不動産クラウドファンディングは、「不動産特定共同事業法」という法律で規制されています。同法はどのような理由で制定されたのでしょうか。事業及び事業者の種類、事業の許可を受ける条件など、不動産特定共同事業法の概要を解説します。
目次
不動産クラウドファンディングを規制する「不動産特定共同事業法」とは
不動産クラウドファンディングを規制する「不動産特定共同事業法」は、特定共同事業(投資家から集めた資金で不動産を取得・運営して得た収益を投資家に分配する事業)において適正な運営と投資家を保護する仕組みを定めた法律です。
運営事業者は投資家と「匿名組合契約」又は「任意組合契約」を締結して不動産を運用します。また、運営事業者は資本金の額や業務内容によって、第1号事業者から第4号事業者の許可を得て事業活動を行います。
不動産特定共同事業法が制定された理由
不動産特定共同事業法が制定された背景には、1990年初頭に起きたバブル崩壊があります。1980年代に不動産小口化商品が盛んに販売されていましたが、バブルが崩壊すると運営事業者の経営破綻が相次ぎ、投資家が大きな損失を被る結果となりました。
そこで、不動産小口化商品に投資する出資者を保護するために本法律が制定されたのです。
不動産特定共同事業法の変遷
不動産特定共同事業法は1994年に制定され、1995年4月に施行されました。以降3回にわたり大改正が行われています。
2013年の改正では特別目的会社(SPC)を活用した「特例事業」が導入されました。SPCとは、企業が不動産など特定の資産を内部から切り離して、特定の資産の保有やプロジェクトのために作られた会社のことです。ただし、実態は企業本体の資産を保有する受け皿としてのペーパーカンパニーです。この改正により、特定共同事業を行うためにSPCを設立することで、特例により第1号事業者の許可を受けていない業者も事業に参入することが可能になりました。
続いて2017年の改正では「小規模不動産特定共同事業(登録制)」が導入され、規模が小さな会社でも特例事業に参入できるようになりました。この年の改正ではインターネット上での出資手続きやオンライン取引が許可され、不動産クラウドファンディンに対応することが可能になりました。特例投資家のみが出資する際の約款規定撤廃と併せ、大きな改革といえます。
そして2019年には、不動産クラウドファンディング事業者のホームページの適正表示や情報漏洩などへの対応もなされました。同時に「電子取引に関するガイドラインの策定」や「不動産特定共同事業施行規則など関係法令の改正」なども行われ、不動産クラウドファンディングのさらなる活性化が図られました。
特定共同事業の種類
特定共同事業には以下のような種類があります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。
1口投資単位 | 運用期間 | 所有権 | 所得区分 | |
---|---|---|---|---|
匿名組合型 | 1万円、10万円など少額 | 短期が多い | なし | 雑所得 |
任意組合型 | 100万円以上 | 長期が多い | あり | 不動産所得 |
賃貸借型 | 100万円以上 | 長期が多い | あり | 不動産所得 |
匿名組合型
匿名組合型は、運営事業者と投資家が「匿名組合契約」を締結して不動産を運用します。投資家は運用の結果生じた利益の一部を分配金として受け取る仕組みです。匿名で出資するため不動産の登記はなく、現物を所有することはできません。不動産を所有しないので、収益は雑所得になります。
1口1万円や10万円の少額で投資できる不動産クラウドファンディングの多くが匿名組合型のファンドです。運用期間は3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月など短期のファンドが目立ちます。
任意組合型
任意組合型は、運営事業者と投資家が「任意組合契約」を締結して不動産を運用します。複数人の投資家が共同で不動産を所有して事業を行います。不動産を所有するため、収益は不動産所得になります。
任意組合型のファンドは登記して不動産を所有するため、1口の価格は100万円以上など高額になります。運用期間は10年以上など長期のファンドが多い傾向があります。現物不動産投資に近い投資と考えてよいでしょう。
賃貸借型
賃貸借型は、複数の投資家が共同で不動産を所有し、事業者に不動産を貸し出して管理を任せます。投資家は運用の結果得た家賃収入を受け取る仕組みです。上表のように諸条件は任意組合型とほぼ同じです。持分を持つ全員の名前が不動産登記されるので、こちらも現物不動産投資に近いといえます。
賃貸借型は匿名組合型や任意組合型と比べてファンドの数が少ないのが現状です。
特定共同事業者の種類
「不動産特定共同事業法」第二条4項に基づく、特定共同事業者には以下の4つの種類があります。
・第1号事業者
不動産特定共同事業契約を締結して、当該不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引から生ずる収益又は利益の分配を行う事業者。
・第2号事業者
不動産特定共同事業契約の締結の代理又は媒介を行う事業者。
・第3号事業者
特例事業者の委託を受けて当該特例事業者が当事者である、不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引に係る業務を行う事業者。
・第4号事業者
特例事業者が当事者である不動産特定共同事業契約の締結の代理又は媒介を行う事業者。
事業者が許可を受けるための要件
事業者が許可を受けるためには、定められた要件を満たす必要があります。国土交通省の「不動産特定共同事業(FTK)法の概要」では以下のように要件が定められています。
・資本金(第1号事業者:1億円、第2号事業者:1,000万円、第3号事業者:5,000万円、第4号事業者:1,000万円)
・宅建業の免許
・良好な財産的基礎、公正かつ適確に事業を遂行できる人的構成
・基準を満たす契約約款(一般投資家を対象とする場合のみ)
・事務所ごとの業務管理者(不特事業3年以上、実務講習、登録証明事業〈ARESマスター、ビル経営管理士、不動産コンサルティングマスター〉)配置
出典:国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)法の概要」
法律で規制される不動産クラウドファンディングは安心して投資できる
不動産特定共同事業法の概要を見ながら、不動産クラウドファンディングが法律できちんと規制されており、安心して投資できることを確認しました。特定共同事業者の要件を満たし、許可を得たクラウドファンディング事業者は投資家保護を徹底しているので、ほとんどが信頼できます。
2023年5月19日、日経平均株価は3万808円35銭を付け、32年9ヵ月ぶりにバブル後の最高値を更新しました。株式投資に目が行きがちなニュースですが、株式は東京証券取引所に上場しているだけで3,882社(2023年5月19日現在)あります。高配当株もあれば無配株もあり、玉石混交のなかから投資先を探すのは大変です。
その点、不動産クラウドファンディングは運用終了したファンドと新規募集ファンドが毎月入れ替わり、常に新しいファンドが不動産クラウドファンディング事業者の公式サイトトップページに掲載されます。新規案件がセレクトされているので、スムーズに投資先を選ぶことができます。このように、少数ならではのメリットもあるのです。
各事業者の募集ファンドをまとめて閲覧するには、不動産クラウドファンディング比較サイトが便利です。まず、匿名組合型で少額・短期運用が可能な不動産クラウドファンディングの募集案件を気軽にチェックしてみましょう。
(提供:YANUSY)
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