頭金0円で買えるようなこともありました。頭金0円は極端でも、物件価格の10%、5%の頭金で済んだりしていた。それが今では物件価格の20%くらいの頭金を普通に要求される。
金利でいうと、僕は資産の規模が大きいので、一般の不動産投資家よりも、低金利で融資を受けています。それでも、もっとも低金利だったときと比べて、金利が倍近くになっていますね。
−融資の環境が厳しくなっても、年間1棟のペースで新築物件を建てている理由は何でしょう。赤井さんレベルの資産規模があれば、「もう物件は買わなくてもいいか」とは思わないですか。
まあ、もう物件を買わなくてもいい面もあるかもしれませんけどね。正直(笑)。ただ、一般的に言うと、物件は劣化していくものですから、定期的に入れ替えていかないと、古い物件ばかりになってしまいます。
あとは、その時々の自分のレベルに合った物件に入れ替えていく必要もある。不動産投資を始めたとき、僕が購入していたのは、地方や駅から離れた立地の高利回り物件でした。それらを資産規模が大きくなると共に売却し、横浜を中心とする好立地物件に切り替えてきました。
つまり、キャッシュフロー重視から、資産性重視への切り替えですね。この資産性の追求には終わりがない。もっと好立地の物件、もっと好条件の物件はいくらでもありますからね。
オールラウンダーの不動産投資家が最終的に一番強い
−赤井さんは、RC造や木造の一棟物件、さらには区分マンション、戸建ても購入されていますね。いろんなジャンルの物件を購入する理由は何でしょう?
僕は昔からテニスをやっていますが、長い目で見ると、オールラウンダーが強いと感じます。ビッグサーバーとか、守りだけというような特化したタイプより、サーブ、ストローク、ボレーがまんべんなく打てるようなオールラウンダーが強いんですね。
不動産投資も同じで、いろんなジャンルの物件を所有するオールラウンダーが強いと考えています。ジャンルの一例では、RC造、木造、戸建、地方、都心部……などがありますが、それぞれにメリットとデメリットがある。メリットだけしかない物件なんてないんですよ。だからこそ、物件の組み合わせが大事です。
−いろんなジャンルの物件を所有すると、さまざまな状況に対応しやすくなるわけですね。
そうです。大事なポイントは、世の中の流れであるジャンルの物件が有利になったり、不利になったりすることが結構あることですね。
例えば、ひと昔前は中古物件だと利回り20%くらいのものもいっぱいありましたが、今は利回りがかなり下がっている。となると、新築物件と中古物件の利回りが近づき、減価償却期間が長い新築のメリットが大きくなる流れになったりするわけです。
あと、最近ではリノベーションの技術や材料が発達しているので、その分野も有利になっていますね。一方、以前は木造だと長期融資が難しかったけれど、品質の高いものであれば、35年の長期融資が可能だったりする。戸建てだと地形(じがた)がよければ、将来的に建物を壊して普通の住宅地として売却することも容易ですしね。
−不動産投資のオールラウンダーになるには、それぞれのジャンルのメリット・デメリットを知っていることが大事ですね。
物件ごとのメリット・デメリットに加えて、不動産投資をするならリフォームの知識も必須でしょうね。例えば、入居者の退去が発生したとき、高額の請求書が送られてくることもあります。そんなとき、リフォームの知識があれば、オーナー自身で内容をチェックして、「この部分は別のこんな方法で修繕してほしい」と指示できますからね。
具体的に言うと、家賃5万円前後の部屋があって、原状回復費が70万円というような見積りが業者さんから上がってきたりするわけです。それをまともに払ったら、1年以上の家賃を計上することになってしまう。だから、オーナー自身のチェックと指示が大事になってくるわけです。
−不動産投資家は、知識のあるなしで得られる利益が大きく変わってくるのですね。
知識を得るということで言うと、自己完結するのではなく、周囲の人たちから学ぶ姿勢も大事です。例えば、税務、融資、営業など、それぞれの分野に詳しい人もいますよね。そういう人たちと交流する中で、情報を直接得ることも大切です。
周囲から学ぶ姿勢を持っていない人は、有益情報を聞いても右から左に流れてしまう。だから、知識欲を持っていないと、投資家として勝っていけないと思いますね。
「手っ取り早く金稼ごう」という考え方は、将来的に持たない
−このインタビューは、不動産投資をこれから始めたい人も読んでいると思います。どのような考え方で賃貸経営をしていけば、成功確率が上がりますか。
僕は元サラリーマンの不動産投資家なので、とくにビジネスパーソンの人にお伝えしたいのですが、安定収入があるという信用力をうまく活かすべきでしょうね。
ただ、信用力があるから不動産投資をしやすい、融資を受けやすい、と単純に考えてはいけない。現在の不動産投資の状況を分析すると、自己資金がないと始めにくくなっています。この状況下で自己資金なしで不動産投資をしようとすると、高金利になってしまう。これではなかなか儲からない。
この状況を突破するには、家計を切り詰めて、まずは自己資金の原資となる貯蓄をしっかりすることです。「手っ取り早く金を稼ごう」というような考え方は、長期的、将来的に持たないというのが僕の考え方です。
−その原資となる貯蓄ができたら、どんな物件を買ったらよいでしょうか。
新築物件、中古物件に限らず、1棟目の物件は高利回りがポイントになるでしょうね。1棟目の物件が高利回りなら、キャッシュフローが出やすくなり、手元のお金が溜まってくる。その手元資金を使って、効率的に経営規模を拡大していく。
そして最終的に資産規模が大きくなったら、キャッシュフロー重視の物件から、資産価値の高い物件に切り替えていくのがよいでしょうね。
−今、お話になったのはまさに赤井さんが歩まれてきた、成功パターンそのものですね。融資や市場の環境が変わっても、不動産投資の基本形は変わらない、そんなことを感じます。
赤井誠さんの個人ブログ、コラム(外部リンク)
ブログ:http://akachan626.blog.fc2.com/
コラム:https://www.kenbiya.com/ar/cl/baby/
(提供:YANUSY)
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