レナサイエンス<4889>は、東北大学発の創薬ベンチャーとして2000年2月に設立された。同社会長で同大大学院医学系研究科教授の宮田敏男氏らによる、老化に伴う疾病やメンタル疾患などの原因となる神経細胞死や神経変性に関する分子機構についての研究をベースとした低分子化合物治療薬の開発からスタートしている。
オープンイノベーションで創薬からAI、医療機器まで
2021年9月に東証マザーズ市場(現・東証グロース市場)に上場し、調達した資金を白血病などの治療薬候補の開発や新型コロナウイルス感染症に伴う肺炎治療薬の臨床試験などに投じた。
同社はポストコロナ時代に人工知能(AI)を活用した効率的な研究がライフサイエンス領域でも台頭すると予測。医薬品だけでなく、人工透析をはじめとする医療現場の課題を解決できる医療用AIの開発を進めている。
自社の起源である東北大だけでなく、聖路加国際大学や順天堂大学、東京慈恵会医科大学ほか複数の大学と共同研究で開発したのが、直径1ミリメートル程度の極細ディスポーザブル内視鏡。腹膜透析患者が透析液を注入するために留置されたチューブから挿入し、非侵襲的に腹腔内を観察できる使い捨ての内視鏡だ。
腹膜透析は在宅医療が可能な慢性腎不全の治療法だが、腹膜の経年劣化に伴い重篤な合併症を引き起こすリスクがある。現状では開腹手術か腹膜鏡で腹膜の状態を観察するしかなかった。同製品は腹腔内に新たな傷をつけることなく内視鏡を通して観察できるので、合併症診断の身体的負担が小さい。
創薬事業からAI、医療機器へとビジネスを拡大したのに伴い、パートナー企業も従来の製薬企業から、医工学機器メーカーやIT企業へと拡大している。
2022年1月には「東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ」(TREx)を、同大の産学共創拠点「メディシナルハブ」内に開設。TRExでは革新的な次世代医療を創出するため、ヘルスケア産業での「医・薬・工」の異分野融合などの産学官オープンイノベーションを促進していく。
同社はヒトが心身ともに生涯にわたって健康を享受できるための新しい医療の創造を目指し、医学はもちろんのこと社会的にも重要な課題の解決に取り組んでいる。
文:M&A Online編集部