この記事は2022年12月9日に「CAR and DRIVER」で公開された「【旬ネタ】2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー獲得の日産サクラ/三菱eKクロスEVは、どんなクルマ?」を一部編集し、転載したものです。
本誌執筆の評論家たちは日産サクラ/三菱eKクロスEVの評価
2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄冠に輝いた日産サクラ/三菱eKクロスEVの特徴を、カー・アンド・ドライバーで健筆を振るうモータージャーナリストは、どう評価していたか。
岡本幸一郎さんは、日産サクラについて次のようにまとめている。「わずか180kmの航続距離で大丈夫か?」という声をよそに、サクラが売れ行き絶好調だ」で始まるレポート(2022年12月号掲載)を抜粋で紹介しよう。
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航続距離が180kmと短くても、それが軽自動車なら大丈夫という物事を合理的に考えられる人や、いち早くBEVに乗ってみたいという人がそれだけ大勢いたということだろう。
サクラは日産EVのエントリーモデルであり、軽自動車のフラッグシップに位置づけられる。プラットフォームを含め、諸々はデイズと共通性が高いものの、内外装は別物。新鮮な印象を与える。ディテールまで作り込まれたボディパネル造形や、一文字のテールランプなどは、軽自動車らしからぬ雰囲気をかもしだしている。
モータースペックは64ps/195Nm。ドライブしてまず感じるのは、非常に乗りやすいことだ。俊敏で力強い加速と、静かでなめらかな走りは、660ccのターボとは一線を画する。最大トルクは軽ターボの倍近い。おかげで流れに乗せるのもラクだ。
エコモードでも、モーター駆動の強みでストレスを感じることはないが、市街地は車速をよりコントロールしやすいノーマルモードが適する。スポーツモードはよりキビキビとした走り味を楽しめる。
ハンドリングはスッキリとしていて気持ちがよい。BEVの強みで重心が低いおかげで安定感を感じる。トレッドに制約のある軽自動車では、これはありがたい。動力性能面でも運動性能面でも、軽自動車とBEVは相性がよいものだとつくづく思った。
乗り心地は前席については良好。後席は足回りのストロークが短い影響で、硬さを少し感じる。サスペンションの共通性が高いデイズ4WDで感じたのと同様だ、ただし、サクラはブッシュの容量を増やすなど手当てされたことが効いて、いくぶん突き上げは軽減された。取り回し性は抜群。街中では最小回転半径わずか4.8mと小回りがきく。
充電については、バッテリー容量が小さいからこそのメリットを感じる。短時間の充電でSOC(バッテリー充電率)がみるみる上がっていくのはサクラならでは。しかもSOCが高くなっても充電電力の落ち込みは小さい。リーフにはないバッテリー冷却システムを採用したのは、やはりそれだけ効果があり有益だと判断されたからに違いない。
サクラは、乗ってみたいと感じさせ、実際にドライブすると、「いいな!」と思うBEVである。
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三菱eKクロスEVは、竹岡圭さんの連載「人気のK&コンパクトカー、ヒットの真相」の2023年1月号で取り上げた。
「三菱自動車(以下、三菱)がEVに取り組み始めたのは1966年のこと」と、三菱のEVヒストリーからレポートを始めている。1964年の東京オリンピックよりは後だが、1970年の大阪万博よりも前にEV開発に着手していたのである。
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三菱自動車(以下、三菱)がEVに取り組み始めたのは1966年のこと。1969年末、軽ガソリン車のミニカバンをベースに仕立てた電気自動車から始まった。
最高速度80km/h、航続距離 70km(30km/h定速走行時)。パワフルさが高く評価され、東京電力に10台が納入されたそうで、つまり、三菱のEVの歴史は50年以上にも及ぶのだ。
近年もそう。2009年に軽自動車、iをベースとし、リチウムイオン電池を搭載した量産型EVとしたi-MiEV(アイミーブ)を、世界に先駆けて発売している。
つまり三菱にとっては、軽自動車のEVや蓄電池としてEVを使う考え方はいまに始まったことではない。すでにガソリン車iの電気自動車としてi-MiEVがあり、今回はガソリン車eKクロスの電気自動車としてeKクロスEVがある、といった感じなのだ。
結論からいってしまうと、eKクロスEVはとてもバランスよく仕上がっている。軽自動車のネガティブポイントが、電動化されることによって見事に消し去られているのがうれしい。
軽自動車は全幅が限られており、最近のセミトール~スーパーハイト系のものとなると、ディメンション的にどっしり感を出すのが難しくなる。それが、バッテリーを低い位置に搭載したことで、重心高がグッと下がり途端に走りの安定感が増すのだ。乗り心地的にも、軽自動車特有のヒョコヒョコした感じはなく、上質感さえ感じるほどである。
さらにACCとのマッチングもいい。どんな速度域からも、いきなりフルトルクを出せるモーターの力強さで、前走車に遅れることなくついて行ってくれる。ガソリン車で感じていたストレスが、見事に払拭されてしまうのだ。
航続距離は、WLTCモードで180km走る。自宅や職場で充電し、毎朝燃料満タンでお出かけすると考えれば、一般的な軽自動車としての使い方ならば十分だ。
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軽自動車規格の範囲内でボディサイズを収める必要があるサクラ/eKクロスEVの場合、長距離を走るための大型バッテリーを搭載するのは難しい。限りあるボディサイズの中で、重量と容積、航続距離をバランスさせた結果が、「軽自動車として日常的に使う分には不自由しない」電気自動車が完成した。
電気自動車ならではのトルク特性や、動力系の制御などがプラスに作用してクルマとしての完成度が高く、ユーザーの満足度も高い1台に仕上がったといえる。そうした総合バランスのよさが、日本カー・オブ・ザ・イヤー本賞獲得につながったのである。
日産サクラ 主要諸元
グレード=サクラG
価格=294万300円
全長×全幅×全高=3,395×1,475×1,655mm
ホイールベース=2,495mm
トレッド=前1,300/後1,295mm
車重=1,080kg
モーター型式=MM48(交流同期電動機)
モーター定格出力=20kW
モーター最大出力=47kW(64ps)/2,302-10,455rpm
モーター最大トルク=195Nm/0-2,302rpm
一充電走行距離(WLTCモード)180km
交流電力量消費率(WLTCモード)=124Wh/km
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池
駆動用バッテリー総電力量=20kWh
サスペンション=前ストラット/後3リンク
ブレーキ=前ベンチレーテッドディスク/後ドラム
タイヤ&ホイール=155/65R14+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=4名
最小回転半径=4.8m
装着メーカーオプション:プロパイロットパーキング 5万5,000円/プレミアムインテリアパッケージ4万4,000円/165/55R15タイヤ+15inアルミ2万2,000円/充電ケーブル(コントロールボックス付き100V・7.5m)5万5,000円/LEDフォグランプ+ホットプラスパッケージ8万3,600円
2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー最終選考会・表彰式の様子
(提供:CAR and DRIVER)