丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

初めて不動産投資を行う場合「どの程度の自己資金を用意すればいいか分からない」と迷う人もいるかもしれません。具体的に不動産購入の初期費用は、どの程度かかるのでしょうか。

本記事では「新築・中古」「マンション・アパート」など物件の種類別に必要な自己資金や初期費用の目安を解説します。

目次

  1. 頭金と諸費用の目安
    1. 頭金の目安
    2. 諸費用の目安
  2. 購入できる物件と自己資金の目安
    1. 格安中古区分マンション
    2. 中古区分マンション
    3. 新築区分マンション
    4. 中古一棟アパート
    5. 新築一棟アパート
    6. 中古一棟マンション
    7. 新築一棟マンション
  3. フルローンで購入するメリット・デメリット
    1. フルローンで購入するメリット
    2. フルローンで購入するデメリット
  4. 土地を持っているオーナーなら一棟マンション建築が有利

頭金と諸費用の目安

不動産投資の自己資金はいくら必要?購入できる物件と金額の目安を解説
(画像=MonsterZtudio/stock.adobe.com)

一般的に不動産投資における自己資金とは、ローンを組む際の頭金と購入にかかる諸費用のうち自分で用意できる金額のことをいいます。はじめに頭金と諸費用の目安を確認しておきましょう。

頭金の目安

一般的な頭金の目安は、購入金額の10~20%程度といわれています。購入する物件の担保価値や借入申込者の属性が良ければ10%程度でも金融機関のローン審査に通るケースもあるでしょう。しかし20%程度の頭金を用意したほうがローン金額(返済額)を減らすことができるため、安心です。

ただ、頭金が多いほうがよいからといって手持ち資金をすべて頭金に入れることはおすすめできません。不動産の購入時に頭金だけでなく諸費用がかかったり、投資期間中に修繕などで急にお金が必要になったりすることがあるからです。

手持ち資金を運転資金としてある程度残しておくことで、万が一の際も安定した不動産経営が期待できます。

諸費用の目安

不動産購入時に用意する主な諸費用は、以下の通りです。諸費用は、新築と中古でかかる費用が異なりますが、新築で4~7%程度、中古で7~10%程度が目安となります。

・仲介手数料(中古物件の場合)
・不動産取得税(購入後半年~1年程度で請求が来る)
・登録免許税(所有権保存登記や抵当権設定登記の際に必要)
・印紙税(不動産売買契約書の作成時に必要)
・保険料(火災保険や地震保険料)
・ローン事務手数料(金融機関により金額は異なる)
・司法書士報酬(司法書士により金額は異なる)など

購入できる物件と自己資金の目安

続いて、物件の種類別に購入時に必要な自己資金の目安を見てみましょう。ここでは、約15~30%の範囲で購入できる物件を考察します。

格安中古区分マンション

物件価格自己資金15%自己資金20%自己資金25%自己資金30%
300万円45万円60万円75万円90万円
600万円90万円120万円150万円180万円
900万円135万円180万円225万円270万円

中古マンションは、築年数の幅が大きいため、探せば格安物件が見つかるかもしれません。例えば自己資金100万円で購入したい場合は、300万円の物件であれば自己資金範囲内の何%であっても問題なく購入できます。

しかし600万円の物件を購入するには、自己資金を15%程度に抑えることが必要です。また、900万円の物件は100万円の自己資金では、購入が難しいことが分かります。

中古区分マンション

物件価格自己資金15%自己資金20%自己資金25%自己資金30%
1,000万円150万円200万円250万円300万円
2,000万円300万円400万円500万円600万円
3,000万円450万円600万円750万円900万円

格安以外の中古区分マンションの購入価格は、1,000~3,000万円程度かかる可能性を考慮したほうがよいでしょう。

例えば、自己資金を600万円用意できる人は2,000万円程度の物件までは、購入できる可能性が高くなります。もし3,000万円の物件を購入したい場合は、自己資金を20%程度に抑えることで2,400万円の融資を受けられることが期待できるでしょう。

新築区分マンション

物件価格自己資金15%自己資金20%自己資金25%自己資金30%
4,000万円600万円800万円1,000万円1,200万円
5,000万円750万円1,000万円1,250万円1,500万円
6,000万円900万円1,200万円1,500万円1,800万円

新築区分マンションは、2022年8月時点で価格が高止まりしている状態のため、引き続き購入のハードルが高くなっていく可能性があります。

例えば自己資金を1,000万円用意できる人は、上記のいずれの物件価格例でも購入可能です。しかし、価格が上がるほど自己資金の比率が低くなり、ローン審査のハードルが高くなります。

中古一棟アパート

物件価格自己資金15%自己資金20%自己資金25%自己資金30%
7,000万円1,050万円1,400万円1,750万円2,100万円
8,000万円1,200万円1,600万円2,000万円2,400万円
9,000万円1,350万円1,800万円2,250万円2,700万円

中古一棟アパートは、1億円以下の物件が多数あります。ただし、上記物件価格例の場合は自己資金が1,000万円以下では購入が難しそうです。自己資金を2,000万円用意できればある程度の範囲をカバーできるため、金融機関との交渉余地が広くなります。

新築一棟アパート

物件価格自己資金15%自己資金20%自己資金25%自己資金30%
1億円1,500万円2,000万円2,500万円3,000万円
1億1,000万円1,650万円2,200万円2,750万円3,300万円
1億2,000万円1,800万円2,400万円3,000万円3,600万円

新築一棟アパートになると1億円以上の価格になる可能性があるでしょう。例えば自己資金15%の場合、自己資金が2,000万円以下でも億単位の一棟物件を購入できる可能性があることが分かります。

ただし自己資金が少ないということは、ローン金額が増えるということです。そのため一定以上の年収や資産がない場合、ローン審査に通るのは難しいかもしれません。

中古一棟マンション

物件価格自己資金15%自己資金20%自己資金25%自己資金30%
1億3,000万円1,950万円2,600万円3,250万円3,900万円
1億4,000万円2,100万円2,800万円3,500万円4,200万円
1億5,000万円2,250万円3,000万円3,750万円4,500万円

中古一棟マンションで優良物件を購入しようと思っている場合は、億単位の価格は覚悟が必要です。自己資金を多めにするのが理想ですが、例えば自己資金が3,000万円の場合は自己資金20%までに抑える必要があります。

新築一棟マンション

物件価格自己資金15%自己資金20%自己資金25%自己資金30%
2億円3,000万円4,000万円5,000万円6,000万円
2億5,000万円3,750万円5,000万円6,250万円7,500万円
3億円4,500万円6,000万円7,500万円9,000万円

一棟マンションを新築で購入する場合は、かなりの費用がかかります。優良物件の場合は、最低でも自己資金5,000万円は用意したいところです。ただし一棟マンションを目指す人は、ある程度年収や資産が多いことが予想されるため、自己資金の多寡は金融機関と交渉の余地が大きいと考えられます。

フルローンで購入するメリット・デメリット

上記のシミュレーションは、あくまでも自己資金を用意する場合です。条件によっては、自己資金を入れずにフルローン(自己資金ゼロ)で物件を購入できる場合もあります。フルローンで物件を購入する際の主なメリットやデメリットは、以下の通りです。

フルローンで購入するメリット

フルローンで購入する主なメリットは、2つあります。

・自己資金を使わないため、手元に資金を残せる
運転資金に余裕を持たせることで空室が出た場合もローンの返済が滞ることを避けることができます。

・レバレッジ効果が大きくなる
すべてローンで物件を購入することで、自己資金を入れた場合よりも以下のようにレバレッジの倍率が大きくなります。

物件物件価格頭金諸経費レバレッジ
A5,000万円15%
(750万円)
5%
(250万円)
5倍
5,000万円÷(750万円+250万円)
B5,000万円0%
(フルローン)
5%
(250万円)
20倍
5,000万円÷250万円

フルローンのほうが頭金を入れた場合に比べて4倍(20倍÷5倍)のレバレッジ効果を得られることが分かります。

フルローンで購入するデメリット

フルローンで購入する最大のデメリットは、ローンの返済負担が大きくなることです。上記のシミュレーションでは、ローン額が750万円の差となりますが、毎月の返済額と総返済額を比較すると以下のようになります。

物件物件価格ローン金額金利(※)返済期間毎月の返済額総返済額
A5,000万円4,250万円1.5%35年約13万129円約5,465万4,180円
B5,000万円5,000万円1.5%35年約15万3,093円約6,429万9,060円
※シミュレーション上35年一定と仮定して計算

つまりフルローンのほうが毎月の返済額で2万2,964円、総返済額で964万4,880円多く支払うことになるのです。フルローンは、資金効率が良い半面、1,000万円近く返済額が増えるのが大きなデメリットといえるでしょう。

土地を持っているオーナーなら一棟マンション建築が有利

土地を所有しているオーナーは、新築一棟マンションを購入するよりも所有地を開発して一棟マンション(またはアパート)を建築したほうが有利です。販売されている新築一棟マンションは「土地代+建物代」が価格に反映されますが、土地持ちオーナーが建築する場合は土地購入コストがかかりません。

さらに担保価値が高い土地を所有している場合は、金融機関のローン審査で有利な条件を引き出せることも期待できます。もちろん、自己資金が豊富にあれば土地から購入して開発することも可能です。

土地活用を考えているオーナーは、デベロッパーを兼ねた総合不動産会社に相談したうえで新築一棟マンションの建築を検討してみてはいかがでしょうか。

※本記事で紹介している自己資金のシミュレーションは一例であり、実際のローンにおいては勤務先・年収・資産状況・家族構成など個人の属性によってローンを受けられる金額は異なります。参考程度にお考えください。

(提供:YANUSY

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