主要通貨ペア(ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円)について前営業日の値動きをわかりやすく解説し、今後の見通しをお届けします。
作成日時 :2023年3月17日9時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼16日(木)の為替相場
(1):本邦貿易収支 19カ月連続の赤字
(2):豪雇用統計は改善
(3):クレディ・スイスを巡る不安後退
(4):良好な米経済指標
(5):ECB タカ派姿勢崩さず
(6):米地銀に資金支援 市場のムードが一変
▼16日(木)の株・債券・商品市場
▼外為注文情報/ ▼本日の見通し/ ▼ドル/円の見通し:比較的広いレンジの中で上下する/ ▼注目の経済指標/ ▼注目のイベント
16日(木)の為替相場
(1):本邦貿易収支 19カ月連続の赤字
日本2月貿易収支(通関ベース)は8977億円の赤字となった。赤字額は予想(1兆1500億円)を下回ったものの、19カ月連続での赤字となり2月としては1979年以降最大の赤字額となった。
(2):豪雇用統計は改善
豪2月雇用統計は失業率が3.5%(予想3.6%、前回3.7%)、新規雇用者数が6.46万人増(予想5.00万人増、前回1.09万人減)であった。労働参加率も予想通りとはいえ66.6%に上昇(前回66.5%)した。
(3):クレディ・スイスを巡る不安後退
経営不安に陥っているスイス大手銀行クレディ・スイスが、スイス中銀(SNB)から最大500億スイスフランを借り入れる計画を発表。リスク回避の動きが弱まり、ドル/円やクロス円は一時上昇した。
(4):良好な米経済指標
米新規失業保険申請件数は19.2万件と予想(20.5万件)を下回り、前週(21.2万件)から減少した。同時に発表された米2月住宅着工件数は年率換算145.0万件と予想(131.0万件)を上回った。
(5):ECB タカ派姿勢崩さず
欧州中銀(ECB)は主要政策金利を予想通りに50bp引き上げて3.00%から3.50%にすると発表。中銀預金金利も2.50%から3.00%へと引き上げた。声明では「市場の緊張を認め、必要に応じて対応する」「将来の決定はデータに依存」とインフレ抑制を優先する姿勢を示した。金融システムへの不安がくすぶる中での大幅利上げ決定を受けて欧州株が一時下落に転じるとユーロ/円は139.12円前後まで下落した。その後、ラガルドECB総裁が会見を行い「インフレは長期に渡り過度に高い水準にとどまると予測している」と述べ、タカ派姿勢を崩さなかった。また今後の金利の道筋については「現時点ではコメントすることは不可能」とした。
(6):米地銀に資金支援 市場のムードが一変
預金流出に直面していた米地銀ファースト・リパブリック・バンクについて、一部報道で「JPモルガン・チェースやモルガン・スタンレーなど米大手銀は支援策を検討。資本注入が含まれる可能性もある」と伝わった。その後「米銀11行は預金の形で計300億ドルの資金支援を実施する」との報道を受け、市場のムードが一変。欧米の株価が反発し長期金利も上昇に転じると円売りが活発化した。
16日(木)の株・債券・商品市場
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人気通貨ペア 本日の予想レンジ
ドル/円の見通し:比較的広いレンジの中で上下する
昨日のドル/円は1カ月ぶり安値から切り返す展開。欧米金融機関の経営不安がくすぶる中でも欧州中銀(ECB)が大幅利上げを継続したことで市場心理が悪化すると131.71円前後まで下落した。しかし、NY市場に入り、預金流出に直面していた米地銀ファースト・リパブリック・バンクを大手米銀が支援する方針が発表されると地合いが反転。株価が反発し長期金利が上昇に転じる中、133.82円前後まで上昇した。
もっとも、これで金融システムを巡る市場の疑心暗鬼が晴れたとまでは言えそうにない。スイス中銀(SNB)が流動性支援に乗り出したスイス大手銀行クレディ・スイスの株価は一時急騰したが、その後上げ幅を縮小。大手銀による救済発表で約10%上昇したファースト・リパブリック・バンクの株価も引け後の時間外取引で大きく反落している。市場心理が悪化方向に大きく傾くリスクは低下したと見るが、改善方向に向かうにはもう少し時間が必要だろう。
ドル/円は本日も不安定な値動きが続く公算が大きく、比較的広いレンジの中で上下する相場展開となりそうだ。
注目の経済指標:米鉱工業生産
注目のイベント:OECD経済見通し
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1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。
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