マンション経営におけるエレベーターの維持費は高額で、賃貸オーナーを悩ませるコスト問題のひとつです。

エレベーターを安全に維持・管理するためには、定期的に点検したり、数十年に一度エレベーターそのものを取り換えたりする必要があります。

今回は、エレベーターの維持・管理に必要な項目と費用を抑えるポイントを解説します。

目次

  1. エレベーター維持費の相場
    1. 定期検査
    2. 保守点検
    3. 維持費の相場
  2. 点検・検査費用は依頼する会社によって大きく異なる?
    1. 大手メーカー系と独立系
    2. それぞれのメリット・デメリット
    3. 費用はどのくらい変わる?
  3. 低層マンションならエレベーターを設置しないことも検討する
    1. エレベーターの設置義務は7階から
    2. エレベーターがなければ建築費用が1,000万円以上浮く?
    3. ほかの付加価値を提供する必要がある

エレベーター維持費の相場

マンション経営におけるエレベーターの維持費を紹介。費用を抑える方法とは
(画像=YANUSY編集部)

エレベーターにかかる維持費には定期検査と保守点検の2種類があります。どちらも建築基準法第8条と12条に基づき実施することが義務付けられています。

定期検査と保守点検はそれぞれ実施タイミングと内容が分かれており、それぞれの内容を把握することで安全とコストのバランスを取ることができます。

定期検査

定期検査は6カ月〜1年間に1回の頻度で実施する必要があり、国土交通省の「昇降機等の定期検査報告に係る告示改正等について」に基づいて行います。

検査者は、一級建築士、二級建築士、昇降機検査資格者でなければなりません。検査者がチェックするポイントは以下のとおりです。

  • 機関室の通路、階段、戸の施錠、室内の異常
  • 制御器、階床選択機、巻き上げ機、ブレーキといった機械類の異常の有無

検査者は特定行政庁に結果を報告し、「定期検査報告済証」が交付されることで検査終了となります。

保守点検

保守点検には期間が定めらおらず、検査者も建築士や昇降機検査資格者である必要はありません。

さらに、保守点検は義務ではなく、努力義務です。そのため、使用頻度に応じてマンションオーナーが実施するタイミングを決めます。

点検時にチェックするポイントは以下の項目が推奨されます。

  • 緊急ブレーキの状態や動作状態、パットの厚み
  • 巻き上げ機の状態やメインロープが伸びていないか
  • バッテリーの状態
  • かごや乗り場、制御盤が正常かどうか

保守点検は努力義務となるため、点検会社に管理委託することが多いです。

検査は使用頻度に応じて行われますが、契約形態にはフルメンテナンス契約とPOG契約の2つがあり、どちらかを選択しなければなりません。

フルメンテナンス契約

フルメンテナンス契約は、部品交換や修理をすべて保守点検の会社に委託します。そのため、マンションオーナーは状況判断をする手間が省けるというメリットがあります。

部品交換や修理内容によって毎月の維持費が変動することがなく、管理計画の見通しが立てやすいです。

POG契約

POGとはParts Oil Grease(パーツオイルグリス)の頭文字を取った造語です。
基本的な点検は業者に委託し、部品交換や修理が発生した場合にはマンションオーナーが都度点検や修理を依頼するという契約形態です。

オーナーが部品交換や修理を保留にすることもできるため、費用を抑えることができるというメリットがあります。

一方、修理の度に契約を結ぶ手間が発生し、場合によってはフルメンテナンス契約よりも高い修理費になることもあります。結果的にオーナーの工数が増加し、さらには安くならない可能性があるという点がPOG契約のデメリットです。

一般的には、古いマンションであればフルメンテナンス契約、築浅のマンションであればPOG契約がおすすめといわれています。

維持費の相場

定期検査と保守点検はまとめて同じ会社に依頼することが一般的です。

定期検査とフルメンテナンス契約を結んだ場合の相場は、年間で約50万円です。
一方で、定期検査とPOG契約を結んだ場合の相場は、年間で約30万円です。

また、国土交通省の「長期修繕計画ガイドライン」によると30年に1度エレベーターの交換が推奨されています。交換費用はマンションの規模によりますが、数百万円〜1千万円ほど必要です。

また交換期間は1カ月程度必要なケースが多く、当然その期間はエレベーターの使用はできません。

点検・検査費用は依頼する会社によって大きく異なる?

当然ながら、点検・検査費用は依頼する会社によって異なります。

会社は大手メーカー系と独立系の会社の2つに分けられますが、費用や点検内容にどのような違いがあるのでしょうか。

それぞれの特徴について解説します。

大手メーカー系と独立系

エレベーターを点検する会社には5大メーカーと呼ばれる以下の会社があります。

  • 三菱
  • 日立
  • 東芝
  • 日本オーチス
  • フジテック

これらの会社は、それぞれエレベーターを製造しており、自社のエレベーターのみを保守点検するという特徴があります。

一方で独立系は、それ以外の保守点検の会社のことを言い、どのメーカーのエレベーターも保守点検することができます。

それぞれのメリット・デメリット

メーカー系と独立系の会社で点検内容に大きな違いはありませんが、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

メーカー系のメリット・デメリット

メーカー系のメリットは、大手メーカーならではの安心感です。

居住者としても大手メーカー直属のメンテナンス会社が管理してくれるということで安心して使用できます。また、24時間365日間トラブル対応してくれるのも大きなメリットと言えます。

一方、独立系の会社に比べてコストが高くなりやすいという点はデメリットです。

独立系のメリット・デメリット

メーカー系のデメリットがコスト面であるならば、独立系のメリットはコストが安いという点です。浮いた費用を別の設備に回すことで、居住者にとって大きなメリットになると言えます。

一方、デメリットは技術力の不安です。すべての独立系メーカーが問題というわけではありませんが、大手メーカーに比べ財政面や教育環境という点で見劣りするという不安はあります。

費用はどのくらい変わる?

フルメンテナンス契約とPOG契約ともに、メーカー系の方が月額1万円ほど高くなる傾向があります。

そのため、費用面だけを見れば独立系の保守点検の会社が良いでしょう。

また点検の会社を選ぶときは、手間はかかりますが複数社から見積もりをとることをおすすめします。複数社の中から費用や点検内容などを比較でき、好条件で契約できる可能性が高まります。

低層マンションならエレベーターを設置しないことも検討する

マンション経営におけるエレベーターの維持費を紹介。費用を抑える方法とは
※画像提供元:株式会社LeTech

エレベーターの維持管理には大きなコストが必要ですが、当然エレベーターを設置しなければこれらの費用は不要です。

低層マンションであればエレベーターを設置していないマンションも多く存在します。
ここでは、エレベーターを設置する義務が生じる高さや、エレベーターを設置しない際の注意点を紹介します。

エレベーターの設置義務は7階から

建築基準法では、サービス付き高齢者向け住宅以外で高さ31m超のマンションにはエレベーターを設置する義務が生じます。

高さ31m超とは、一般的には7階建て以上のマンションとなります。
なお、サービス付き高齢者向け住宅は3階建て以上のマンションにエレベーター設置義務があります。

そのため、6階以下のマンションであればエレベーターを設置しないことも検討できるということになります。ただし、高さが31m超える場合は階数に関わらずエレベーターを設置する必要があるのでご注意ください。

エレベーターがなければ建築費用が1,000万円以上浮く?

マンションの規模やエレベーターの大きさによって異なりますが、エレベーターの設置は1,000万円以上の費用がかかることがあります。

設置費用に加えて年間30万〜50万円かかる維持費も抑えられます。

設置費用が1,000万円、維持費が年間30万円かかったとすると、10年間で1,300万も浮かせることができます。

建築費用と維持費を抑えることは、当然利回りに直結します。エレベーターを設置しなくても入居率が見込めるのなら、ぜひ検討したいところです。

ほかの付加価値を提供する必要がある

エレベーターを設置しないことは大きなコスト削減になりますが、居住者にとっては部屋を選ぶ際のマイナス点になり得ます。

そのため、ほかの部分で付加価値を付け、マイナス面をカバーする必要があります。

付加価値として、分かりやすいところで言うと、デザイナーズマンションです。
デザイナーズマンションは、ほかのマンションとの差別化がしやすく、最新のセキュリティや設備が導入されているケースも多いので、若者・女性・富裕層を中心に人気があります。そのため、エレベーターがなくてもデザイン性で選ばれる可能性が高いです。

マンションの付加価値はマンションオーナーが考えるよりも、プロのアドバイスを聞くのが得策です。その地域に合った付加価値の付け方を提供してくれるでしょう。マンション経営を検討する場合はまずプロに相談してみましょう。

マンション経営におけるエレベーターの維持費を紹介。費用を抑える方法とは
※画像提供元:株式会社LeTech

(提供:YANUSY

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