不動産登記法の改正に伴い、2024年4月から相続登記と住所等変更登記の申請が義務化される。そのため、大家が引っ越しして住所が変わる場合は注意したい。今後、段階を置いて施行される不動産登記法の改正を時系列で解説する。
不動産登記法が改正される理由
2021年4月に不動産登記法が改正されたが、その理由は所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化を目指すためである。「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立したことに伴って、不動産登記法も改正に至ったものだ。
国土交通省が2020年に行った調査によると、全国の所有者不明土地の割合は24%となっている。その原因の約3分の2が相続登記の未了、約3分の1が住所変更登記の未了だ。
これまでは、相続登記に関して「いつまでに登記しなければいけない」という期限が設定されていなかった。そのため、資産価値の低い土地は相続登記がされず放置された結果、所有者不明土地が増加していった経緯がある。
また、所有者不明土地があることで「復旧・復興事業が行えない」という問題も生じている。相続登記や住所等変更登記を義務化することで土地の所有者を特定できるため、今後新たな所有者不明の土地の発生は減ることが期待される。
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時系列で施行される改正法を紹介!
施行日 | 施行される内容 | 申請期限 | 罰則 |
2023年4月27日 | 相続国庫土地帰属制度 | - | - |
2024年4月1日 | 相続登記の申請義務化 | 3年以内 | 10万円以下の過料 |
相続人申告登記制度 | 3年以内 | - | |
2026年4月までに施行 | 住所等変更登記の申請義務化 | 2年以内 | 5万円以下の過料 |
相続登記と住所等変更登記の義務化に先立ち、2023年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」がスタートする。本制度は、相続したものの活用する予定がない土地を手放して国庫に所有させることができる制度だ。相続人にとっては、活用しない土地を所有して無駄に固定資産税や都市計画税を支払わなくて済むメリットがある。ただし手続きには、審査手数料と負担金がかかるため、注意が必要だ。
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相続登記と住所等変更登記の申請義務化は、公布から2年間の間隔をおいて施行される予定となっている。
相続登記の申請義務化は2024年4月1日から施行されるが、あわせて「相続人申告登記制度」も同日から施行される。同制度は、相続人が法務局の登記官に自分が相続人である旨を申し出て、登記官の職権で暫定的に登記してもらうものだ。相続人は申請義務を簡易に果たすことができる。
さらに、住所等変更登記の申請義務化は2021年4月の法改正公布日から5年以内に施行するように定められているため、2026年4月までに施行される予定だ。
ただし相続登記の申請については、施行から3年間の猶予期間が設けられている。今回の改正法においては、申請を怠ると罰則規定があり、定められた金額の過料が科される場合があるため、注意が必要だ。過料とは、国や地方公共団体が少額の金銭を徴収することをいい、刑事罰である罰金と異なり前科にはならない。では、それぞれの概要と注意点を確認しておこう。
相続登記の申請義務化(2024年4月1日施行)
相続登記の申請義務化は、不動産を取得した相続人に対して課される。これまで申請期限がなかったため、資産価値のない土地に関しては登記せずに放置する人もいたのが実情だ。
相続登記の申請義務化の概要
相続登記は、不動産を相続した場合に亡くなった人の名義から相続人などの名義へ変更する手続きである。相続登記しないと名義が亡くなった人のままであるため、相続人が自分に所有権があることを主張できない。
不動産の所有者が亡くなった場合の相続登記手続きは、不動産が所在する地区の法務局に申請して行う。そのため相続不動産が違う地区に複数ある場合は、それぞれの所在地を管轄する法務局に申請しなければならない。
今回の法改正で相続登記が義務化されるが、申請期限は相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内である。
申請を怠った場合の罰則規定
今回の改正で特に注意したいポイントは、改正法が施行される以前の不動産も遡って申請が義務化されることだ。なかには「施行以前に相続した物件だから対象外だろう」と申請を怠る人もいるかもしれないが、この場合罰則を受ける可能性がある。正当な理由がないのに申請を怠った場合は、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意したい。
法務局が正当な理由として挙げている一例は、以下の通りだ。
・遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
・申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
引用:法務省「不動産登記法の改正の主な改正項目について」※この先は外部サイトに遷移します
(参照:2023年2月9日)
遺産分割の協議が長引いている場合は、前述した相続人申告登記制度を利用すると、自分が相続人であることを申告して戸籍謄本を示せば一人で申告の義務を果たすことができる。ただし、相続の権利を取得したことまでは公示されないため、遺産分割の協議がまとまり次第、正式な登記をすることが必要だ。
住所等変更登記の申請義務化(2026年4月までに施行)
住所等変更登記申請義務化は、所有権の登記名義人に対して課される。これまで住所等の変更登記は任意だったため、引っ越すたびにきちんと変更していた人は少ないだろう。
住所等変更登記の申請義務化の概要
住所等変更登記とは、不動産の登記名義人の住所や氏名が変わった場合に行う手続きのことだ。法改正に伴い、申請期限は住所等を変更した日から2年以内となっている。住所等変更登記を行う方法は「自分で行う」「司法書士に依頼する」といった2つの方法が選択可能だ。自分で行う場合の必要書類は、登記事項証明書(登記簿謄本)、住民票、登記申請書などである。
また法務局で申請する際には、登録免許税相当額の収入印紙が必要だ。司法書士に依頼する場合は手続きを一任することができるため、大家の手間はかからない。しかし司法書士報酬を支払う必要があるため、コストがかかることを考慮する必要がある。
申請を怠った場合の罰則規定
「住所等」とあるように、住所だけでなく氏名が変わった場合にも申請が必要になる。そのため、例えば結婚で名義人であるオーナーの氏名が変わった場合は、変更登記しなければならない。正当な理由なく申請を怠った場合は、5万円以下の過料が科される可能性がある。相続登記と同じく、施行日以前に発生した住所・氏名の変更も対象になるため、注意が必要だ。
大家は自宅を引っ越す場合に注意!
法改正により、大家が自宅を引っ越す場合は住所等変更登記を失念しないように注意することが必要だ。できれば市区町村への住所変更届けが完了したあと、即座に住所等変更登記を行ったほうが失念する心配がない。引っ越しして長期間経過している場合は、転居時に住所等変更登記をしたかどうか確認したほうが賢明だ。住所等変更登記をしていないと以下のような不都合が生じるため、十分に注意したい。
・登記簿で正確に名義人を確認できないと金融機関から不動産を担保にした融資を受けられない
過料が科されるだけでなく物件売却や融資を受けるのが難しくなることは、大家にとって大きな痛手になるため、住所や氏名の変更は確実に行っておくことが必要だ。現在の所有者の住所がどのように登記されているかは、法務局や登記情報提供サービス(ネット)などで登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して確認ができる。
全国的に空き家問題が叫ばれて久しいが、今回の不動産登記法における一連の改正が問題解決の糸口になれば社会的にも有意義となるだろう。
※本記事は2023年2月4日現在の情報を基に構成しています。不動産登記法関連の改正については、今後詳細が発表になる場合があるため、参考程度にお考えください。
(提供:manabu不動産投資 )
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