現場無線LANの最前線!メッシュWi-Fiの有用性とは?
(画像=ArgitopIA/stock.adobe.com)

株式会社PicoCELA(ピコセラ)とフルノは、2022年6月8日「建設DXウェビナー 現場無線LANの最前線」を開催しました。本イベントでは「建設現場に広がる無線LANと最新事例」をテーマに活用事例を紹介しました。建設業界は人手不足と高齢化の課題があり、インターネット経由で現場の状況を網羅的に把握することが必要です。メッシュWi-Fiは建設現場のDX化を促進、無線環境を整備しコスト削減を実現します。株式会社PicoCELAプロダクト本部 本部長代理 プロダクトマーケティングマネージャー 加藤 智成氏がメッシュWi-Fiの有用性や現場活用の可能性、今後の展望について解説します。

目次

  1. 建設現場のDX基盤となるメッシュWi-Fi
  2. メッシュWi-Fiの導入事例
  3. 全域Wi-Fiへの拡大で建設現場のDX化を促進

建設現場のDX基盤となるメッシュWi-Fi

メッシュWi-Fiは最小限のLANケーブルで利用できるため、配線が少ない環境下でもアクセスポイントを使えるのが特徴。ケーブル配線が困難な建設現場の悩みを解消、最初のLANケーブル1本の配線工事だけで、一般的なWi-Fiよりも広大なエリアをカバーできます。例えばアクセスポイントが32個あった場合、3本ほどLANケーブルを配線すると残りの場所も電源さえあればエリアを拡張可能です。最小限のLANケーブルのみでWi-Fi空間を作れるため、LAN敷設設置工事の大幅なコスト削減ができます。

具体的には以下の3つの特徴があります。
・中継の回数を増やせる
・電源入力直後に使用できる
・リンク障害への事故修復機能がある

広域空間でWi-Fiを利用しなくてはならない建設現場では、再三の盛替えやアンテナの故障などにも対応可能なため、快適にネット環境を維持できます。

続いてメッシュWi-Fiの活用事例をみていきましょう。

メッシュWi-Fiの導入事例

Gala湯沢がLANケーブル1本で巨大Wi-Fi空間に!

現場無線LANの最前線!メッシュWi-Fiの有用性とは?

メッシュWi-Fiは東京ドーム4個分、約20ヘクタールの広さであるGala湯沢をわずかLANケーブル1本で巨大Wi-Fi空間へと変えました。お客さまから公衆Wi-Fiの要望もありましたが、スキー場という特性から通信機器を設置しづらい環境にあり、当初は莫大な導入コストを想定。しかし、メッシュWi-Fiの導入でLANケーブル敷設にかかるコストを大幅に削減できると考えました。方法は11番にあるロッジの光回線を元回線として活用、電源はすべて照明塔の電源を分岐させ、1番の場所まで10回並列で中継し頂上まで巨大Wi-Fi空間を作成することです。11番は速い回線ではないにもかかわらず、頂上の1番でYouTubeやInstagramを問題なく視聴できました。実際には、LANケーブル1本でスキー場全てをカバーできたため、一般的なWi-Fiと比較すると80%以上のコスト削減です。

Gala湯沢の広さは中規模の土木工事現場の広さとほぼ同様です。そのため「土木工事の現場でもWi-Fi空間を作れるのではないか」と土木工事現場の方々にも非常に興味を持っていただきました。

トンネル工事現場でも携帯での通話が可能に

トンネル工事現場は携帯電話の電波も入らない環境です。そのため、作業員同士のコミュニケーションを円滑にするためにも「トンネルをWi-Fi化して欲しい」という要望が数多くありました。現場はメッシュWi-Fiを導入し、自社に合う方法を模索。2年以上かけ「100m単位でAP設置」「300m単位でAP設置」「トンネルのトップに設置」「安全性を配慮して設置」などトンネルのWi-Fi化について建設会社様各社がそれぞれノウハウを蓄積していったようです。

大規模土木現場のWi-Fi化で働き方改革を実現

現場無線LANの最前線!メッシュWi-Fiの有用性とは?

67ヘクタールにも及ぶ大規模土木現場の悩みは、現場の見回りに約2時間かかること。そのため「カメラを点在させ業務の効率化につなげたい」というご要望がありました。現場は電源がなく、携帯電話もつながらないためLTEのSIMを内蔵したカメラも使用できません。そこでメッシュWi-Fiを導入し、スポット的な領域にWi-Fi空間を作りカメラの映像を現場事務所に届けようと考えました。指向性アンテナと多段中継の技術を利用しカメラの映像をメッシュWi-Fiの技術によって転送させ現場事務所に映像を送ることに成功、作業員の負担を軽減できました。その結果、業務の効率化につながり働き方改革を実現しています。

屋外フェスにフリーWi-Fiを!設営・撤収時間が従来の3分の1に

現場無線LANの最前線!メッシュWi-Fiの有用性とは?

メッシュWi-Fiの特徴はWi-Fiのスピード設置・撤去による作業の効率化。屋外フェスでフリーWi-Fiを設置する場合、設置に時間がかかることが課題でした。通常は設営に丸一日、撤収も半日かかります。しかしメッシュWi-Fiは設営に3時間、撤収に2時間と、わずかな時間での作業を可能にしました。通常のWi-Fiの3分の1から4分の1の時間で設営・撤収ができるという驚異のスピードです。

スピード設置ができる点から、メッシュWi-Fiは「盛替え」の多い建設現場の方にも興味を持っていただきました。次はそのような建設現場での事例です。

不可能と思われた高層マンションの建設現場をWi-Fi空間に

現場無線LANの最前線!メッシュWi-Fiの有用性とは?

高層マンションの建設現場の課題は携帯電話が使えないこと。メッシュWi-Fiは不可能と思われた高層マンションでも、スポット的なWi-Fi空間を実現できます。現場は大手ゼネコンの地上30階建ての高層マンション。外装・外壁が完了済みの高層マンションにおいて、内装工事の段階で下記のように2種類の方法で実験を実施しました。

(1) 仮囲いに親機を設置、屋上「1」の地点まで通信を確立し、ビルの吹き抜けを利用し下層階まで通信を整備
(2) 仮囲いから10階ベランダ「2」の地点まで通信を確立し、ビルの吹き抜けを利用、上階まで通信を整備
全ての地点で目標の通信速度と遅延を確保できました。

その他の高層ビルの事例として多いのが建築現場でのWi-Fi化。ビルの5階ごとにある補充エレベーターが止まる場所にWi-Fiスポットを作り、作業員がアプリケーションで通話できるようしました。
さらに「新型コロナの影響でマンションの施主の見回りがなかなかできない」といった問題も解決。仮囲いから仕上げ済みの中層階まで通信を確立し、必要な場所にだけWi-Fi空間を作り、ZoomやTeamsなど動画による見回りを可能にしました。

カメラソリューションとの連携も可能

現場無線LANの最前線!メッシュWi-Fiの有用性とは?

メッシュWi-Fiはカメラソリューションとの連携も可能。最近の建設現場では携帯用ウェアラブルカメラが普及しています。携帯用ウェアラブルカメラとは、身体に直接装着しハンズフリーで撮影できるカメラです。カメラ使用の建設現場では電波状況により通信が使用できないことが課題です。特に、15階以上の建物は広大なため、SIMカードが利用できないことが多く作業員の悩みの種でした。通信不可能な空間であってもメッシュWi-Fiを活用すると、建物外部から通信を確立しWi-Fi空間を実現可能。有線LAN接続・Wi-Fiどちらでも対応でき、カメラ映像をスマートフォンやタブレットで確認できます。メッシュWi-Fiの活用で、作業員は問題なく現場で撮影や録音ができるようになりました。

全域Wi-Fiへの拡大で建設現場のDX化を促進

現場無線LANの最前線!メッシュWi-Fiの有用性とは?

これまで建設現場では現場の一部をWi-Fi環境にする「スポットWi-Fi」が幅を利かせていましたが、現場全体にWi-Fi空間を構築する「全域Wi-Fi」へと急速に移行しつつあります。
全域Wi-Fiが必要とされる背景は、以下の通りです。
・現場内のコミュニケーション
・作業員の健康管理(ヘルスケア)
・作業員の行動情報の取得(位置情報管理)
・ロボット施工(施工・資材運送の自動化)
全域Wi-Fiを導入するメリットは大きくDX化も促進可能。実際の現場からは全域Wi-Fiを活用して「DXしたい」「既に実施済み」の声が上がっています。続いて全域Wi-Fiの事例について紹介しましょう。

人やロボットの遠隔管理で建設現場のDX化

全域Wi-Fiで建設現場の人やロボットの遠隔管理が可能、業務の効率化につながります。従来は作業員の居場所確認のため、歩いて行って監視、一方全域Wi-Fiは現場にIPカメラを設置するだけで遠隔管理できます。測位技術によって担当者がどこで施工しているのか、ロボットがどこで作業しているのか位置確認でき、リアルタイムでモニタリングが可能です。例えばタブレット端末から職人A氏が30階で施工している姿や28階で作業しているロボットを確認できます。人やロボットの遠隔管理により業務運用の改善や生産性の向上が可能です。

高所作業車や資器材の位置情報管理

メッシュWi-Fiとビーコンタグの組み合わせで高所作業車や資器材の位置情報管理が可能です。無線LANアクセスポイントにBLE(Bluetooth Low Energy: Bluetoothの一部。低消費電力通信モード)通信機能を搭載、測位機器システムを構築し、高所作業車の位置を把握できます。建設現場では高所作業車の位置把握の導入費用や運営費のコストが課題となっていましたが、メッシュWi-Fiは低コストで従来と同等の測位精度が得られるシステム構築を実現しました。

IT化の推進が遅れていた建設業界ですが、ロボットの遠隔管理などにより懸念とされる少子高齢化による人手不足も解消可能、そのためにはDXの推進が欠かせません。DXを進めていく上でカギとなるのが全域Wi-Fi。全域Wi-Fiの活用は、生産性を高めるだけではなく、市場の変化へも対応できます。今後ますますWi-Fi市場は急拡大していくでしょう。

石野 祥太郎
石野 祥太郎
建設DXジャーナル初代編集長/古野電気株式会社
無線の技術者として新技術や製品開発に従事、建設DXの社内プロジェクトを推進

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