2024年4月1日からトラック運送などの自動車運転業務に、時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されることをご存じだろうか。本規制の適用により物流業界に深刻な影響を及ぼすことが懸念されており、これは「2024年問題」と呼ばれている。
この問題への対応として注目されているのが、物流分野への最新テクノロジーの活用だ。自動運転やドローン技術による無人化・効率化などが期待されている。最新テクノロジーの導入により、物流はどのように変わろうとしているのか。本コラムでは、物流停滞の危機の打開が期待できるAI(人工知能)や5Gの取り組みについて解説する。
AI、5Gで物流停滞の危機を打開
自動車運転業務に時間外労働の上限規制が適用されると、具体的にどのような問題が生じるのだろうか。
トラックドライバーなど自動車運転業務の従事者は、一般的に労働時間が長い。公益社団法人全日本トラック協会が2022年10月に公表した「トラック運送業界の2024年問題について」によると、大型トラックドライバーの年間労働時間は全産業平均と比べて432時間、中小型トラックドライバーは384時間も長いのだ。
また、トラックドライバーは、労働時間が長い一方で年間所得額は低い傾向にある。同資料によると大型トラックドライバーの年間所得額は全産業平均と比べて約5%、中小型トラックドライバー約12%低い。この状態で時間外労働に上限規制が設けられると、トラックドライバーにとっては減収の要因になりかねないだろう。
こうした理由からドライバーが離職し、人員不足の進行が懸念されている。そういった前提のうえで2024年問題から生じる物流の停滞、ひいては経済活動の停滞が起きないように進められている取り組みがAIや5Gといった先進技術の導入だ。
自動運転×物流に関する取り組み
2024年問題への対応策の一つとして期待されているのが「自動運転」だ。
日本では、すでに複数のトラックが連なり、走行状況をリアルタイムで共有して自動で車線変更などを行う「隊列走行技術」の開発が進んでいる。後続車両を無人化できれば、ドライバー不足など物流業界が直面する課題解決へのインパクトは大きい。実証実験のレベルでは、2021年2月に高速道路上で後続車が無人の隊列走行を成功させており、実用化が期待されている。
海外に目を向けると、自動運転トラックの開発も進んでいることが分かるだろう。完全自動運転がトラックでも実現すれば、無人化だけでなく運行管理や配送のマッチングなどを通じて効率化も進む。
なお、無人化に取り組んでいるのはトラック業界だけではない。例えば、海運の分野では船舶の無人運航化が進んでいる。こちらも実証実験レベルでは一部のルートでコンテナ船の無人運航に成功するなど期待が高まっている。
ドローン×物流に関する取り組み
自動運転に加えて物流の在り方を変えると期待されているのが「ドローン物流」だ。ドローン物流が実現すれば「交通渋滞の緩和」「運送業界の人手不足の解消」「過疎地や被災地への配送」など、さまざまなメリットがもたらされるだろう。
一方でドローンに不具合があった場合の墜落の可能性や、それに伴う危険性、また荷物の重量制限など克服すべき課題も多い。ドローン物流の実現に向けては、各地で実証実験が行われており、社会実装の可能性が高まっている。
ルート最適化×物流に関する取り組み
2024年問題へのアプローチとしては「ルート最適化」も注目されている。ルート最適化とは、単に目的地までの最適なルートを割り出して効率化を図ることを意味するのではない。具体的には、全体の物流ニーズに対して「誰が・どの荷物を・いつ・どのルートで配送するか」という配送パターンの最適な組み合わせを見つけて物流の効率性を最大限に高めることを指す。
これは、膨大な組み合わせのなかから最適解を計算する作業を必要とし、通常のコンピューターでは処理能力が追いつかないと考えられてきた。しかし近年は、AIや量子コンピューター技術が進展しルート最適化の計算に応用されつつある。ある企業の量子コンピューターを活用したルート最適化ツールの効果を検証したところ、配送経路について約50%の削減効果があったという。
倉庫内でもイノベーション
物流業界の人手不足問題に取り組むには、配送手段の無人化・自動化だけでは不十分だ。荷物の仕分けや出荷準備、保管などを行う倉庫業務についても無人化・自動化は避けられない。例えば、倉庫管理の現場で導入が進んでいるのがAMR(Autonomous Mobile Robot)だ。AMRは、自律走行搬送ロボットなどとも呼ばれ、倉庫内の作業の効率化・省人化に役立てられている。
物流×先進技術でチャンスをつかむ企業は現れるか
2024年問題は、物流業界が直面している目下の課題である。経済活動の停滞というリスクをはらむだけに、その解決は待ったなしだ。もっとも問題解決に向けた期待値が大きい分、そこにはビジネスチャンスが広がっている。先進技術で物流を変革し、そのチャンスをつかむ企業が現れるかも注目だ。
(提供:manabu不動産投資 )
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