企業経営において、法人税の支払いは毎年大きな課題である。税金を支払うこと自体は黒字経営の証(あかし)でもあり、本来は良いことだ。しかし、できることなら少しでも納税額を少なくしたいというのが経営者の本音だろう。そこで本記事では、法人税節税における2つの方向性や、具体的な節税の裏ワザおよび注意点を詳しく解説する。

法人税節税における2つの方向性

節税に役立つ法人税対策の裏ワザ10選と注意点を詳細解説
(画像=Pcess609/stock.adobe.com)

法人税の節税は2つの方向性で考える必要がある。法人税に用意されている控除制度を利用する方法と、損金計上を増やす方法である。

控除制度を利用する

税額控除とは、本来納めるべき法人税から、税法上定められた控除額を差し引くことができる制度である。主な控除制度は、恒久的な制度である「所得税額控除」「外国税額控除」と、臨時的な制度である「租税特別措置法で臨時的に設ける税額控除」に大別できる。

・主な控除制度(1):所得税額控除
国税庁は所得税額控除について、「法人が支払を受ける利子等、配当等、給付補てん金、賞金などについて、所得税法、租税特別措置法または復興財源確保の規定により源泉徴収される所得税および復興特別所得税の額は、法人税の額から控除することができる」と規定している。

出典:国税庁ホームページ№5760「所得税額控除」

法人が受け取る配当金等からは、あらかじめ20.42%(上場株式等の場合は20.315%)の所得税+復興特別所得税が源泉徴収されている。たとえば、法人税1,000万円の会社が100万円の配当金を得た場合、配当金から源泉徴収された20万4,200円(税率20.42%の場合)を法人税から差し引くことができる。したがって、納税額は979万5,800円となる。

・主な控除制度(2):外国税額控除
外国税額控除は、日本と外国の双方で二重に所得税が課税される二重課税を調整するために、一定額を所得税の額から差し引くことができる制度である。国内・国外の所得はすべて日本で課税されるため、何も手続きをしなければ外国所得に関する所得税は日本と外国で二度支払われることになる。外国税額控除を利用することによって、国外で支払った外国所得税額が限度額以下であれば、全額が税額控除の対象となる。

所得税の控除限度額を上回る場合は、所得税の控除限度額と次の(1)(2)のいずれか少ないほうの金額が外国税額控除となる。

(1)控除対象外国所得税の額から所得税の控除限度額を差し引いた金額
(2)次の算式により計算した復興特別所得税の控除限度額

復興特別所得税の控除限度額=その年分の復興特別所得税額×(その年分の国外所得金額/その年分の所得総額)

出典:国税庁ホームページ№1240「外国税額控除」

・主な控除制度(3):租税特別措置法で臨時に設ける税額控除
国がその時々に行う政策目的のため、租税特別措置法によって臨時的に税額控除を設ける場合がある。一例として、「中小企業経営強化税制」「中小企業投資促進税制」「試験研究費の特別控除」などが挙げられる。

租税特別措置は、基本税法を改定することなく、特別法によって基本税法の一部を例外的に変更する措置だ。個人が利用している住宅ローン減税やマイカー減税なども租税特別措置の1つである。法人にもさまざまな租税特別措置があるので、自社に適用できるものがあれば節税になる。

損金計上を増やす

節税におけるもう1つの方向性が、損金計上を増やすことである。代表的な損金として「貸倒損失」と「貸倒引当金」がある。両者は密接に関連しているので内容を整理しておこう。

・代表的な損金(1):貸倒損失
取引先の経営状況によっては、売掛金や受取手形などの債権を回収できない場合や、回収が滞っている場合があるだろう。その場合、債権の一部または全部を貸倒損失として処理することができる。また、取引先が破産手続きや民事再生を行った場合、債権の一部が切り捨てられるケースがある。債権者集会で切り捨てが決定されると債権を回収できなくなるので、切り捨てられた部分の金額を貸倒損失として損金計上する必要がある。

・代表的な損金(2):貸倒引当金
債権額の一部が将来回収できない場合に備えて、あらかじめ費用計上しておくのが貸倒引当金である。経営破綻した取引先が破産手続き・民事再生手続きを開始した際や更生計画が認可された際には、債券の回収が困難になることが予想される。そのような場合、個別に一定額の貸倒引当金を損金として計上することが認められている。

また、回収不能が見込まれるような事情が発生していない時でも、過去の実績から将来一定額が回収不能になることを想定して、一括貸倒引当金として計上することもできる。

・その他の損金
貸倒れ以外にも損金として計上できるものがある。代表的なのは在庫商品の値引き販売や廃棄処分による損金計上である。商品を単に在庫として保管しておいても一切売り上げにならないが、値引きして商品が売れれば現金収入になる。仕入金額より安く販売することで利益を減らすことができ、節税にもつながるのだ。

また、有価証券評価損の計上もよく知られた節税方法だ。含み損を抱える有価証券を売却することで、現金化できるうえ節税効果にも期待できる。また本業に影響がない部分での節税となるため、税務上の争点にならないメリットもある。売却しないで評価損を計上することも可能であるが、そのためには上場株式であれば決算時点で50%以上株価が下落して買値を回復する見込みがないこと、非上場株式ならば純資産額が株式取得時より50%以上下落していることなどの条件をクリアする必要がある。

法人税節約の裏ワザ10選

ここからは法人税を節税するための10の裏ワザを紹介する。会社によっては該当しない項目もあると思われるが、可能な限り利用して節税につなげたい。

役員報酬を見直す

法人税を節約するには、役員報酬を見直すことが有効だ。方法としては、役員の人数を増やすこと、現在いる役員の報酬を増額することなどがある。ただし、報酬を増やしすぎると役員が支払う所得税や住民税の負担が大きくなるので、バランスを考えて金額を設定することが大事だ。

役員報酬の改定は年度の開始から3カ月以内という規定がある。たとえば4月が期首であれば、6月の役員報酬支給日までに変更する必要がある。年度の途中で役員報酬を増減すると税務署に認められない場合があるので注意が必要だ。

旅費規程を作成し、出張手当を経費計上する

全国に支社や得意先を持つ企業は、役員や社員が出張する機会も多いだろう。その際に出張手当(日当)を経費計上することで節税できる。出張手当は、支払った会社にとっては経費になる一方で、支払いを受けた役員や社員にとっては給与として課税されないメリットがある。産労総合研究所が行った「2017年度国内・海外出張旅費に関する調査」によると、出張手当を支給している会社は、日帰り出張で86.8%、宿泊出張で91.4%におよんでいる。

出張手当はいくらでも支給できるわけではなく、一般的に合理的と認められる金額を経費計上する必要がある。同調査による役職別の平均日当支給額は下表のとおりである。日当に宿泊費や交通費は含まれない。

▽役職別平均日当支給額(上段が日帰り出張日当、下段が宿泊出張日当)

社長専務常務取締役部長クラス課長クラス係長クラス一般社員
4,621円3,624円3,317円3,079円2,491円2,309円2,076円1,954円
4,799円4,042円3,759円3,518円2,809円2,593円2,337円2,222円

出張手当については、税務調査があっても大丈夫なように「出張先」「交通費」「宿泊費」などに関して社内で旅費規程を定めておく必要がある。出張の定義や、出張に関してどの費用にいくら使えるかについて基準を作っておくことで妥当性を示すことができる。

住居を社宅化する・自家用車を社用車にする

法人の場合、経営者の自宅を社宅にすることで節税できる。個人事業主が自宅を事務所にしている場合、仕事に使う以外の自宅部分の住居費は経費として認められない。それに対して法人が住居を借り上げて社宅として取り扱う場合は、家賃の住居部分のおおむね50%が経費として認められるので有利になる。

また、経営者の自家用車を社用車にすることでも節税できる。社用車にすると車両の減価償却費や保険料、ガソリン代から高速料金まで会社の経費として落とすことが可能になる。問題は税務調査が入った場合の対策だ。名義は可能なら法人名義に登録し直したほうが無難だろう。個人から法人に譲渡する際の価格は購入時の価格では認められない可能性があるので、減価償却後の金額を法人に計上することが大事だ。また、売買契約書があったほうが、税務調査の際に社用車にしたことを証明できるので作成することが望ましい。

家族に給与を支払う

個人事業主の場合、家族に給与を支払って専従者給与の計上を行うには、その家族が半年以上事業に専従しなければならないという制約がある。また白色申告者が専従者に支払える給与には50万円(配偶者は86万円)という支払額の上限があり、青色専従者は事前に届け出を行う必要がある。また、個人事業主が家族に1円でも給与を支払うと配偶者控除や扶養控除を受けることができなくなるので注意が必要だ。

法人の場合は個人事業主のような制約はなく、仕事内容に見合った給与であれば金額や従事した期間の制約もない。また家族従業員へ支払う給与額が年間103万円以下(他の所得が無い場合)であれば、配偶者控除や扶養控除の対象になるメリットがある。

社内事業を分社化する

経営が順調で売上が増えてきたら、社内事業を子会社に分社化すると節税になる。法人税は課税所得が増えると高くなるため、分社化で会社の所得を減らせば節税につながるのだ。

法人税率(普通法人の場合)
課税される所得金額税率
資本金1億円以下の法人など年800万円以下の部分下記以外の法人15%
適用除外事業者19%
年800万円超の部分23.20%
上記以外の普通法人23.20%
※筆者作成

法人税は所得金額が800万円を超えると、超えた分の税率が上がる。資本金1億円以下の法人であれば、2社に分割することで両社の所得を800万円以下に抑えられれば、法人税率を低くすることができる。

さらに分社化すると消費税についてもメリットがある。法人の消費税基準期間は前々事業年度となっているため、新たに設立された会社は原則として2期目まで消費税の納税が免除される。

共済制度や法人保険に加入する

小規模企業共済に加入すると、支払った掛金の全額を経費にできるため節税になる。小規模企業共済は国の機関である中小機構が運営している制度で、万一事業を廃業した場合に退職金を受け取れるので加入しておくと安心だ。加えて、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度も利用できる。低金利で即日貸付けも可能なので利便性が高い。

法人保険については、最高解約返戻率に応じて下表の割合を資産に計上したのち、残りの金額を損金算入できる。ただし、保険金や解約返戻金は基本的に益金になるため、そのまま受け取ると法人税が増えてしまう。節税効果を得るためには、受け取った保険金や解約返戻金を役員の退職金や従業員の福利厚生等に利用して損金算入し、利益と相殺する必要がある。

▽法人保険の資産計上額

最高解約返戻率資産計上額
50%以下なし
50%超、70%以下40%(契約期間の4割迄)
70%超、85%以下60%(契約期間の4割迄)
85%超保険料×最高解約返戻率×0.9(契約開始から10年)
※編集部作成

福利厚生を実施する

社員に対する福利厚生を実施すると、コストを福利厚生費として経費計上できるうえに、社員のモチベーションアップにもつながり一石二鳥の効果がある。

福利厚生の代表といえる社員旅行は参加人数や旅行期間など所定の条件を満たせば経費計上できる。まとまった金額になるので、節税効果も大きいだろう。

新年会や忘年会、新入社員歓迎会などを実施するのも福利厚生として一般的だ。ただし、新型コロナウィルスの感染拡大によって宴会は開催しにくくなっている。コロナが収束すれば、社員の交流を深める意味でも実施したい福利厚生といえる。

売却損・除却損・評価損を計上する

売却損・除却損・評価損を計上するのもオーソドックスな節税方法だ。それぞれの違いを確認しておこう。

・売却損
固定資産や在庫品などを原価よりも安い価格で売ることで生じる損失である。たとえば、50万円で仕入れた商品を40万円で売った場合は、10万円を売却損として経費計上できる。

・除却損
廃棄損ともいう。売ることが困難な固定資産や在庫品を除却(廃棄)することで除却損として経費計上できる。50万円分の商品を除却した場合は50万円全額が除却損となる。売れ残った商品を廃棄した場合に経費になるからこそ仕入れができるのである。

・評価損
所有している固定資産や商品が購入当時より安くなることがある。その場合、評価損の状態であることを証明できれば、値下がりした分の金額を評価損として経費計上できる。たとえば、50万円の商品の価値が30万円になってしまった場合は20万円が経費となる。ただし、経費になるには評価損であることを証明する必要がある。

未払費用を計上する

支払うことが決まっていながらまだ支払っていない未払費用を計上することも節税になる。ただし、未払費用として扱うには、その費用が毎月(毎年)継続して発生しており、同じ内容であることが条件となる。今年度は計上したが、次年度は計上しないということは認められため、節税になるのは未払費用として計上する初年度のみである。次年度以降は定期的な支払いとなるため、未払費用にはならない。

短期前払費用を計上する

「短期前払費用の特例」という制度を利用して節税することができる。この制度は「支払った日から1年以内にサービスを受けること」「初年度以降は毎年継続して前払いを続けること」という2つの条件を満たすことで利用できる。制度を利用すると、今年度1年間の経費を通常どおり計上したうえに、次年度1年分の経費も計上できるため、今年度の決算で節税効果を得られる。ただし、未払費用と同じ理由で、節税効果があるのは初年度のみであることに注意が必要だ。

法人税節税の裏ワザを実施する際の注意点

法人税を節税することは大事だが、紹介したような裏ワザを実施する際は注意すべき点もあるので、把握しておく必要がある。

節税対策はスケジュールを意識して行うことが大事

決算直前になって急に節税対策を行うと、本来実施できるはずの施策が漏れているなど中途半端な状態になる恐れがある。税務調査が入った際に提示すべき証明書類に不備があるなどのケースも考えられるだろう。

よりスムーズな節税対策のためには、年度のはじめに納税スケジュールや節税対策スケジュールを立てておくことが望ましい。一般的に、決算3カ月前に決算対策のシミュレーションを行うのが効果的といわれている。3月決算の会社なら9月中間決算の数字が出ており、残り3カ月の時点であればおおむね最終利益の見通しも立てやすい。

具体的な手順としては、まず9カ月間の月次データから残り3カ月の売上を予測して、年間売上を算出する。そこに売掛金や前受金など決算までに受け取れる売上を加え、そこから基本的な経費や減価償却費を予測した数字を差し引く。

無駄な出費にならないように注意する

節税対策は出費を伴わずにできるものと、実施に出費を伴うものがある。このうち、お金がかかる施策については注意が必要だ。たとえば、売上が大幅に伸びたからといって、利益を減らすために必要のない設備を導入したり、過剰な福利厚生を行ったりすると、次年度以降に影響が出る可能性がある。次年度も売上好調が続くとは限らないからだ。

節税のために出費するのであれば、確実に売上につながる設備の導入や、適正なレベルの福利厚生等にとどめるべきである。

税務調査で確認されても大丈夫なように、会計状況を明確にしておく

税務調査はどの会社にも入る可能性があり、国税通則法および法人税法で調査官に権限が与えられている。調査官が税額を算出した根拠を質問したり、帳票類を調べたりできる。質問されてきちんと回答できるように、会計状況を明確にしておくことが大事である。

税務調査は通常会社の規模によって1~4日ほどかかり、個人事業主の場合は1~2日程度といわれている。多くの場合は任意調査で行われ、事前に訪問日の連絡がある。脱税の疑いがあるような悪質なケースでは強制調査になる場合もあるが、普通に申告している限り該当する心配はないだろう。

ただし、悪意はなくても経費にならないものを知らずに計上しているケースは考えられる。税務調査の結果、問題になる経理処理があった場合には追徴課税処分になることもある。

ペーパーカンパニーは脱税になる可能性がある

ペーパーカンパニーを設立して節税しようと考える会社もあると思われるが、デメリットの多い方法なので注意が必要である。ペーパーカンパニーとは、登記上設立しているものの、事業を行っている実態がない会社を指す。設立すると親会社と利益を分割できるため節税につながるが、ペーパーカンパニーであっても決算は行わなくてはならないので手間がかかることに変わりはない。また、法人住民税の支払いも必要になる。

近年は、法人税の低いタックスヘイブンと呼ばれる国にペーパーカンパニーを設立して租税回避を試みる行為に対して規制が厳しくなっており、場合によっては脱税とみなされるケースもある。ペーパーカンパニーは違法ではないが、法律の抜け道、グレーゾーンに相当するので設立は控え、正式に分社化したほうが無難だろう。

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