不動産クラウドファンディングが広がることで、不動産投資が個人投資家に身近な存在になりました。しかし、その変化はまだはじまったばかり。数多くの不動産クラウドファンディング事業に深く関わる松井晴彦さん(グローシップ・パートナーズ株式会社 代表取締役)に伺うと、今後、私たちの常識を覆すような変化が待っているようです。
【松井晴彦さんプロフィール】
斬新なビジネスモデルをITで実現化するコンサルティングファームである、グローシップ・パートナーズ株式会社の代表取締役。同社はこれまで約30の不動産クラウドファンディングの立ち上げ・運営を支援。Webサイトやシステムの構築も行う。松井さんご自身は、アンダーセン・コンサルティング(現:アクセンチュア)でコンサルティングに従事した後、2社の代表取締役を歴任して現職。30年以上のコンサル経験を持つ。
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日本人の個人投資家は不動産が好きということを実感した
-ここまで (インタビュー前編)ネガティブな観点で不動産クラウドファンディングについて伺ってきました。ここから先は、可能性や未来の展望についてお聞きしたいと思います。
松井社長が代表取締役を務めているグローシップ・パートナーズは不動産クラウドクラウドファンディングの事業者支援をしていますが、事業者からの問い合わせが増え始めたタイミングはいつくらいですか。
そもそも不動産クラウドファンディング自体は、2017年12月に「不動産特定共同事業法」が改正され電子商取引、つまりインターネットで個人投資家が投資できるようになったことで始まりました。翌2018年から徐々に事業者から弊社へのお問い合わせが増え続け、市場としても発展していきました。
-グローシップ・パートナーズの設立が2016年ですから、会社の発展と市場の発展がリンクしている面もあるのですね。そもそも松井社長自体が不動産クラウドファンディングの可能性を感じたのはいつくらいですか。
私たちは数多くの不動産クラウドファンディングの事業者支援をしてきましたが、この市場を専門とする企業ではありません。もともと私たちがテーマにしているのは、「資金が必要な人や事業者」と「投資する側」を直接つなぐ市場をITで実現しようということです。
別の表現をすると、「金融機関の介在を飛ばしましょう」「ディスラプション(既存概念を壊す革新)の世界を実現しましょう」そのために私たちが存在するとなるでしょうか。
グローシップ・パートナーズを立ち上げようとしていた2016年頃は、フィンテックやピア・ツー・ピアに関わる新しい市場が次々に生まれているタイミングでした。今後の大きな潮流はさらにこの流れが強まるのは間違いない、だからこの分野を専門にやっていくのがいいと考えたんですね。
この大きな経営計画に沿った具体的な事業のひとつが不動産クラウドファンディング支援だったというわけです。
-個人投資家は実感しにくいかもしれませんが、不動産クラウドファンディングというのは、これまでの資金の流れの概念を壊すような、すごい仕組みなんですね。
さきほどお話ししたように私自身、「資金が必要な人や事業者」と「投資する側」が直接つながる大きな流れが間違いなくくるとイメージしていました。それが、不動産クラウドファンディングが人気を集め、ファンドの募集開始直後に目標金額に達したというような状況を見ることで確信できました。
ただ、不動産クラウドファンディングが、ここまで個人投資家に支持されていることには正直驚いています。日本人の個人投資家は本当に不動産が好きなんだなということを実感しましたね。それと合わせて、不動産事業者も「これは面白いな」と思えばすぐに実行するマインドを持っていることもよくわかりましたね。
不動産クラウドファンディング市場が流動性を持てるかが今後の鍵
-不動産クラウドファンディングの始まりから発展まで深く関わってきた松井社長から見ると、これから先の不動産クラウドファンディング市場はどのように発展していきそうですか。
これまでの不動産クラウドファンディングは、「数多くの個人投資家との接点を持ちたい」という事業者の考えで発展してきた面があります。しかし、最近では一般の金融機関での融資は難しい、でも内容的には面白い、社会的に意義があるというような物件の資金を集める手段として利用されはじめています。
-不動産クラウドファンディングの本来の目的として、利用されることが多くなってきたわけですね。
この部分について分かりやすくいうと、たとえばリノベーション物件は築年数が経っているため、法定耐用年数を重視して融資をする一般の金融機関から融資を受けるのが難しい面もあります。しかし、不動産クラウドファンディングの仕組みを使えば、スムーズに資金を集めやすくなるわけです。
-不動産クラウドファンディングが広がっていけば、国内の中古不動産の価値や概念が大きく変わりそうですね。さらに5年後、10年後の不動産クラウドファンディングの中長期的なイメージはいかがでしょうか。
そうですね。たとえば、現在の不動産クラウドファンディングは、事業者と個人投資家が直接つながる仕組みです。そこには、ファンドの流動性がない。未来の不動産クラウドファンディングは、さらに、個人投資家同士がつながる、ファンドの流動性のある仕組みになっている可能性もあります。
-イメージでいうと、上場株式のように流通する仕組みですね。
ただ、上場株式のような仕組みで流動性を実現しようとすると、金融商品取引法に該当してしまいます。新しい概念、たとえばトークン化などを絡めながらで構築していく必要があるでしょう。
全員がエンジニア、全員がコンサルの組織で変革を進める
-もちろん、数多くの不動産クラウドファンディングの支援をしてきたグローシップ・パートナーズが、先ほどお話しされたような新しい仕組みに深く関わっていくということだと思いますが……御社はどのような人材で構成される会社なんでしょうか。
グローシップ・パートナーズはITをテーマにしたコンサルティングファームということで 「御社のエンジニアとコンサルの比率はどれくらいですか」という質問を外部の方から受けることもありますが、弊社の社員はエンジニアとコンサルどちらも行うことを前提に教育しています。
つまり、全員がエンジニアであり、全員がコンサルでもあるのです。
-日本の今までの会社の常識を覆すような考え方ですね。
私たちが行っている新規事業の立ち上げ・運用は、いかにスピーディーに修正していけるかが重要な仕事です。エンジニアとコンサルを区分けした組織ではこれを実現することはできません。
社員一人ひとりが高いレベルの経営・ビジネス・法律などの知識、そしてITの経験を両立して、PDCAを回すことではじめてプロジェクトが成就できます。弊社では、このような人材像を「フルスタック・コンサルタント」と呼んでいます。
-これまでの組織の常識にとらわれないフルスタック・コンサルタントの集団が、新たな不動産クラウドファンディング市場リードすることを期待しています。本日はありがとうございました。
(提供:YANUSY)
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