5,000万円を運用するなら何に投資する? 注意点やポートフォリオを紹介
(画像=ZUU online編集部作成)

退職金や相続などでまとまったお金を手にする機会に恵まれたり、あるいはコツコツ貯金をしてきた成果が実ったりして資産が5,000万円に達したら、その後はどうすべきでしょうか。2022年から2023年にかけては物価高や円安の影響で、資産運用、特に外国資産への投資の必要性を感じた人も多いのではありませんか。今回は5,000万円程度の資産を持つ人を対象に、運用にあたっての方針や海外資産を含む具体的な商品、そして目標に応じた資産配分の方法などを紹介します。

5,000万円の投資で得られる運用益

運用において、5,000万円の資金はそれだけで大きな優位性を持ちます。例えば、5,000万円を年率3%の利回りで運用できれば、1年間に150万円の利益が得られます。年率3%は、決して非現実的なリターン目標ではありません。

これが資産1,000万円の場合であれば、どうでしょう。1,000万円を元手に150万円の利益を出そうとすれば、年率15%の利回りが必要です。リスクとリターンは比例する関係にあります。15%のリターンを目標にするならば、非常にリスクの高い運用が求められ、当然大きく損をする可能性も高まります。

年率3%であれば、ある程度リスクをコントロールした運用が可能です。つまり、5,000万円の資金があれば、資金1,000万円の投資家が大きなリスクを取って出せる利益を、リスクを抑えた運用で得られる可能性が高くなります。

5,000万円の資金を運用して1億円にするには

野村総合研究所では、富裕層とは「純金融資産が1億円以上5億円未満の世帯」とし、「純金融資産5,000万円以上1億円未満の世帯」は準富裕層と分類しています。準富裕層の人がどのように資産を運用すれば、富裕層と呼ばれる資産額を形成できるのでしょうか。

年利3%で24年運用をする

5,000万円を1億円に増やすための利回りや年数を知るには、「72の法則」が役に立ちます。72の法則とは、資産を運用する際、金利の複利効果によって元本が2倍に増えるまでの投資期間を簡単に計算できる法則です。「72÷年利(%)=お金が2倍になる期間」で算出します。例えば、5,000万円を年利3%で運用する場合、2倍の1億円を達成するには約24年(=72÷3%)の投資期間がかかることになります。

この法則は「72÷お金が2倍になる期間=年利(%)」とも変形可能です。あらかじめ期間を設定して、目標の年利の目安を知るのにも役立ちます。例えば、15年間で資産を2倍にしたい場合、必要となる年利は約4.8%(=72÷15)です。

年利が高ければ、短期間でお金は2倍に増えます。しかし、目標とする年利が高いと、それに伴って資産を減らすリスクも高まります。投資では、リターンが高い商品ほどリスクが高くなることは常識です。従って、目標とする年利は自分のリスク許容度と投資可能期間をよく考えて設定しなければなりません。

適切なポートフォリオを組む

目標とする年利と投資期間が決まったら、次はどの資産に投資するかを選ぶ必要があります。

大切なのは、リスクを分散するためにさまざまな資産を対象とした適切なポートフォリオを組むことです。いざというときのために現金や預金もある程度は必要です。国内資産にだけ投資を集中させてしまえば、日本が不景気になったとき、あるいは円安が進んだときなど資産が減ってしまうかもしれません。

5,000万円を年利5%で運用した場合は約15年後に資産が1億円に増える計算になります。ここで年率5%のリターンが期待できる、株式1銘柄に全資産を投資したいと思う人はいないでしょう。

例えば、年利5%程度での運用を狙うには以下のような資産配分が考えられます

【年利5%程度での運用を狙う際のポートフォリオ】

資産クラス投資金額資産の割合(A)期待リターン(B)(A)×(B)
現金や預金500万円10%0.001%0.0001%
国内債券1,000万円20%0.30%0.06%
米国債券250万円5%3.45%0.1725%
‍国内株式2,000万円40%6.85%2.74%
‍米国株式1,000万円20%10.11%2.022%
‍不動産投資信託250万円5%5.3%0.265%
‍合計5,000万円100%5.26%

この例では、予想できるリターンは年利5.26%です。より高いリターンを狙いたければ、株式や海外資産の比率を高める必要があります。より安全に運用したいのであれば、現預金や債券の比率を高めればよいでしょう。リスク許容度に応じたその他のポートフォリオの例は後述します。

実際に商品を購入する

どの資産をどの程度分散するのかが決まったら、実際に金融商品を購入します。投資信託や国内債券などの一部の金融商品は、銀行でも購入可能です。しかし、商品の豊富さや手数料の安さの点では、証券会社のほうが優れています。従って、資産運用を考えるならば、証券会社に口座を開設するほうがいいでしょう。

IFAという金融商品仲介業者を通じて投資信託なども購入です。IFAとは「独立系ファイナンシャルアドバイザー」と呼ばれます。証券会社や銀行に所属することなく、独立して資産運用のアドバイスを行っている専門家です。

5,000万円から運用を始める際に検討したい商品

分散投資によって、資産運用のリスクを抑えられます。しかし、そもそも投資対象としてどのような金融商品があるのかを知っていなければ、分散投資は難しいでしょう。

ここでは資産が5,000万円を超えて1億円を目指す際に、組み入れることを考えたい金融商品を8つ紹介します。

定期預金

普通預金より少しでもいい利息を、と考えた場合、真っ先に思い浮かぶのは定期預金です。

定期預金の特徴は、あらかじめ満期が決まっている点です。1年定期であれば1年後が満期となります。ゆうちょ銀行の定額貯金など、中には変動金利の定期預金もありますが、基本的には固定金利の商品です。預入時の金利が満期まで続きます。つまり、満期までにお金がいくら増えているのかを、あらかじめ確認できることが定期預金のメリットです。

デメリットは満期前に解約すると、ペナルティとして利率が低くなる点です。ただし、元本割れはせず、普通預金程度の利息はしっかりと受け取れます。お金の引き出しの自由度は、普通預金に比べて若干低くはなります。しかし、自由度を引き換えに少し高い金利がもらえるでしょう。

定期預金は5年以内など、近い将来に使う予定のお金を預けるのに向いています。1年後に使う予定なら1年定期、3年後なら3年定期にするのが適切です。

2023年4月時点では、大手銀行の定期預金の金利はどの期間も0.002%と非常に低金利になっています。

国内債券

定期預金の延長感覚で投資を始めるなら、債券という選択肢があります。一般的に同じ運用期間なら、定期預金より債券のほうがお金は増えます。

債券は、国や企業などが資金を調達するために発行するものです。国が発行するものを国債、企業が発行するものは社債と呼ばれます。

日本国内で最も信用力が高い債券は、日本国債です。個人向け国債は、日本国債を個人でも購入できるようにした商品です。

個人向け国債には、「変動金利型10年満期」「固定金利型5年満期」「固定金利型3年満期」の3種類があります。その中で、おすすめなのは「変動金利型10年満期」です。2023年4月時点で金利は0.30%(税引後0.239%)と、預貯金より若干高くなっています。変動金利なので、ある程度のインフレ対策にもなります。

より信用力の低い債券を購入する場合、発行体が破綻したら元本が保証されないデメリットがある点には注意が必要です。

数は多くありませんが、会社が発行する「社債」を証券会社で購入できることがあります。日本国債より発行体の信用は低いですが、その分一般的に利回りも高くなります。

例えば、2023年4月時点ではSBI証券ソフトバンクグループの劣後債が購入可能です。条件は次の通りです。

【ソフトバングループ 第6回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)】

申し込み期間当初5年固定利率申し込み単位満期償還日期間
2023年4月17日〜4月27日年4.75%(税引前)
年3.785%(税引後)
100万円以上
100万円単位
2058年4月26日35年
出典:SBI証券の公式サイトをもとに筆者作成

外国債券

外国の資産を取り入れる場合、比較的安全なのが外国債券です。外国債券は、外国の政府や企業、世界銀行など国際的な金融機関が発行する債券です。

比較的安全といっても、国内債券の項目で説明した発行体の破綻のほか、為替リスクも加わる分、国内債券に比べればかなりリスクが高くなる点は注意しておきましょう。

外国債券の魅力は、国内の債券よりも高い利回りが得られることと、為替差益が得られる可能性があることです。ただし、基本的には外国債券は高い利回りを得ることを目的にしておくほうがいいでしょう。為替差益を狙うのであれば、FXなど他にも適した金融商品があるからです。

債券を長く保有していれば、その利率で為替変動による損失をカバーできる可能性も高まります。その意味では、外国債券は長期の運用が可能な資産に向いているといえます。

外国債券で最も信用力がある商品は米国債です。米国10年国債の利回りは、2023年4月時点で3.3〜3.6%程度で推移しています。

一部の証券会社では、外貨建ての社債が購入できるところもあります。例えば、SBI証券ではGAFAMの1つであるアップル社の社債が購入可能です。具体的な利回りは、次のようになっています。

【アップル社の社債の利回り】

債券の種類利率(税引前)参考単価利回り(税引前)償還日
利付債2.200%91.033.796%2029年9月11日
利付債1.650%85.533.759%2031年2月8日
利付債2.375%78.204.148%2041年2月8日
出典:SBI証券の公式サイトをもとに筆者作成

不動産投資

不動産投資の魅力は、うまく行けば安定した家賃収入が得られることと、売却するときも大きく資産価値が減る心配が少ないことです。

ただし、不動産は手間やコストがかかる投資商品でもあります。管理自体は管理会社に任せられます。しかし、管理がきちんと行き届いているかなどのチェックや、入居者の募集、空室対策、近隣トラブルなど、現役世代が副業として行うには時間的に難しいかもしれません。

こうした手間をかけることなく、不動産に投資できる商品に「REIT(リート)」があります。これは、投資家から集めたお金で不動産投資を行い、そこから得られる賃料収入や売買益を投資家に配当する金融商品です。「不動産投資信託」とも呼ばれます。

日本国内のREITの全銘柄を対象とした指数に「東証REIT指数」があります。国内REITの代表的な指数です。多くの投資信託やETF(上場投資信託)がベンチマークとして使用しています。いわば、TOPIX(東証株価指数)の不動産バージョンです。

「東証REIT指数」に連動するETFの分配金利回りは、3.30〜3.80%です。同じ国内資産でも、リスクを伴う分債券よりも利回りが高くなっています。

投資信託

投資信託は、投資家から集めたお金を1つの大きな資金として、運用の専門家が株式や債券などに分散投資し、その運用成果を投資家に分配する仕組みを持つ金融商品です。

投資信託には大きく分けて、TOPIXやS&P500といった株価指数などの指標に連動した運用を目指す「インデックスファンド」と、それらの指標を超える運用を目指す「アクティブファンド」に分かれます。

通常、インデックスファンドは目標となる株価指数に採用されているものとほぼ同じ銘柄で構成されるため、プロが構成を考えるアクティブファンドに比べ、信託報酬や手数料が安く設定されています。

実際の運用では、信託報酬や手数料が高い投資信託だからといって、必ずしもより高いリターンを期待できるわけではありません。投資に慣れていない間は、まずはインデックスファンドから検討してみましょう。

株式投資

株式は、株式会社が資金を集めるために発行する有価証券です。企業における資金調達の手段という点では債券と同じです。しかし、債券が「満期が来れば返済する」ことが前提なのに対し、株式は返済の必要がありません。買い手は会社の出資者になって、もうけの一部を配当として受け取ることで利益を得られます。

日本で株式というと日々チャートを見ながら売買を繰り返して利益を狙うイメージがあります。しかし、こうした短期的な売買で利益を出せるのはひと握りです。一般の投資家はむしろ、応援したい企業の株を長期的に保有し、長期的な値上がりを期待するか、配当や株主優待による利益を目指すほうが現実的です。

国内株式と米国株式の代表的な株価指数に「TOPIX」と「S&P500」があります。2つの指数は2013年4月1日から2023年3月31日までの10年間で大きく値を伸ばしています。結果として、この10年の国内株式の市場平均リターンは6.86%、米国株式の市場平均リターンは10.11%と、高い運用成績が期待できるものでした。

【「TOPIX」と「S&P500」の利率】

2013年4月1日始値2023年3月31日終値年平均の利率
TOPIX1031.752003.506.86%
S&P5001,569.184,109.3110.11%
出典:Yahoo!ファイナンスVIP倶楽部およびInvesting.comの公式サイトをもとに筆者作成

ヘッジファンド

ヘッジファンドは、広く一般的に募集されている一般的な投資信託(ファンド)と異なり、機関投資家や一部の富裕層など限られた人のみから資金を集めることが多いファンドです。最低でも1,000万円程度の資金が必要になるとされます。

ヘッジ(hedge)は「避ける」という意味です。一般に投資では、市場が投資家の思惑と異なる動きをした場合、損失が出ることになります。これは、運用の専門家が運用を行っている一般の投資信託でも同様です。

しかし、ヘッジファンドでは先物取引や信用取引など、さまざまな取引手法を駆使することで、市場が上がっても下がっても利益を追求できます。

ヘッジファンドと同じリスクヘッジを一般の人が行うのは、非常に難しいことです。5,000万円の資金がある場合、まとまったお金をヘッジファンドに回すことも有効な選択肢の1つです。

オルタナティブ投資

オルタナティブとは「代替の」「代わりの」という意味です。オルタナティブ投資とは、従来の株式投資や債券などの伝統的資産と呼ばれるものに代わる、新しい投資対象や投資手法のことをいいます。

具体的には、農作物や鉱物、未公開株や先物・オプション、スワップなどの取引が挙げられます。

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5,000万円を運用する際のポートフォリオ

ここからは、5,000万円の資産がある場合にどの資産にどの程度投資するか、具体的なポートフォリオの割合の例を紹介します。自身のリスク許容度と運用期間に応じて参考にしてみてください。

安定的に5,000万円を運用したい場合のポートフォリオ

定期預金15%
国内債券45%
外国債券5%
国内株式、または国内株式投資信託25%
‍外国株式、または外国株式投資信託10%
こんな人におすすめ
  • リタイア後の人
  • リスク許容度が低い人

国内債券の割合が高いですが、この資産では元本が保証され、インフレにも対応できる「個人向け国債の変動金利型10年満期」が最適です。投資信託は、国内株式を対象としたものを中心とします。

バランスを考えて5,000万円を運用したい場合のポートフォリオ

定期預金10%
国内債券20%
外国債券5%
国内株式、または国内株式投資信託40%
‍外国株式、または外国株式投資信託‍20%
不動産投資信託5%
こんな人におすすめ
  • 中年層でまだ収入がある人
  • 資産を増やすことに重きをおいている人

投資信託は国内株式のほか、外国株式を対象としたものを組み入れることで、高い利回りを目指せます。不動産投資は、少額から始められる不動産投資信託を組み入れることを検討します。

積極的に5,000万円を運用したい場合のポートフォリオ

定期預金5%
国内債券10%
国内株式、または国内株式投資信託10%
‍外国株式、または外国株式投資信託‍15%
ヘッジファンド60%
こんな人におすすめ
  • 十分な収入があり、現役で働いている人

資産運用をプロのヘッジファンドに任せることも検討したいです。ヘッジファンドの対象資産を確認しつつ、自分でも投資信託を持つことで分散投資を行います。

5,000万円を運用する際の注意点

5,000万円を運用することで、資産を増やし、インフレリスクなどに対応できます。しかし、投資には資産が減ってしまうリスクが常に存在することを忘れてはいけません。ここでは、実際に運用する際に最低限知っておきたい注意点を紹介します。

リスク許容度に応じた運用を行う

リスク許容度は資産運用で損失を出した場合、どの程度のマイナスであれば、受け入れられるかという度合いです。投資は、自分のリスク許容度に応じた範囲で行うことが非常に重要です。

リスク許容度を決める要因はさまざまあります。年齢が若いほど投資の割合を高くできることは上述しましたが、例えば、家族構成なども大きく影響します。子どもがいて、数年後に大学入学を考えている家庭などは、多額の教育費が必要になることがわかっているため、大きな損失は許容できないでしょう。

現在の資産額や今後予想される収入もリスク許容度に大きく影響するほか、これまでの投資経験も重要な要素です。投資経験が少なければ少ないほど、投資で損失を出す可能性は高くなるため、リスク許容度は小さくなる傾向があります。

個人の性格は、リスク許容度に最も大きな影響を与えます。同じような収入や資産を持ち、環境がほぼ同じでも、多少の損失は受け入れられる人と、少しの損失でもストレスを感じる人などさまざまです。

性格は非常に定量化が難しい項目でもあります。自分はリスク許容度が高いと思っている人でも、実際は少しの損失に過剰に反応することもあります。一例として、資産状況が気になって毎日朝一番に、あるいは仕事中まで損益を確認している状況であれば、自分にとってのリスク許容度を超えた運用をしている可能性が高いでしょう。

分散投資を心がける

分散投資は、投資のリスクを減らす有効な方法の1つです。

投資にはさまざまな種類のリスクが存在します。最もわかりやすいのが、株式の価格が上下する「株価変動リスク」でしょう。その他にも、株式や債券などを発行している国や企業が倒産する「信用リスク(デフォルトリスク)」、金利変動によって外貨建ての資産の価値が上下する「為替変動リスク」など、投資対象の価値が上下する要因は数多くあります。

全てのリスクに対応できる資産は存在しません。安全資産といわれる現預金にしても、将来的に資産が目減りする「インフレリスク」が伴うのは上述した通りです。従って、資産は1つの金融商品に集中させるのではなく、分散して投資するべきです。 分散投資には、大きく「資産の分散」「地域の分散」「時間の分散」という3つの考え方があります。

資産の分散株式や債券、リートなど、異なる特性を持つ資産を組み合わせて投資することです
地域の分散日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ、新興国など複数の地域や通貨を組み合わせて投資することです
時間の分散一度に多額の投資を行うのではなく、複数回に分けて投資を行うことです。特に積立投資のように定期定額で投資を行うことをドル・コスト平均法といい、時間分散の効果が高いとされます
出典:筆者作成

資産運用をする際は、それぞれの分散がバランスよく行えるよう、事前にしっかり考えておく必要があります。

余剰資金以外に手を出さない

5,000万円の金融資産を、全額投資に回したいと思う人はいないでしょう。よく「投資は余剰資金で」といわれます。しかし、余剰資金の割合もそれぞれの家庭によって大きく異なるのが普通です。

余剰資金に含めてはいけないお金として、まずは日々の生活に必要なお金があります。これは、景気の低迷や転職、失職などで収入が減少したときに、日々の生活を支えるお金で、「緊急時資金」ともいわれます。緊急時資金は、月々の生活費の3カ月〜1年分が目安です。月々の生活費が20万円なら、60万〜240万円ほどです。

次に、使う目的が決まっており、その時期も2〜3年以内であるお金は、投資に回さず確保しておいたほうがいいでしょう。具体的には、結婚資金や住宅ローンの頭金、海外旅行費や子どもの教育費などがこの項目に当てはまります。

ただし、目的が決まっていても使う時期がだいぶ先の資金は、運用を考えてもいいかもしれません。例えば、30代で住宅を購入したばかりの家庭が、20年後のリフォーム費用を現金で確保することは不要です。

上記の「緊急時資金」と「目的や時期が決まっているお金」を差し引いたお金は、投資に回してもいいお金といえます。

ただし、もう1つ考えたいのが、「時期は決まっていないが、目的は決まっているお金」です。例えば、子どもの結婚式の援助などは、必要になるのは10年後かもしれません。1年後ということもあります。これらは基本的には投資に回してもいいお金です。しかし、突然必要になるかもしれないため、定期預金やリスクの低い資産で確保するなど、状況に応じた運用が必要になります。

5,000万円を全額貯金することによるリスク

現在、5,000万円の資産を全額預貯金で管理している人も中にはいるかもしれません。預貯金は預けている銀行が倒産しない限り、減ることはありません。減る可能性があるなら増えなくてもいいと考える人にとっては、適切な預け先と思えます。

しかし、安全資産といわれる預貯金にもリスクは存在します。

インフレリスク

最も大きなリスクは、インフレによる資産価値の目減りです。インフレ(インフレーション)とは、物価が継続的に上昇する状態で、このときに相対的にお金の価値は下がることになります。例えば、これまで1万円で買えていたものが、1万5,000円、2万円と値上がりすると、同じ資産でも買えるものは次第に少なくなるでしょう。

日本では日本銀行が2013年に「物価安定の目標」をインフレ率2%と定め、これを早期に実現するとしています。

年率2%で物価が上昇すると、これまで1カ月の生活費が20万円だった家庭が、翌年には20万4,000円、5年後には約22万1,000円かかることになります。5,000万円の資産が増えないままだとすると、1年後の預貯金の価値は現時点における4,902万円相当、10年後には4,102万円相当、30年後には2,760万円相当まで価値が下落してしまうでしょう。

日本の物価は長らくほとんど変化がないか、その変化が非常に緩やかだったため、多くの人はインフレを意識することなく生活をしてきたのではないでしょうか。しかし、コロナ禍やウクライナ戦争などの影響で、2022年に入り急速に物価の上昇は進んでいます。実際、総務省が2022年10月21日に発表した消費者物価指数では、2022年8月と9月の物価上昇率は前年同月比で3.0%でした。身の回りの物やサービスの値段が高くなったと感じている人は多いでしょう。

今後インフレがどこまで続くかは不透明です。しかし、資産運用において、インフレリスクはしっかりと対応しなければならないリスクの1つです。

老後資金の不足リスク

金融資産が5,000万円あっても、老後資金に十分余裕があるかといえばそうではありません。

日本年金機構が発表した年金額によれば、2022年度の夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は、月額21万9,593円でした。一方、生命保険文化センターが行った調査によると、2022年度の夫婦2人で老後生活を送る上で必要な最低日常生活費は月額で平均23万2,000円、ゆとりある老後生活費は平均37万9,000円という結果です。

資産5,000万円というと十分ゆとりある生活ができそうですが、年金が支給されない60歳から65歳までを月々36万1,000円で暮らすと、それだけで2,166万円の資金が必要です。65歳からは上記の年金額が支給されるとしても、月々の収支は毎月14万1,400円程度の赤字なので、17年弱で資産は底をつく計算となります。

上記の資産は物価が変わらないことを前提としているため、インフレを考慮すると状況はより悪くなります。5,000万円の金融資産といっても、決してゆとりのある生活が保証されているわけではありません。

現状で安心せず資産運用を始めよう

5,000万円の資産があったとしても、インフレリスクなどを考えるとゆとりのある老後を送れる保証はありません。将来に備えるためには多少とはいえ、運用を考えるべきです。

現在資産のほとんどを預貯金で保有している人にとっては、急にリスクの高い金融商品で運用することは大きな抵抗があるでしょう。しかし、前述したように日本では物価安定の目標をインフレ率2%に定めています。従って、当面は目標を2%として資産運用を始めてみてください。日本が目標とするインフレ率に達した場合、これは資産を目減りさせない最低ラインの運用です。

いきなり資産運用を始めるのが難しければ、FP(ファイナンシャル・プランナー)やIFAなどといったお金の専門家に相談するのも1つの選択肢です。 ZUU onlineでは、資産運用や管理に不安がある人のため、完全無料で資産アドバイザーの紹介を行っています。複数の専門家を比較検討できるので、一度話を聞いてみてはいかがでしょうか?

5,000万円の運用に関するQ&A

Q.5,000万円を投資した場合の運用益は?

A.例えば年利3%で運用した場合、毎年150万円の利益が得られます。5,000万円の資産があれば、ある程度リスクをコントロールした上でまとまったリターンを得ることが可能です。

Q.5,000万円を運用して1億円にするにはどのくらいの期間がかかる?

A.72の法則を用いることで概算できます。ある金額を複利運用して元本が2倍になるまでの年数はおよそ「72÷年率(%)」で、5,000万円を年利3%で運用すると約24年で1億円になリマス。10年で倍にしたい場合、年利7.2%で複利運用する必要があります。

Q.5,000万円を運用するならどの程度を現預金で保有すべきか?

A.一概には言えないですが、一般的には「年齢と同程度の割合」が目安とされます。たとえば20代なら資産の20%、50代なら50%を預貯金として保有します。もっともアメリカなどでは現預金の比率がさらに低いです。

Q.5,000万円を運用する際の注意点は?

A.家族構成や性格なども考慮したリスク許容度に応じて運用を行うこと、投資先の商品/地域/時間を分けた分散投資を心がけること、いざというときの生活費や数年後必要になるお金など、余剰資金でないお金に手をつけないことが重要です。

Q.5,000万円を運用する際におすすめの商品は?

A.定期預金や債権、投資信託などが選択肢になります。安定運用を重視するなら投資信託や国内債権の比率を高め、リスクを取るならヘッジファンドを利用するなど個々人の状況に合わせて判断しましょう。

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松岡 紀史
松岡 紀史
この記事の執筆者

日本FP協会認定AFP。筑波大学大学院経営・政策科学研究科(現システム情報工学研究科)でファイナンスを学ぶ。元システムエンジニア。節約や貯金など地道な作業の大切さと、「投資だけ」「保険だけ」に偏ることのないバランスの取れた資産運用を広めるため、執筆・セミナー・個別相談などを行っている。ライツワードFP事務所代表。
■保有資格
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