中国マーケットのトレンドを表す言葉として「彼女経済(她経済)」が注目されている。2022年時点で世界一の人口を誇り消費市場としても米国に次ぐ規模となった中国マーケットでどのような変化が起きているのだろうか。本稿では、中国のトレンドワードとなっている彼女経済の概要と中国女性の消費動向について解説していく。

「彼女経済」とは?

東洋証券
(画像=ZUU online作成)

「彼女経済」の「彼女」とは、広く女性消費者一般のことを指す。中国は20~60歳の女性人口だけで約4億人に上り、その個人消費の規模は年間10兆元(1元20.32円換算で約203兆円)ともいわれる。中国人女性は、労働意欲が高く、仕事で得た収入を旅行やファッションなど個人の消費活動に活発にあてている。こうした中国人女性の購買力の高まりを捉えた言葉が「彼女経済」だ。

なぜ、中国人女性の消費意欲と消費能力が高まっているのか?

中国人女性の消費意欲と消費能力が高まっている背景には、何があるのだろうか。

世界銀行によると2019年時点の中国人女性(15歳以上)の労働参加率は60.6%。労働参加率とは、生産年齢人口に占める労働力人口の割合のことで、同年の日本人女性は53.6%だった。中国人女性の労働参加率は、他の先進国と比較しても高い水準にあり、中国では女性が結婚・出産後も仕事を続けるのが一般的だ。

なかでも20~30歳代の若年層は、比較的、高学歴で収入が増加傾向だという。労働参加率の高さが女性の収入増につながり、ひいては個人消費の拡大に寄与しているというわけだ。

どのような商品が多く売れている?

中国人女性の旺盛な消費意欲は、どこに向かっているのだろうか。以下の4つのジャンルに分けて考察していく。

  • 旅行
  • 美容・健康
  • スマート家電
  • 自動車

旅行

2005年の中国人海外旅行者数は、約3,000万人だったが、2019年には約1億7,000万人にまで増加した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年こそ1億人を割ったものの、2021年は1億人台を回復し、今後はさらなる増加が見込まれている。一人旅を好む中国人女性も多く旅行は、主要な支出項目だ。

美容・健康

美容や健康に関する消費も増えている。中国の化粧品輸入額は、2019年度で132億3,183万米ドル(前年比+33.8%)と順調だ。コロナ禍となる2020年にいたっては1~10月時点で160億米ドル(1米ドル135円換算で約2兆1,600万円)と今や約2兆円を超える。中国・上海で美容博覧会を開けば世界中から3,000社以上が参加するほどで美容品に対する関心は高い。

また、健康志向が若年層に広がっており、一部の人の間では、日本の青汁やサプリが人気だ。フィットネスジムに通う若者が増えて、フィットネス市場は急拡大している。

スマート家電

結婚・出産後も仕事を続ける女性にとっては、家事の負担軽減も関心事の一つだ。中国人女性がスマート家電を使用する場面は増えており、スマート家電市場も見逃せない。

たとえば、ロボット掃除機に関しては、すでに中国が世界最大のマーケットになっていると指摘される。2021年の中国のロボット掃除機販売額は約110億元(1元20.32円換算で約2,235億円)で前年比+17%となった。

家電などをインターネットに接続して遠隔で操作したり自宅で音声によって管理したりするスマートホームも中国では広がっている。

自動車

中国人女性の運転免許保有者が増えていることも注目に値する。中国公安省によると2021年時点で女性の免許保有者は1億6,200万人(全体の33.68%)を超えた。今後も増加傾向は続く見通しで、女性ドライバーをターゲットにした企業間の自動車販売競争が展開されるだろう。

中国では「宏光MINI EV」が人気だ。下位グレードは2万8,800元(1元20.32円換算で約59万円)、最上級グレードでも3万8,800元(約79万円)と格安。このような100万円を切る格安の電気自動車(EV)が販売台数を伸ばしている。女性ドライバーを意識したEV開発は、すでに始まっている。

ただし現在、中国ではコロナ禍が自動車需要に与えた悪影響や感染拡大の封じ込めのための都市封鎖などが要因となり、買い控えムードが出てきている。2022年上半期の新車販売台数は前年同期比で6.6%減となり、業界団体は年間の販売台数予想を下方修正している。

新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまでは、女性による自動車購入の勢いがやや落ち込むのは避けられない状況になっている。

今後も「彼女経済」が旺盛な状況は続くのか?

中国マーケットを「彼女経済」がリードする流れは、当面続く見通しだ。中国の個人消費は、2030年までに5兆3,000億米ドル(1米ドル135円換算で約716兆円)まで膨らむと予想されている。この拡大を支えるのが「彼女経済」だ。個人消費の伸びの約80%が中国人女性の所得増加によるものとの分析もある。

中国の個人消費の拡大は、2030年までに世界の消費拡大のうち約27%分に寄与し、米国の19%を上回る見込みだ。もはや「彼女経済」は、中国マーケットのみならずグローバルマーケットをけん引するといっても過言ではない。

中国人女性の消費意欲を取り込めるかが成長を左右

「女性の活躍が経済の活性化につながる」。こうした考え方は「ウーマン」(女性)と「エコノミクス」(経済)をかけ合わせて「ウーマノミクス」ともいわれる。

日本では、結婚・出産を機に女性が仕事を辞め、女性の労働力人口が増えないことが社会的な課題とされてきた。日本で「ウーマノミクス」が議論されるのは、女性活躍を推進する文脈からで、女性の労働参加率が高い中国とは社会的な背景が異なる。

現在の中国の状況を踏まえると、化粧品などの従来のマーケットがさらに成長するだけでなく、ライフスタイルの変化にともなう新たなマーケットが生まれる可能性があるだろう。旺盛な中国人女性の消費意欲を的確に取り込めるかが企業の成長を左右しそうだ。

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