この記事は2022年11月29日に「CAR and DRIVER」で公開された「新型レクサスRXが市場デビュー。次世代レクサスの目指す走りやデザインを徹底追求」を一部編集し、転載したものです。
レクサスが第5世代となるラグジュアリーSUVの新型RXを発売。独自性を追求した次世代レクサスデザインや走りの楽しさを最大化させるコクピットの採用、新開発ハイブリットシステム「2.4L-T HEV」や「2.5L PHEV E-Four」の設定などを実施して、グローバルコアモデルとしてのさらなる進化を果たす
トヨタ自動車が展開する高級車ブランドのレクサスは2022年11月18日、ラグジュアリーSUVの新型RXを発売した。
車種展開は以下の通り。
RX500h“F SPORT Performance”(AWD):900万円
RX450h+“version L”(AWD):871万円
RX350“version L”(2WD):664万円
RX350“version L”(AWD):705万円
RX350“F SPORT”(AWD):706万円
今回の全面改良で第5世代に移行する新型RXは、クルマの素性を徹底的に鍛え上げたレクサスならではの乗り味の進化、走る楽しさを追求したパフォーマンスモデルのRX500h“F SPORT Performance”の設定、多様化するユーザーニーズに寄り添った多彩なパワートレインのラインアップ、機能的本質や動的性能に根ざしたプロポーションと独自性の追求、人間中心の考え方に基づいた最新の予防安全機能の採用などを実施して、グローバルコアモデルとしてのさらなる発展を果たしたことが特徴である。
まずはエクステリアデザインから見ていこう。
基本プロポーションは、ホイールベースの延長や低重心化、前後トレッドの拡幅などによるスタンスの良さをベースに、踏ん張り感のある力強いスタイルを創出。さらに、フロントマスクはスピンドルグリルに代えて「スピンドルボディ」という、ボディとグリルを融合させたシームレスな塊感のある新デザインを採用する。
ボディ色をLマーク下端まで下げ、グリルのグラデーションによる数理的な美しさを表現したことも特徴だ。一方、Fスポーツはグリルをブラック基調でアレンジし、精悍かつスポーティな顔つきを演出している。
サイドビューではフード先端を上げ、合わせてバックウィンドウ下端を下げることで、水平的で低重心な姿勢を実現。また、全長とフロントオーバーハングをキープしながらAピラー付け根を後ろに下げることで、フードの伸びやかさを強調するとともに、キャビンの重心がリアに乗っているようなスタンスを演出する。リアドアからリアフェンダーに向かって力強く張り出す面構成、より立体的に進化させたフローティングタイプのクォーターピラーなども、サイドの造形の美点だ。
そしてリアセクションでは、横方向に抜けたシンプルな構成とすることで、力強い低重心の構えを具現化。また、コンビネーションランプにはLシェイプ一文字シグネチャーランプを配し、そのうえでレンズをボディサイドに回り込ませることで、ワイドかつ安定感のある後ろ姿を形成した。
空力特性も最大限に重視する。フロントまわりの整流効果を高めるなどして、空気抵抗係数の低減を図るとともにブレーキの冷却性能をアップ。また、エンジンアンダーカバーにはディンプルを設け、微小渦を床下に発生させることで接地性を引き上げた。
さらに、ドア意匠面からガラス面までの段差を最小化し、合わせてリアスポイラーの後端形状と門型スポイラーの形状を見直して、流れる空気の乱流抑制を実現した。
ボディサイズは全長が従来と同寸の4,890mm、全幅が従来比で25mm幅広い1,920mm、全高が同5~10mm低い1,700~1,705mm、ホイールベースが60mm長い2,850mmに設定。
ボディカラーは新たな金属質感表現を追求したソニックカッパーを新設定したほか、ソニックイリジウムやソニッククォーツ、ソニックチタニウム、ソニッククロム、グラファイトブラックガラスフレーク、レッドマイカクリスタルシャイン、テレーンカーキマイカメタリック、ディープブルーマイカ、ホワイトノーヴァガラスフレーク、ヒートブルーコントラストレイヤリング(Fスポーツ専用色)という計11色をラインアップした。
内包するインテリアは、人間中心の思想をさらに進化させた新コクピットデザインの「Tazuna Concept」に基づいて造形を手がける。人が馬を操る際に使う“手綱”に着想を得て、ステアリングスイッチとヘッドアップディスプレイを高度に連携させ、視線移動や煩雑なスイッチ操作をすることなく、運転に集中しながらナビゲーションやオーディオ、各種機能の制御が可能なコクピットを演出。
また、センターディスプレイには大型の14インチタッチディスプレイを配して多くの機能をディスプレイ内のソフトスイッチに集約し、合わせてスイッチの形やサイズ、レイアウト、表示情報など細部にまでこだわり、各機能の使用頻度も考慮しながら直感的に操作できる最適な配置とデザインを追求する。
さらに、水平的な広がりを感じさせるインストルメントパネルや、メーターフードからドアトリムまで大らかにつながる造形によって、開放的な空間の広がりと乗員全員が包み込まれるキャビンを創出。加えて、14色のテーマカラーと好みに合わせて選べる50色のカスタムカラーが設定可能なマルチカラーイルミネーションにより、夜間でも広がりと包まれ感のある空間を具現化した。
ゆとりのあるキャビンルームづくりを目指したことも特徴で、前席はAピラーおよびルーフ前端を後方に配し、合わせて左右カップルディスタンスを従来型比で20mm拡大して、開放感のある空間を実現。
また、前後カップルディスタンスは従来型と同様の980mmながら、フロントシートバックの薄型化による後席乗員の膝前の空間拡大と、37度までリクライニング可能なシートバックによって、よりゆとりのあるスペースを創出する。加えて、version Lでは助手席シートに配した肩口スイッチを使って運転席や後席より助手席の位置を移動させることで、スペースをより広く快適に利用できるようアレンジした。
低床化に加えて乗り降りのしやすいスカッフやセンターピラーカバーの形状を採用し、さらに運転席からの降車時に前後方向のスライドアウェイに加えて、上下方向のリフターアウェイを追加したこともアピールポイントである。
機能面では、フロント左右と後席の車室内温度をそれぞれ独立して自動的にコントロールするトリプルゾーン独立温度コントロール制御を全車に標準装備。
また、前席に輻射熱ヒーター、後席にシートヒーターを加えた空調シートをオプションで用意する。さらに、センターコンソール前方には収納スペースやおくだけ充電トレイなどを配したほか、インストルメントパネルに充電用USBコネクタ(Type-C)を3個設定するとともに、通信用USBコネクタ(Type-A)を1個設定。センターコンソール後部にもUSBコネクタ(Type-C)を2個配備した。
直感的な使いやすさを追求した最新のマルチメディアシステムを組み込んだことも、新型RXの訴求点。各種メニューの選択スイッチを運転席側に常時アイコンで表示することで優れたアクセス性を実現するとともに、画面全体のレイアウトも情報の粒度に応じて表示エリアを分け、ナビや音楽、車両設定などの操作フローを統一して使いやすさを向上させる。
また、クラウド上の地図情報を活用し、交通情報や駐車場の空き情報をリアルタイムで取得するコネクティッドナビを配備。さらに、最新の音声認識機能はステアリングのトークスイッチ操作による起動に加えて、ディスプレイのマイクアイコン操作や音声による起動を可能とした。
ほかにも、iPhoneやAndroidデバイスの専用機能を車載機ディスプレイにて使用するApple CarPlay/Android Autoや、従来の車両設定(ドライビングポジション、イルミネーションなど)に加えてナビやオーディオなどのマルチメディアの設定にも対応したマイセッティング機能、大容量のサブウーファーボックスを含む12個のスピーカーで構成するレクサスプレミアムサウンドシステム、安心と快適さを向上させたG-Linkなどを採用している。
内装カラーは品格のあるムードを演出する新規開発色のダークセピアをはじめ、ソリスホワイト、ブラック、Fスポーツ専用のブラック、Fスポーツ専用のダークローズという計5タイプを用意。また、インパネやコンソールなどに配する加飾パネルとして、新規開発のミディアムブラウンバンブーのほか、墨ブラックのアッシュやダークスピンアルミを設定した。
ラゲッジスペースについては、バックドアトリムの薄型化などにより荷室長を従来型比で50mm拡大し、612リットルの容量を実現。一般的な77/63リットルのスーツケースを各2個ずつの計4個、または9.5インチのゴルフバック4個を収納可能とする。また、荷室の床面を30mm下げることで荷物の積み下ろし時の負担を軽減するとともに、ワンタッチトノカバーを採用するなどして、利便性を向上させた。
パワートレインはカーボンニュートラルへの貢献を果たしたうえで、多様なユーザーニーズに対応する目的で計4機種を設定する。
まずは、新グレードのRX500h“F SPORT Performance”に搭載する新HEVの2.4L-T HEV DIRECT4(T24A-FTS型エンジン+パラレルハイブリッド+eAxle)。フロントにT24A-FTS型2393cc直列4気筒DOHC・D-4STインタークーラー付ターボエンジン(最高出力275ps/6,000rpm、最大トルク46.9kg・m/2,000~3,000rpm)と1ZM型フロントモーター(最高出力64kW/最大トルク292Nm)、Direct Shift 6AT(6速AT)を配し、リアには1YM型モーター(最高出力76kW/最大トルク169Nm)のeAxleを搭載。
駆動用バッテリーには総電圧288Vのバイポーラ型ニッケル水素電池を採用する。高効率かつレスポンスのいい動力性能を発揮するために、エンジンとモーターの間にクラッチを組み込み、合わせて6速ATにはトルクコンバータではなくクラッチを組み合わせてモーターとトランスミッションの間に配置。状況に応じてエンジンとモーターの使い分けや統合ができる機構を導入した。
Active Noise Control/Active Sound Controlを装備して、4気筒ターボ特有のノイズを除去しつつ、エンジンおよびモーターの力強さと伸び感をサウンドで演出したこともトピック。さらに、DIRECT4は車輪速センサー、加速度センサー、舵角センサーなどからの情報を用いて、前後輪の駆動力を100:0~20:80の範囲で最適配分する仕組みとした。
一方でRX500h“F SPORT Performance”は制動性能の強化も図り、フロントブレーキには対向6ピストンキャリパーを採用。また、後輪操舵角を拡大したDynamic Rear Steering(DRS)や専用開発の8J×21アルミホイール(マットブラック塗装)+235/50R21 101Wタイヤなども装備する。さらに、外装にはより低重心に見せるボディ同色ロアパーツや、精悍さを引き上げるブラックステンレスのウィンドウモールなどを組み込んだ。
次にRX450h+に搭載する2.5L PHEV E-Four(A25A-FXS型エンジン+シリーズパラレル プラグインハイブリッド+リアモーター)。システムは高効率のA25A-FXS型2,487cc直列4気筒DOHC・D-4Sエンジン(最高出力185ps/6,000rpm、最大トルク23.2kg・m/3,600~3,700rpm)、5NM型フロントモーター(最高出力134kW/最大トルク270Nm)、4NM型リアモーター(最高出力40kW/最大トルク121Nm)、総電力量18.1kWhのリチウムイオン電池で構成し、クラストップレベルのEV走行換算距離(WLTCモード)83kmと燃料消費率(WLTCモード)18.8km/リットルを達成する。
また、走行モードはEVモード/AUTO EV・HVモード/HVモード/セルフチャージモードの4パターンから選択可能。AUTO EV・HVモード選択時には「先読みエコドライブ」の制御により、ナビで目的地を設定することで駆動用電池の残量や道路の特性などに応じて自動的にEV走行とHV走行が切り替わる。
一方、駆動機構にはモーター駆動のAWDシステム「E-Four」を採用。前後輪の駆動力は、100:0~20:80の範囲で最適に配分する。大容量リチウムイオンバッテリーを床下に配置して低重心化を図り、安定した質感のある走りを成し遂げたことも、走行面の特徴だ。
そして、RX350に搭載する2.4L-T AWD(T24A-FTS型エンジン+Direct Shift-8AT+電子制御フルタイムAWD)と、2.4L-T FF(T24A-FTS型エンジン+Direct Shift-8AT)。T24A-FTS型2393cc直列4気筒DOHC・D-4STインタークーラー付ターボエンジン(最高出力279ps/6,000rpm、最大トルク43.8kg・m/1,700~3,600rpm)はTNGAの高速燃焼システムに加えて、センター直噴システムやターボと触媒の近接配置などにより、排気および燃費の改善を実施。
また、Direct Shift-8AT(8速AT)には低回転域から高トルクを発生する過給エンジンの特性に合わせた変速制御技術を採用する。さらに、Active Noise Control/Active Sound Controlを装備して、4気筒ターボ特有のノイズを除去しつつ、レクサスらしい調和のとれたエンジンサウンドを発生。
一方、AWDにはリアデファレンシャルに電子制御カップリング(湿式クラッチ)を配し、前後輪の駆動力を75:25~50:50の範囲で最適に配分する仕組みとした。
基本骨格に関しては、軽量化と低床化により重心高を従来型比で15mm下げた改良版のGA-Kプラットフォームを採用。懸架機構はフロントにセッティングを見直したマクファーソンストラット式を、リアに新開発のマルチリンク式を配し、ショックアブソーバーには極低速域からの減衰力を確保したスウィングバルブを内蔵する。また、Fスポーツには減衰力切り替え応答に優れたリニアソレノイド式AVSを装備した。
組み合わせるボディは、高剛性化と軽量化を高次元で両立する。新開発のリアサスの採用に即してリア部分の骨格配置を見直すとともに、着力点剛性をアップ。また、骨格の接合においてはレーザースクリューウェルディング(LSW)や構造用接着剤に加え、短いピッチでの溶接を可能とする短ピッチ打点技術を導入する。
さらに、ステアリングサポートの材質には高剛性のアルミダイキャストを採用。そして、主要骨格部材の最適な材料置換やフロントフェンダーのアルミ化、2GPa級ホットスタンプ材のBピラーを採用するなどして、車両重量を従来型比で90kgほど軽く仕上げた。
静粛性の向上に重きを置いたことも見逃せない。先にデビューしたNXに続き、ドアのシール性を向上させるオープニングウェザーストリップやフロント/リアドアガラスラン形状の採用や、エンジンフードの振動を抑えるツインロック構造、高遮音タイプのフロントガラスなどを導入。
また、ボディ剛性のアップによる振動抑制に加えて、吸音材の最適配置や減衰力の高い接着剤および制振材の適所配置を実施し、路面や周辺環境の変化に強く特定の音が目立たない、バランスの取れた静粛性を具現化した。
先進安全運転支援システムに関しては、最新のLexus Safety System+を採用する。プロアクティブドライビングアシスト(PDA)には、信号交差点に対する右左折時の減速支援や車線内走行時の常時支援を追加。また、ドライバーモニターと連動した機能の拡充を図った。
さらに、レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)は起動後に音声認識で車間距離と速度の変更が可能な仕組みを配備する。前後方ドライブレコーダーや周辺車両接近時サポート(録画機能・通報提案機能)、後方車両への接近警報、セカンダリーコリジョンブレーキ(停車中後突対応)などを装備したこともトピックだ。
一方、快適な移動を支えるLexus Teammateには、自動車専用道路で0~約40km/h走行時にドライバーの疲労軽減を図るアドバンストドライブ(渋滞時支援)や、スマートフォンによる車外からのリモート操作も可能な駐車支援システムのアドバンストパークなどを設定。ほかにも、常に最新のソフトウェアに更新可能なOTA(Over The Air)アップデートや、スイッチによるドアの電子制御アンラッチ機構のe-ラッチシステム、専用のアプリをスマートフォンにインストールして使用できるデジタルキーなどを採用している。
なお、従来型でラインアップしていた3列式シート/7名乗り仕様のLモデルは現在のところ未設定だが、今後別展開のモデルとして設定される見込みである。
(提供:CAR and DRIVER)