LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)の2022年通期決算(1月〜12月)が1月26日に発表になっていたので紹介しておく。主要数字は以下の通り。1ユーロ=140円で換算。
・売上高:791億8400万ユーロ(前年比+23.3%、約11兆880億円)
・営業利益:210億100万ユーロ(同+22.4%、約2兆9540億円)
・当期純利益:140億8400万ユーロ(同+17.0%、約1兆9740億円)
この11兆円突破という年商に注目してほしい。例えば、日本を代表する小売業であるセブン&アイホールディングスの2022年2月期の売上高は8兆7497億円、イオンの2022年2月期の売上高は8兆7159億円だった。製造業であれば、トヨタ自動車の31兆3795億円(2022年3月期)は別格にしても、この11兆円に匹敵する製造業としては、ソニーグループの9兆9215億円(2022年3月期決算)を上げることができる。しかし、LVMHが生産し販売しているものは、ラグジュアリーブランドという高級品である。「消費者が憧れつつそう簡単には手に入らない高額品」というのが、ラグジュアリーブランドの簡単な定義だが、そうした商品を扱っていながら、この年商規模というのは驚異としか言いようがない。当然のことながら、その営業利益率(営業利益÷売上高×100)は、26.52%と高率であり、トヨタ自動車(9.5%)、ソニーグループ(12.1%)をはるかに上回っている。セブン&アイホールディングス(4.4%)やイオン(2.0%)などの小売業は比較にならないのだ。アップルなどのIT製造業だけが比較できるだけだ。ラグジュアリーブランドというクラフトマンシップをベースにしたアナログ商品を手掛けていながら、この決算数字は「驚異」というより「脅威」と言った方が適切かもしれないのだ。
カテゴリー別の売上高は、「ルイ・ヴィトン」「ディオール」「フェンディ」「セリーヌ」などを擁するファッション&レザーグッズ部門が前年比+25.0%の386億4800万ユーロ(約5兆4107億2000万円)。中心的存在の「ルイ・ヴィトン」は年間売り上げ200億ユーロ(約2兆8000億円)を突破し、ラグジュアリーブランド業界の王者であることを示した。パフューム&コスメティック部門は前年比+25.0%の77億2200万ユーロ(約1兆810億円)、ウォッチ&ジュエリー部門は105億8100万ユーロで同+18.0%だった。免税店のDFSや化粧品セレクトショップ「セフォラ」などを手掛けるセレクティブ・リテール部門は、同+26.3%の148億5200万ユーロ(約2兆792億円)、ワイン&スピリッツ部門は同+19.0%の70億9900万ユーロ(約9938億円)だった。
地域別では、観光客急増のフランスが前年比+47.8%、フランスを除くヨーロッパは同+28.9%、米国は同+29.8%、日本は同+24.0%だった。一方、日本を除くアジア太平洋地域は、中国のゼロコロナ政策などの影響で同+6.3%にとどまった。2023年は、ゼロコロナ政策解除の中国市場がけん引役になりそうだ。